始まりの街
クオリティは保障しません。
俺の名前はヒロキ。
25歳ニート、以上!
しかし、俺は今謎の世界にいる。
ある日、ジュースを買おうと思ったら突然自販機が倒れてきた。
「うわっ!」
そこで意識がぷっつり途切れた。
くっそ、コ〇コー〇め……
俺が今いるのは始まりの街。
もともと俺がいた世界から連れてこられた奴らはみんなここにやって来るらしい。
だが、現状は悲惨だった。
俺はたまたまサイフを持って死んだ?為、いきなり金に困るようなことはなかったが、大抵の連中は所持金を持たずにやって来る。
この街はすでに連れてこられた人間で飽和状態のため、バイトなんかも雇ってもらえない。
だから、乞食まがいのことをしてでも食いつながなければならない。
それができるやつは一応生きていけるが、そんなことできるか! ってやつは食い逃げとか、そういう行為に走って連行される。
この世界に来たときの俺の所持金は1万。
ここの宿屋が朝食付きで一泊500円だから、夕飯を我慢すれば20日はしのげる計算だ。
しかし、ここに来て10日が経過。
このままダラダラここにいたら、俺は今の身分ではいられなくなる。
「そろそろ、方針を決めねーとな」
この街からうまいこと脱出できたやつはどうしているのか?
何とか成功者のOBみたいなやつと接触できたら……
でもこの世界も広いはずだ。
ここを抜け出せた人間がこんな所に戻ってくる確率は低いだろう。
特別何かがあるような街じゃない。
ゲームの中だって、最初の街に戻ってくるのはイベントがあるときに限る。
腕を組みながら廊下をウロウロしていると、隣の部屋に住んでいる男が顔を出した。
「ちょっと悪いんだが、廊下が軋む音で新聞が読めないんだ。 静かにしてくれないか?」
顔を出したのはメタボリックな中年のおっさんだった。
新聞を片手に持っている。
多分こいつも俺と同じような状況にはまっているに違いない。
俺は丁度いいと思い、話題を振ってみた。
「あんたも違う世界から連れてこられたんだろ? この街からどうやって出たらいいか知ってるか?」
すると、おっさんは驚いた顔になった。
俺の言葉遣いと、同じ境遇のやつがいたのか、という両方の驚きからだろう。
「……まさか、私と同じような人間がいたとは。 実は一昨日ここにやって来たんだ。 たまたま金を持ってたし、通貨が同じだったからここに泊まることができたんだが。 これからどうするかは私も分からない。 ただ、この新聞を読む限り、どうやらドラ〇エのような世界だということが分かる」
おっさんはファミ〇ンのドラ〇エしかやったことがないらしかったが、1,2はもちろんクリアしたし、3の発売日には学校を休んで買いに行くほどのめり込んでいたらしい。
そんなことは置いといて、このおっさんと協定を組むこととなった。
おっさんの名前はヤスオ(42)である。
とりあえず外のカフェで話をすることになった。
ブレンドコーヒー(10円)を2つ注文し、それを飲みながら話をする。
「ドラ〇エのような世界ってんなら、やっぱり次の街まで行かないとだよな。 でもどの方角に街があるかも分からねーし……」
「それもそうだが、それ以前に我々には外的と戦う手段も野宿をする装備もない。 もし働き口があるなら、バイトでも何でもして金を稼ぐのが優先だがな」
「でも無いだろ? 俺も探したけど」
ここは元の世界から連れてこられた人間であふれている。
「その通りだ。 そのため、これから打てる手は2つだ。 一つは魔物を倒してゴールドを手に入れること。 まあ、これは死ぬ可能性があるからリスクが高い」
ゲームならレベル上げとゴールド稼ぎだな。
でもまだ手があるのか?
「もう一つは?」
「株さ。 新聞で確認したんだが、この世界では有力な冒険者に投資できるシステムが存在するらしい。 例えば、Aという冒険者の株価が100だとする。 その株を10株持っていたとして、Aが魔物狩りで実績を上げ、国から「あなたは魔物狩りで貢献したので、120の価値があります」とする。 すると、最初の価値から上乗せされた200の儲けとなる」
ヤスオっさんの話では、より強い魔物を倒せばより多くの金が手に入るため、資金繰りはその辺りで賄っているとのことだ。
「会社と同じで、強ければ強いほど儲けが出るということだ。 私の所持金は2万。 この街で買える武器、そして野宿のための道具と、次の街に行く為の地図を買うには3万の資金が必要だ。 2万を投資し、3万に増やすぞ」
こうして、俺たちは街の中にある株の取引所に向かった。