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レンガ積み

 街の西、舗装が完了したばかりの道路を進み、現場に到着。

集まって来た職人たちに紛れて待っていると、朝礼が始まった。

作業における注意点、例えば、レンガに躓いてケガをしないようにとか、崩れてきたレンガの下敷きにならないようにとか、そういったリスクアセスメントをした後、新規の人間は集まるように言われた。


「君たちにはレンガで家を作ってもらうが、まずベテランの職人がやり方をレクチャーするから、そこで覚えてくれ」


 職人のもとに連れていかれると、レンガ積みのレクチャーが始まった。


「地面に家の枠組みが書いてあるから、それに沿ってセメントを乗せる。 その上に少し隙間を作ってレンガを並べていき、隙間にはセメントを塗る。 レンガは段違いで乗せ、同じように隙間にセメントを塗る」


 職人のレクチャーが終わると、担当する場所に案内された。

そこには現場監督と、雑用係が待っていた。

監督の方は定年目前って感じのじいさん。 

雑用係はだいぶ子供だ。


「初めまして、よろしくお願いします」


 おっさんと俺が挨拶を終え、早速レンガを積んでいく作業が開始される。

地面には線が引いてあり、要所要所にレンガが積んである。

恐らくその箇所に必要な分のレンガだろう。

セメントが入ったバケツと、コテを受け取って、俺はレクチャーされた通りにセメントを塗って、レンガを置いていく。


 夕方5時になり、その日の作業は終了した。

一日でどれくらい積めたかというと、400個くらいか。

一辺を端から端に左右に移動しながら少しづつ積み上げていく感じで、まだまだ高さはない。

これが背丈ほどに達したら、梯子を使って作業しなければならず、そこからが大変そうだ。


 



 

 10日ほどで、外枠がある程度でき、梯子を使っての作業となる。

高さは3メーターの指定で、おっさんと二人での作業だ。

俺がレンガにセメントを塗って、おっさんに渡す。

それを受け取って、更に積み上げていく。

中々ペースが上がらず、一日のレンガの積み上げ個数も400から300に減った。

それでも7日で外壁が完成、屋根の設置作業に入る。


 屋根は木の棒を乗せていき、縦に長さの異なる棒を等間隔にあてがい、ロープで縛ることで形を作る。

「へ」の形の屋根が形づくられたら、板を乗せて完成。

合計20日で1軒完成である。


 1か月もすると、おっさんは仲良くなった職人と飲みに行ったりすることが増えた。

俺は疲労困憊のため、ついて行かないで宿で寝る、の日々だ。

そんな日が2か月くらい続いた。

事件はその日が終わろうとしていた夕方に起こった。






 3軒目の作業に取り掛かっている最中で、そろそろ終わろうとしていた時だった。

突然、やぐらの上の鐘がけたたましくなった。

ガンガン鳴り響く鐘の音、そして、その上から怒声が聞こえる。


「ゴブリンだああああっ、ゴブリンが攻めてきたぞおおおおっ」


 ゴブリン?

それってやばいのか?

そんなことを考えている隙に、職人が慌てて向こうから走って来る。


「逃げろっ! 武装したゴブリンだ!」


 どうやら攻めてきたのは武装したゴブリンらしい。

しかし、現場の総監督は顔色を変えてこう叫んだ。


「逃げるなっ! ゴブリンを押しとどめろっ、せっかく作った家を壊されるわけにはいかん! 逃げたものには今日の給料はでないぞ!」


 思わぬことを言い出した監督のせいで、俺とおっさんは顔を見合わせ、逃げようとしていた足を止めてしまった。


「お、おっさん、どうする?」


「……武器がレンガではどうしようもあるまい」


 やっぱり逃げるか、と踵を返した所で、監督に捕まってしまった。


「お前たち、残ってくれっ! 頼む! 作業工程はギリギリで組んであるんだ。 これ以上の遅れは取れない。 ゴブリンの目的はこの一帯の破壊だろう。 だから、冒険者が来るまでの時間、やつらを相手してくれればいい」


 すでに狼煙で、ここに敵が侵入して来たことは中央の街に伝えている。

冒険者がここにやって来るまで、馬車で飛ばせば15分とかからないだろう。


「では、ゴブリンの性質を教えてください」


「分かった。 まず、ゴブリンは成人男性よりやや背丈は低く、力も人間以下。 だが、武器を扱え、簡単な統率は取れる。 欠点は闘争本能が強く、短気なところだ。 今回は武装しているゴブリンが相手だ。 その点が少し厄介だ」


「……なるほど。 では、正面からは戦わず、2人ペアになって背後から仕掛けましょう。 私はヒロキと、監督は残っている職人でペアになってください」


 ペアを作って、徐々にゴブリンに近づいて行く。

物陰に隠れて、ゴブリンを観察する。


「おっさん、ゴブリンもペアで動いてるみてーだぜ。 一人が見張りで、一人がハンマーで壁を壊してってる」


「……2人では背後を取るのは難しいかもな。 では、さっきの監督と更に4人で攻めるとしよう」


 おっさんの考えでは、中央に2匹いるゴブリンに対し、左右から仕掛け、同時に相手の気を引く。

2匹を分断させることに成功したら、そのまま囮が引き付け、物陰に隠れた攻撃役が背後から仕掛ける。

こういう作戦だ。


「ヒロキ、お前の方が力があるだろう。 私が引き付けるから、お前は物陰に隠れて隙を見て飛び出すんだ」


「了解」


 おっさんはレンガを持ってゴブリンに近づいて行った。




 


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