死者の首飾り
「その話、間違いねーのか? 統率が取れすぎてたってのだけが証拠か?」
「あと、どんなに斬りつけてもまるでゾンビみたいに襲い掛かって来たらしい。 普通のゴブリンにはありえないことだそうだ」
それが本当なら、おっさんはゴブリンじゃなくて、その魔族にやられたも同然ってことか。
なんか幽〇白書みたいな話になって来たな……
とにかく、今度その魔族とやらに会ったらただじゃおかねー。
思わぬ情報を手に入れ、居酒屋を出る。
さっきの話で酔いも冷めちまった。
帰ろうぜ、と少年に言おうとした時、姿がないことに気がついた。
「あれ? あいつどこ行きやがった?」
周りを見渡すと、少年がメガネをかけて酔っぱらって倒れている人の持ち物をあさっていた。
「おまっ! いつの間に俺のメガネを…… しかも、ぶっ倒れてる冒険者のアイテムあさってんじゃねーよ」
止める間もなく、少年が何かを掴んで持ってきた。
「行こう! これ、リストに載ってたやつだよ!」
「マジかよ!」
思わぬところで、リストのアイテムを入手した。
そのアイテムは、「寝不足」スキルのプロミスリングだ。
さすがに夜も遅く、この日は宿に泊まって休むことにし、翌日また広場に集まった。
今日はこの後ハロワ神殿にも行かなきゃならないし、少し忙しい。
「とっとと行こうぜ」
そう言って、再び屋敷にやって来ると、プロミスリングを見せた。
門番がメガネを装着して、それを確認する。
「間違いないな。 中に入れ」
門番が俺を伴って中に入り、その隙に少年が蔵の方に向かう。
蔵に鍵がかかっていても、針金で開けることができるから平気だとのことだ。
屋敷の中で時間を稼ぐ為に富豪に交渉する。
「もっと高く売ってくれよ、すげえ苦労したんだからさ。 100万じゃなきゃ売らねえ」
「ふざけるな! 20万でも破格のハズだ!」
とにかく、ふっかける。
相手も寝不足のスキルが欲しいらしく、交渉は難航した。
それから30分。
限界だと思い、俺は手をうった。
「しゃーねーな。 22万で手ェうつわ。 富豪のくせにケチくせえな」
「100万など払えるわけがないだろう! とっとと帰れ!」
戻ってくると、少年が外で待っていた。
「どうだった?」
ニヤリ、と少年は笑い、それに答えた。
「これが死者の首飾りか」
少年に見せてもらったその首飾りは、シルバーの十字架のネックレスだ。
「さっきつけてみたんだけどさ、面白いよ」
メガネでスキルを確認すると、「死者の目視」スキルとのことだった。
ちょっとドキドキしながらそれを首に装着する。
すると……
「うおおおおおっ、なんだこりゃあああっ」
街の中を骸骨が徘徊し、人魂みたいなフワフワした発行体が飛んでいる。
まるっきしホーン〇ッドマンションじゃねーか!
「ちょっとおもしれーな! 街の中散策してくるわ!」
「僕も行くーっ」
二人で街中を散策する。
「あの冒険者、どっかから幽霊連れてきやがったな」
でかいリュックを背負った冒険者の背後に、凶悪そうな幽霊が憑りついている。
「そろそろ変わってよ」
「もうちょい」
しかし、これは中々楽しいな。
飽きずに街を見て回っていると、少し変わった幽霊を発見した。
鎧に身を包んだ老人で、格式高そうな雰囲気を醸し出している。
その老人は、冒険者を品定めするように観察しては、また別な冒険者のところに行く、というのを繰り返した。
そして、俺と目が合った。
「おい、ちょっと変な幽霊がこっち来るぜ」
老人幽霊がこちらに来て、俺と少年の観察を始める。
「……」
老人は一通り俺たちのことを観察すると、腕を組んでその場にとどまった。
これは……
「取り憑かれたか?」
「えっ、嘘でしょ?」
少年に首飾りを渡す。
「……ちょっと移動してみようよ」
しばらく歩き回って、聞いてみた。
「どうだ?」
「うん、憑かれてるね」
これから冒険に出るってのに、最悪だ……
「どうしたらこいつ消えるんだ?」
「お祓いに行けば平気だと思うよ。 ハロワ神殿に呪いの装備を外してくれるエクソシストがいたと思うけど…… お金どれくらいかかるのかな」
「とりあえず行ってみるか……」
思わぬ出費に、少し凹むが、まあそこまでぼったくられることはないだろう。
ハロワ神殿のお祓いの受付に行くと、部屋に通された。
ちなみに値段は2万。
そこそこの値段ではある。
部屋の奥には神父がいて、要件を聞いてきた。
「本日はどのような?」
「ちょっと幽霊に憑かれちまってさ」
「分かりました。 では、対話してみましょう」
神父は幽霊と話せるスキルを持っているらしい。
数分後、診断結果が出た。
「……驚きましたね。 この幽霊は、かつて魔王と戦った勇者その人です」
「勇者?」
この老人が?
「彼の目的は、光の剣の所在を教えること。 自分のことに気が付いたあなたたちの後をついてきただけのようですね。 取り憑かれているわけではありません」
……光の剣?
何か聞いたことあるな。
それより、憑かれてないと聞いて俺はほっと一息ついた。
「安心したぜ。 で、光の剣ってのはどこにあるって?」
「それが、忘れてしまったようです」
勇者は、まさかのボケ老人だった。




