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犬ぞり

 夜道を進んでいき、レンガの街を越えて中央の街の西の城壁までやって来た。

しかし、ここで問題が発生した。

検問に捕まったのである。


「ちょっと待て、その犬っころを中に入れる気か?」


 最近ゴブリンの件があっただけに、簡単には通してくれなさそうだ。


「平気だって。 俺になついてるし、人は襲わねーよ」


「オオカミを中に入れるわけにはいかん。 どういう理由があってもな」


 かたくなに態度を変えない兵士を見て、俺たちはその場から離れた。


「どうすっか…… 転送魔法を使ったらどうなる?」


「登録されてる僕とヒロキさんがハロワ神殿の一室に飛んで、オオカミたちはここに置き去りになっちゃいますね」


「それじゃダメだな」


 ……このまま城壁の外にいるのもまずい。

後ろからエボシ隊が迫ってる可能性がある。

朝になってから武具屋に立ち寄って犬ぞりを作ってもらう予定だったが、急ぐ必要がありそうだ。


「ドーモ君は街に行って武具屋の職人を連れてきてくれ。 俺は北の城壁に移動して、そこで身を隠しておく」


 街の中に入れないのなら、こうするしかない。

果たしてエボシ隊を振り切れるか……


 ドーモ君は街に入り、この時間でもやってる武具屋を探しに行った。

俺は城壁を沿うようにして北を目指した。

後方を確認するために索敵スキルのナイフを装備しようとしたが、やめた。

スキルは一人一つまでしか装備できないって話だった。

つまり、ナイフを装備したらブリーダーのスキルが外れる。

そうなった場合、このオオカミたちが俺を襲ってくる可能性があった。


「……あっぶねえ」


 索敵は諦めて、早足で北の城門を目指す。

途中、川があればラッキーだ。

そこでオオカミを洗って匂いを消せる。

連中が起きてくる前に何とかしねーと……

そう思った時だった。


 バキバキバキ、と木をへし折るような音がしたかと思うと、オオカミの群れの中に矢が飛んできた。

幸いオオカミに命中することはなかったが、どうやら補足されてしまったようだ。


「……あいつらだ!」


 数十メーター離れたところに弓を構えた男がいる。

あの男の放った矢には、木をえぐるほどの力があるらしい。

俺は大声を上げた。


「俺のオオカミだぞっ! お前らにこのオオカミを殺す権利はねえ!」


 すると年配の男、エボシ本人が現れ、叫んだ。


「いつからお前のものになったんだっ! オオカミに名前でも書いてあるのか?」


 名前?

そんなもんあるわけ……

いや、ある!


「俺がこいらを飼ってるって証拠を見せてやる! ポンタ! お手」


 すると、ポンタがやって来て俺にお手をした。


「なっ……」


「どうだ! もしお前らが俺のオオカミをケガさせたら、そっこー警察に突き出してやっからな」


 ちっきしょー、と言う女の声が遠くから聞こえた。

それから、エボシ隊が襲ってくることはなかった。 

 

 俺とオオカミは無事難を逃れ、北の城門の前に来ることができた。

このまま北東に向かう街道を進むと次の街に到着するが、今回は北に向かい、草原地帯を抜ける。

更に進めば雪原地帯となり、雪山にたどり着く。

俺はドーモ君が戻るのを待った。

オオカミに囲まれながら寝袋に入って眠っていると、夜が明けた。

陽が上り、時刻は10時頃か。


「おっせーな」


 とっくに寝袋から出て、あぐらをかきながら待っていると、ドーモ君が帰って来た。


「はあ、はあ、すいませんっ」


「おっせーよ、何してたんだよ!」


 すると、ドーモ君はリュックから干し肉を取り出し、オオカミに与え始めた。


「おなか空かせてると思って、買って来たんっす。 中々店が開かなくて、へへ」


 ……武具屋はどうした。


「あ、もちろん武具屋も連れてきたっすよ」


 後から武具屋と思われる男がやって来た。

年はいってそうだが、鉄などを取り扱うため、体は筋肉質だ。


「こいつらがそのオオカミか」


 武具屋が近づいても、オオカミは吠えるでもなく大人しくしている。

そのため、すぐに採寸を済ませることができた。


「一週間はかかるな。 そりと合わせて20万だ。 前金で払ってくれ」


 武具はほとんどオーダーメイドで、作るのに最低1週間はかかるらしい。

準備に取り掛かるために、武具屋は店に戻って行った。

しばらくやることが無くなり、俺は寝袋をしいて横になっていた。

当分暇になってしまった。

元ニートでもやることが全くないのは耐えられん……


「ドーモ君さ、ゴムボール買ってきてくれよ」


「了解っす」


 3日が経過した。

ゴムボールを使った遊びは、オオカミがかみ砕いてしまったため一瞬で終わった。

みんなに名前もつけてしまったし、もうやることがない。

ドーモ君が買ってくる昼飯が唯一の楽しみになってしまった頃、城門からある一団が現れた。

その一団はかなりの数で、みんなでかいリュックをしょっていた。


「あれは……」


 その集団は、雪山攻略部隊であった。





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