道路の舗装
ガーデニングに似てる!
金が尽きたので、今夜は野宿することになった。
西の森で木の枝を集め、火をつける。
疲れていたせいか、寝袋に入るとすぐ眠りについた。
翌日、時間通り集合場所に到着すると、たくさんの人が集まっていた。
俺より若そうなやつもいるし、だいぶ年寄りもいる。
結構ごついやつもいるし、ひょろひょろのやつもいる。
全部で5、60人はいそうだ。
「新規の者はこちらに集まってくれ。 作業の説明をする」
リーダーと思われる30代くらいの男に呼ばれた。
新規は3人。
俺とおっさん、そしてもう一人。
「今からやるのは、新都市への道の舗装作業だ。 木の伐採は終わっていて、後は地面を整地していく作業になる。 手順は、まず雑草を抜いて、シャベルで地面を軽く掘り返していく。 邪魔な石は、草と一緒にリヤカーに積んで、脇道に捨てていく。 クワでならした後に、角材で地面を固めれば完了だ」
新都市への道はおよそ5キロ。
新都市は、武器防具の開発をメインとする工業都市になる予定になっている。
騒音などの公害を考慮し、現在の都市の隣には作らず、やや離れた所に作る運びとなった。
話では、道はもう完成間近とのことだった。
俺たちは、角材で地面を固めていく班に配属された。
角材を渡され、現地に向かう。
「ここら辺は結構キレイだな」
「もう整地が済んでいるんだろう。 だが、重機を使わないでここまでやるのはかなり時間がかかったんじゃないか?」
元の世界だったら、ロードローラーやショベルカーでの作業が当たり前だ。
これらの機械がやる仕事を人力でやるとなると、手間は計り知れない。
「お、ここら辺からじゃねーか?」
到着した地点は、クワで軽くならしただけの状態で、土がフワフワだ。
同じ班の人らが角材で地面を打ち付けていく。
剣を地面に突き立てるみたく、角材を地面に打ち付け、固めていく。
この作業、地味だがかなり体に負担がかかる。
ものの10分で腕が上がらなくなった。
「おい新入り! 力が入ってねぇじゃねーか!」
ベテランのオヤジにどやされる。
腕がめちゃめちゃ太い。
「るっせーな、こっちは初めてだっての」
「あ? なんか言ったか?」
「……」
さすがにこいつに逆らったら殺される。
あの腕で首を捻じ曲げられそうだ。
2時間ほど作業して、昼休憩になった。
支給された水とおにぎりを、そこら辺のならした道の上で、あぐらをかいて食べる。
「めっちゃくちゃうめーな!」
おにぎりに具は入ってなかったが、塩が効いていてそれで十分だ。
「久しぶりに肉体労働をしたが、飯がうまいな」
俺とおっさんでおにぎりの話で盛り上がっていると、新規の時に見かけた男が話かけてきた。
「あっついですね~」
年は俺とあまり変わらないように見える。
切れ長の目が特徴的で、整った顔立ちをしている。
服装からして元の世界からやって来た者だと分かった。
「初めまして、セイマです」
俺とおっさんも軽く自己紹介をし、俺は気になったことを質問してみた。
「お前ひとりか? 始まりの街から来たんだろ?」
始まりの街から出るには荒野を歩かなければならないが、そこに出没するスライムに捕まったら1人じゃ抜け出せない。
だから、2人以上で行動するのがセオリーだが……
「始まりの街から来ましたけど、ずっと一人ですね」
「なんだと?」
驚いたのはおっさんだった。
「どうやってここまでたどり着いたんだ?」
「え? 転送魔法ですけど、そんなに驚くことですか?」
転送魔法って、確か冒険者の付き人が使えるやつだ。
何で始まりの街にいた時点でその存在を知っているんだ?
「どうやって知った?」
「な、なんか怖いなぁ。 街にいたじゃないですか、明らかに僕らとは違うかっこの人。 分からないことはこの世界に長くいる人に聞いた方が早いなと思って、その人たちに聞いただけですよ。 そしたら仲良くなったんで、ここまで送ってもらったんです」
始まりの街に来ていた冒険者か?
だが、一体何を探していたんだろうか。
特別何かある街にはとても思えない。
「休憩終わりだ!」
リーダーが手を叩いて持ち場に戻るよう促してきた。
「長話してたら怒られちゃいますね」
セイマはそう言って持ち場に戻って行った。
「おっさん、俺たちも行こうぜ」
「……」
しかし、なぜか怖い顔付のまま動こうとしない。
そして、思わぬことをつぶやいた。
「あいつには気をつけろ。 できれば近づくな」
おっさんが何でそんなことを言ったかは分からなかったが、そんなことを考えてる暇もなく、気づけば今日の作業は終わった。
日当の5000円を受け取り、おっさんはメガネを借りた男のもとに向かった。
おっさんの分の宿代も払って、俺は先に眠りにつくことにした。
明日も整地作業だ。