監獄
あの後抵抗したため、冒険者にのされた。
次に気が付いた時は馬車の中で、屈強な兵士が隣にいた。
「なあ、どこに向かってんだよ?」
「……」
しかし、何の質問にも答えない。
かなり不愛想なやつだ。
馬車の中は薄暗く、外の様子も分からない。
ガタゴト揺られて眠くなってきたため、俺は眠ることにした。
「起きろ!」
「はうっ」
急に兵士にドンと背中を叩かれて起こされた。
どうやら目的地に着いたらしい。
兵士に連れられ降りると、目の前には石造りの城塞が立ちはだかっている。
「砦?」
「とっとと歩け」
中に入ってすぐに分かった。
ここは監獄だ。
地下に降りていくと、松明で照らされた薄暗い通路の脇に牢屋がある。
空気がどんよりとこもっており、悪臭が漂う。
「すっげー匂いがするんだけど……」
こんなところに閉じ込められたら1日でおかしくなる。
しかし、俺は収容されるためにここに連れてこられたのだ。
ギイ……
サビついた鉄の扉が開き、俺が中に入ると、ガチャリと鍵を閉められる。
「……なあ、大して取り調べもしてないのに、本気で俺を犯人扱いする気かよ?」
「……」
「何とか言えよ!」
俺は怒鳴り声を上げた。
さっきから何一つ分かっていない。
俺はこれからどうなるんだ?
すると、ようやく兵士は口を開いた。
「お前は重大な犯罪者だ。 二度とここからは出られん」
「何だって? おい、ちょっと待てっ……」
兵士はそのまま去っていった。
最悪の事態だ。
無実の罪で投獄され、しかも二度と出られないだと?
聞くんじゃなかったぜ……
俺は一人取り残され、かなり心細くなってきていた。
ウウウ…… という囚人の呻き声が聞こえてくる。
俺は耳をふさいで横になった。
「新聞に載っちまうのかな……」
みんなどう思うだろうか?
少なくとも、おっさんやドーモ君は俺が殺人鬼じゃないってことは分かるはずだ。
そもそも、俺にはアリバイがある。
殺人が起こっていた時期には街にはいなかったんだ。
せめてあの場にドーモ君がいてくれれば……
「……助けに来てくれねーかな」
しかし、携帯のGPSでもない限り、俺がここにいるなんて絶対分からないだろう。
アイテムも全部没収されちまったし、いよいよ打つ手がない。
部屋の中を見渡して、何か使えそうなものが無いか見てみると、とある生き物と目が合った。
「……ネズミかよ」
暗闇で光る目をこちらに向けている。
まあ、ゴキブリよりはネズミの方がまだましだけど。
「お前もなんか悪いことしたのかよ?」
「……いえ、別に」
「……」
まだここに入れられてから数分しかたってない。
幻聴が聞こえるにはまだ早いだろう。
すると、またしてもネズミがしゃべり始めた。
「私はあなた様と交渉するためにここに参りました。 もし私の主人に協力してくださるのであれば、ここから出る方法をお教えします」
「本当か?」
地獄で仏に会ったような心境に俺はなった。
「お前の主人って、どんなやつだよ?」
この際誰でも良かったが、一応聞いてみた。
「魔族です」
……なんだと?
まさか魔族に手を貸すわけにはいかないだう、と思ったが、この状況じゃ死ぬのを待つだけだ。
もし、あの事件に関与していなければ、話くらいは聞いてやってもいい。
「一つだけ聞くぜ、お前の主人はレンガの街を襲った黒幕か?」
「……私の主人ではありませんが、よければ情報を提供しましょうか?」
ネズミから思わぬ交換条件が提示された。
それなら乗らない手はない。
「……分かった。 お前の主人に手を貸してやってもいい。 一体何をすりゃいいんだ?」
「私の主人の住んでいる山小屋に向かいましょう。 その前に、これを使ってここから出ましょう」
ネズミは、しっぽに通してあった指輪をこちらに向けて投げた。
「それは死者の指輪です。 死者を操るスキルがあります」
またそのシリーズのアイテムが出てきたか。
しかも今度は死者を操れるらしい。
「さまよっている死者を指輪に取り込むことで、操れるようになります。 意思のある人間には憑依させることはできませんが、物体や、眠ってる人間などに乗り移らせて、操ることができます」
指輪には透明な石が付いている。
早速それをはめると、さまよう霊魂が目視できるようになった。
「その指輪を死者に向けて、入れとコールしてみてください」
言われた通り、霊魂に指輪を向ける。
「入れ」
すると、吸い寄せられるように石の中に入っていった。
「使いたいときは出ろ、と言えばいいです。 あとはあなた様の意思のままに動きます」
後は看守が巡回に来たときに、この霊魂を利用して鍵を奪って脱出すればいいってわけか。




