表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/51

スラム

 まさか盗まれると分かっててすられるとは……

2人は瞬く間に人ごみに消えてしまった。


「まあ、こっちにはこれがあるから平気だけどな」


 取り出したのは「マーキング」スキルの指輪である。

これをはめて地図を読めば、首飾りの位置が分かる。

しかし、持っている地図は広域のため、子供がどこに逃げたかの詳細は分からなかった。


「しまったな……」


 仕方なく街の広場に行って、案内の看板を見る。

すると、赤い点が地図の上に記され、子供の位置が表示される。


「住宅の外れか」


 そこは住宅街の一角を示していた。

街ではスラム街と呼ばれる、身寄りのない人間が住む集落だ。


 住宅街を抜けて、スラムに到着。

手入れが全くされていない家が立ち並んでおり、その中に誰かが住んでいる気配がある。

物惜しそうにこっちを見つめる子供や、ごみ箱をあさる老人なんかもいる。


「……」


 俺はとっとと首飾りを回収して、ここから出ようと思った。

うっそうとしたジャングルの中にいるみたいに、不安な気持ちにさせる。


「確か地図はここを示していたな」


 もともと宿として使われていたと思われる木造の建物に到着した。

扉を開けて中に入る。

ギイ、と扉が軋む。

 もともとロビーとして使われていた場所に、数人の子供がたむろしており、さっき首飾りを奪った2人もいた。


「……へえ、よく場所が分かったね」


 話しかけてきたのは俺から直接首飾りを奪った少年だ。

一人だけソファにふんぞり返っている所を見ると、こいつがリーダーか。


「首飾り返せよ。 お前のもんじゃねえ」


「やだよ。 これを売ってお金にしなきゃ、ご飯食べれないし」


 だが、俺の首飾りを売って飯にありつけたとしても、次はどうする?

結局のところ、一時しのぎだ。


「そんなの一時しのぎだろ。 わりーけど返してもらうぜ」


 俺が一歩を踏み出すと、少年はちょっと待ってよ! と言った。


「お兄さん見たところ冒険者でしょ? この街から出てくの?」


「ああ、だからなんだよ」


「出ていく前にさ、この街の財宝を手に入れない? 僕らに協力してくれたら、それを売ったお金を山分けしてもいいからさ」


 少年の提案して来た内容はこうだ。

この街には豪邸があり、その所有者は骨董品マニアで、色々なお値打ちものを蔵に蓄えている。

その中でも「死者の首飾り」と呼ばれる骨董品は、売れば数百万はくだらない値打ちだそうだ。

もしこれを盗むことができれば、当分食べることには困らない。


「だから、協力してよ」


「……何で盗みに手を貸さなきゃいけねーんだよ」


「頼むよ! 別に金を持て余してる富豪から奪うのはいいじゃんか!」


 ……確かに、こいつらを見ると少しほっとけない気にもなる。

みんなボロボロの服を着てるし、毎日飢えをしのぐのだって大変なはずだ。

でも、俺は元の世界にいたころだってそんなのには見て見ぬフリをしてきた。

コンビニのユニセフ募金に金を入れたことだってないし、献血もしたこともない。

挙句の果てに、電車のシルバーシートで席を譲ったことだってない。

そんな俺が今更人助けかよ。

そんなことを考えていると、少年は聞き捨てならぬことを口走った。


「旅に出る前の願掛けみたいなもんだと思ってさ」


 願掛け……

この先、どうしても運頼みになるシーンも出てくるだろう。

もし、ここで人助けをしておかなければ、運に見放されたとき後悔するかもしれない。

できることはしておいた方がいいか?

ってか、そんなことを思ってしまったら気持ち悪くてやらないわけにもいかなくなった。


「俺は何をしたらいいんだよ?」


「おっ、話が分かるね大将! じゃあ、説明するね!」


 その説明によると、富豪の住む一帯には自分たちのような孤児は近づくこともできない。

だから、一般人の協力が必要とのことだった。


「街の中にまた更に囲いがあって、そこに門番がいて入れないんだよね。 塀の高さも結構あるし、梯子をかけてもだめだった。 だから中の様子は噂でしか知らないんだ。 でも、蔵があることは間違いないよ。 あと死者の首飾りもね」


 その富豪が道楽で作った雑誌を少年は持っており、そこには自分のコレクションの内容が記されていた。


「分かったよ。 じゃあ、俺が珍しいお宝を持ってきた、みたいなこと言って中に入って、お前が蔵をあさればいいな?」


「うん、それでいいよ!」


 こうして、俺とこの少年の2人で蔵のお宝を盗みに行く運びとなった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ