光の剣へ
その時、俺ははっとした。
「マーキング」スキル。
アレはよく物を無くす人にうってつけのスキルでもある。
もし光の剣がこの老人の所有物なら、この指輪をはめさせればありかが分かるんじゃねーか?
だが、どうやってつけさせる?
「老人にこの指輪をはめさせりゃ多分場所が分かる。 問題は、どうやってつけさせるかだ」
「そういえば、おじいちゃん鎧をつけてたよね? 死んでも持っていけるものがあるのかな?」
そういやそうだ。
死んだ時に身に着けていたものは幽霊になってからでも持っていけんのか?
少年の質問に、神父はコクリとうなずいた。
「はい、死んだ時に身に着けていたものが幽体に反映されます。 彼の場合、鎧を身につけたまま亡くなられたのでしょう」
……だけど、まさか指輪を持たせて誰かを殺すわけにもいかないよな。
「自分が死者となって、指輪を渡す方法が一つだけあります。 それは、仮死の術と呼ばれる禁術を使う手です。 下手をうてば、死者に引きずりこまれ、戻ってくることができなくなるが故、無用な幽霊は締め出して行うのが絶対の条件です」
そんなやり方があるのか!
でも、俺はやりたくねーな……
その心を見透かしたかのように、少年も答える。
「僕だってやだよ」
そうなると、神父しかいないが……
「復活の儀の段取りができるのは私しかいませんからね。 もしやるのであれば、あなた方のどちらかか、それ以外の方に頼まねばなりません」
ここは……
「ジャンケンか?」
「やだよ! 絶対やだ!」
命張ってまで光の剣は欲しいか?
結論はノーだ。
しかし、俺は居酒屋での話を思い出していた。
その剣は魔族との戦いに必要らしい。
それがあれば、おっさんをひでー目にあわせた魔族のやつに一矢報いることができるってことだよな?
「……分かったよ、俺がやる」
意を決して、俺はそう答えた。
俺は、更に奥の怪しい部屋に通された。
手には地図を持ち、「マーキング」スキルの指輪をはめる。
次に、仮死化の薬と呼ばれるものを飲まされる。
粉末の薬で、これを飲むと一時的に死んだのと同じ状態になるらしい。
最後に、強烈なお香を嗅がせて、目を覚まさせるとのことだ。
薬を飲んで数分後、俺の意識は途絶えた。
気が付くと、俺は目が覚めた。
が、実体はない。
重力の影響を受けず、その気になればどこまでも飛んでいけそうだ。
前を見ると、さっきの老人がいた。
「よう、こっちに来たぜ」
そう言って、指輪を老人に渡す。
「すまんな」
老人は指輪をはめ、俺が渡した地図を見た。
地図の上に赤い点が浮かびあがり、その箇所が恐らく光の剣のありかだ。
赤い点は雪山の先を指しており、そこはフロンティアとなっていた。
つまり、誰も踏み入ったことのない地点だ。
「近い内、人間の中から魔王の後継者が頭角を現すだろう。 それまでに備えておくのだ」
そういうと、老人は満足したのか、天に召されていった。
「おい! 指輪……」
指輪持ってかれちまった……
そして、なんか鼻がむずむずして来た。
「ぶええええっくしょん!」
俺は強烈なお香にむせて、目を覚ました。
「おお! うまくいったか?」
神父に尋ねられ、俺は親指を立てた。
「分かったぜ! 雪山の先のフロンティアにある」
こうして、俺の目的は雪山の先に決定した。
「ナイフの扱い」スキルの首飾りと、死者の首飾りを交換し、少年とも別れた。
これから、ようやく本格的な旅が始まる。
俺はハロワ神殿に向かった。
この日、俺の付き添いと合流する手はずになっている。
「ヒロキ様、お待ちしておりました。 少しそちらでお待ちください」
長椅子に腰かけて待っていると、声をかけられた。
「初めまして、ドーモです!」
「おお、お前が俺の付き添いか、よろしくな」
立っていたのは俺より身長の高い、結構ハキハキした感じの男だ。
年は同じくらいかもしれない。
「んで、名前は?」
「ドーモです!」
ドーモって挨拶じゃなくて名前かよ……
「ドーモ君か、俺はヒロキだ。 とりあえず今後の予定を話すから、ここを出ようぜ」




