殺人鬼
光の剣を納品するため、ハロワ神殿内にある鑑定科に向かう。
ここでレアアイテムを納品することが、魔物を倒さないで株価を上げる別な方法の一つである。
「お預かりします」
鑑定科の若い男に剣を渡す。
「これは素晴らしい……!」
装飾美に見とれているようだが、光の剣、という名前を出した途端表情を変えた。
「な、なんだって!」
スキルの説明もして、間違いなく光の剣だということが分かると、鑑定科の男は今度は俺たちの方を見てつぶやいた。
「これは驚いたな……」
鑑定が終わり、株価の審査は後日行われるとのことだった。
ドーモ君いわく、この剣はこれから冒険者間で共有することになるらしい。
しかし、所有者は俺で、優先的に持ち出せるとのことだ。
それから次の目標を決めるために図書館に入り浸る日々を送っていると、株価が決定したということをドーモ君が伝えに来てくれた。
「ヒロキさん! 目標を大きく上回りましたよ!」
なんと、株価は1500まで上昇した。
「本当かよ! ちょっとおっさんのとこ行ってくるわ!」
俺はいてもたってもいられず、おっさんの所に向かった。
病室に向かうと、おっさんはいつも通りベッドの上で新聞を読んでいる。
「おっさん! 聞いてくれ」
「ヒロキ、よくやったな……!」
俺が伝える前に新聞で俺の株価が一気に上がったことを確認していたらしい。
「なんだよ、ビックリさせたかったのによ」
「新聞を読んだ時に十分驚いた。 それより株券を換金しに行こう。 少し付き合ってくれ」
多分土地を買いに行くんだろうな、と思っていると案の定、不動産屋に向かった。
先に株券を換金し、150万円を手に入れる。
そして、不動産で森の中にある50坪の土地を100万円で購入した。
「もう一か所寄りたい所がある」
そう言って向かったのは、街のアクセサリーショップだった。
「この指輪をください」
おっさんが購入したのは、「防御力アップ」スキルの指輪だ。
値段は50万とかなり高価だった。
まさか、看護婦にでもプレゼントするつもりか? と勘ぐっていたら意表を突かれた。
「私からの餞別だ。 受け取ってくれ」
「……俺が貰っていいのかよ?」
「最近巷で気になるウワサがあってな。 有力な冒険者を殺して回る殺人鬼が街のどこかにいるらしい」
殺人鬼?
ずいぶん物騒な話が出てきたな……
そんなもんが街に隠れているのか?
「一昨日も、ウェアウルフというあだ名で呼ばれていた乾隊のリーダーが殺された。 特殊スキルで戦う負けなしの戦士だったそうだ」
「一体どうやって殺されたんだよ?」
「詳しい方法は分からんが、どうやら宿屋で寝込みを襲われたようだ。 とにかく、お前も他人事とは思わず対策をしておくことだ」
それがこの指輪ってわけか。
少し過保護な気もしたが、ありがたく受け取っておくことにした。
狙うのは有力な冒険者か……
今後、俺もそれに含まれるのだろうか?
おっさんはケガが治り次第、次の準備に取り掛かると息巻いていた。
俺は明日またドーモ君と合流して、次の秘宝の手がかりを探さなければならない。
その日は冒険者の宿に泊まることにした。
宿屋の一階の一室。
俺は中央のテーブルにロウソクを置いて、脇にある椅子にもたれていた。
時刻は深夜を回っていたが、どうも眠れない。
おっさんと会って来ただけで、あまり疲れてないというのもあったかもしれない。
「殺人鬼か……」
眠れない夜は余計なことを考えてしまう。
おっさんから貰った指輪を手の中で転がしながら眺めていると、突然扉の鍵が閉まる音がした。
慌てて身を起こして振り向くと、何者かが部屋に侵入してきていた。
「誰だてめぇ!」
そこに立っていたのは、以前道路を舗装するバイトをやっていた時に一緒に新規で入った俺と同い年くらいの男だった。
名前は何だったか……
確かセイマだ。
「お前がここまで強くなるとは思わなかった。 俺と勝負して俺の糧になれ、ヒロキ」
そう言うと、息を吹きかけてロウソクの火を消した。
部屋の中が闇に包まれる。
まさかあいつが殺人鬼の正体だったのか?
俺はとっさに窓のカーテンを開き、月明りを部屋の中に入れた。
それでも、相手の姿は見えない。
「相手は俺の姿が見えるのか?」
そういうスキルを装備しているに違いなかった。
一瞬、月明りがナイフに反射したのが見えた。
俺は間一髪でそれをかわし、腕を取って羽交い絞めにした。
「くそっ! どんなスキルを使いやがった!」
セイマがわめきたてる。
「許してくれよっ! 気の迷いだったんだ!」
突然、ナイフを放り投げ降参の体を装って来た。
「お前がウソつきだってことは知ってんだ。 騙されねーよ」
以前、セイマは俺とおっさんにウソをついた。
簡単には信用できない。
だがその時、セイマの体に異変が起きた。
全身が毛羽立ち始めたのである。
驚いて体を離したが、振り払って来た腕をよけきれず、弾き飛ばされた。
壁に打ち付けられて伸びていると、相手が迫ってきた。
しかし、その姿はまるで……
「ウェアウルフから奪った人狼スキルだ。 死ね!」




