002:初日其の2
〖創世期1001年4月1日16:00〗
色々と有った初日、朝方の09:00から今の時間まで7時間も過ぎた。
リアルでは3時間30分だ。
会合が終わり、小腹がすいたので特盛うな重を食べ、ゲーム内保温から非常に美味しく食べられたのは嬉しいところだ。
『レド殿』
「ウルカじゃん。どうした」
『そちらに妙な連中は言っていませんか?』
「んにゃ。極普通の生産プレイヤーと商売していただけだ。全員の名前も知っているし、もしかしてあのポーションを売ってのクレクレ君達か」
『さようです。何やら連中は上昇系のアイテムが欲しいようで、しつこくストーキングしてきます』
「ふーん。そうか。じゃあ。一計を掛けるか」
『何か掴ませるのか?』
「いや、もう少し大掛かりなことだ。悪質なプレイヤーに関しては何らかの対策を講じる組織があってな、そこに検討依頼をしてみる」
『ふむ。要するに連中がストーキングをするから商品を売らないでほしいという依頼か?』
「それに近い、連中の様なクレクレ君たちには、その検討のための話し合いに持ち込まれると非常に弱い、自分たちには非があることを自覚していると思うしな」
『それで私はどうすればいい』
「わざと追跡させておいてくれ、今提案してみる」
ウルカが了解と短く答えて通信を切る。
直ぐに生産組合に訴えを起こす。
内容はクレクレ君たちによるストーキング被害についてのトラブル。
そのクレクレ君たちの目的は強化系ポーションなので思いっきり俺の範囲内の為に、【C】もこの訴えには納得し、両者による話し合いがもたれる。
こういう所属するプレイヤーの安全を守ってこそ、組織として成り立ち、酔って所属する者から信頼が寄せられのだ。
ウルカがクレクレ君たちに説明し、話し合い次第では手に入るかもしれないと利益に動いたクレクレ君たちは、直ぐに集まる。
誘導されたクレクレ君たちの【C】より容疑に関してのことが伝えられ、当然の様に猛反発するが、ストーキングを行っていたウルカによる証言に、このウルカに関わる強化系ポーションを作製したレドの申し立てにより、厳罰に処すべきなのかとも話されたが、クレクレ君たちはアイテムが売られなくなると判断すると賠償金を提案する。中々知恵の回る者もいるようだ。
結果的に厳罰に処すべき悪質な行為だが、実質的な被害はなく、また和解することも含め、一度は軽い刑罰で処すのみに留まった。
二度目は厳罰に処すことになり、下手したら生産アイテムの売却が禁止することになるとも伝えた。
この生産組合の【C】の判断により、クレクレ君たちも反省した証としての和解に望み、結果としては提供はするが、単品よりお得なセット品の販売はない事となった。
◇◇◇
【C】の事が広まり、多くの生産プレイヤーが所属を願う事になった。
自衛組織なのだから、戦闘能力の低く、また問題を抱えやすい生産プレイヤーにとってみれば、それほどデメリットもなく、高い見返りもないが、それでも安定志向な生産者にとってみればよいものだ。
「生産者による自衛組織か、悪くない組織だ」
ウルカが話す。
黒服の黒服尽くめの格好だが、これでも裁縫、革細工の職人らしく、この組合には参加するべきと判断したらしくギルドではないが、組合員だ。
「役に立つとよいのだが、レド殿、一人紹介したい者がいる」
「もしかしてネタキャラか?」
「いや、別にそうではないが、ハルバード使いの召喚士だ」
「何やら濃ゆい人物そうだな」
「普通だぞ?」
「分かった。会ってみたい」
「了解」
ウルカが呼ぶ、程無くして【C】の建物から一人の子が現れる、身長は小柄とも言い切れる、手にはハルバードを握り、召喚士の恰好をした珍しい組み合わせの奴だ。
「ウルカ、噂の強化系ポーション作りのレドかな」
「ああ。こちらがレド、腕の好い調合師兼盾戦士だ」
「動画は見たよ。ウルカと同じぐらいの使い手でしょう。あっ、後、僕はヒリュウです」
「よろしくヒリュウ。一応自己紹介のレドだ。調合・盾・剣をメインに扱う」
「僕は召喚士なのですが、兵器専門なのです」
「兵器?」
「つまり。装備を召喚して戦う、武装召喚士なのです」
「その抱えている物は」
「ええ召喚した物です。武装召喚の場合は使用する本人のスキルに依存した物が作られ、使い手にも同じく技量を要求しますから、あまり意味はないですが」
「これまた変わった奴もいるな、普通は召喚獣を召喚して戦うのに、召喚した本人が戦う召喚士とは驚きだ」
「変な召喚士で申し訳ない」
「いや、面白い戦い方だ。少なくても武装代金が要らないのは面白いな」
「剣・盾も要らないのでは?」
「ソロの時にはクロスボウも使うのだ」
「クロスボウ?」
「機械仕掛けの弓だ」
「どんな物です?」
レドが見せる。弩と呼ばれるものであるが、ボウガンという商標もあったりするが、正式にはクロスボウだ。他にも石を飛ばすストーンボウもある。
「これは、これは好いですね。面白い仕組みの弓だ」
「何より狙って打つだけなので大した技量も要らないしな」
「・・どうやって作るのですか?」
「武装召喚には向いた品だな。確かに」
「弓を横にしてみればわかるイメージだ」
「ああ。なるほど、確かにの通りだ」
「このトリガーのような部品は何です?」
「そのままトリガーだ。ちなみに矢は作れるか?」
「作れると思いますが、作ったこともないですし、まあ作ってみます」
つくられた矢をその矢を取って矢台に乗っけ、弦を引く、これらの動作をはした後に、上空に向けて撃つ。
「なるほど、なるほど、なるほど」
「普通の弓に比べて装填が難しいのが難点だが、結構使えるだろ」
「ええ、ええ、これは使えます。ようし。作ってきます」
「落ち着けヒリュウ。まずは食事、その後に素材集め、それと同時にクロスボウなどの装備品を見るのもよいぞ。お勧めには連弩もある」
「食事?」
「俺が腹が減ったからだ。後ボーナスが付くから生産の前に1時間のボーナス食品などを食べるのもよいぞ」
「本当か、食事をすればボーナスが付くのか?」
「食べた後に生産すれば随分変わるぞ」
近くの店に入る。
「らっしゃい」
「うな重特盛一つ、お持ち帰りのうな重特盛二つ」
「まいど」
「お、同じくうな重特盛を頼む」
「ゲームでは太らないからなあ。僕もうな重特盛で」
三人で座席に座り待つ、店では大繁盛らしく、お持ち帰りを待つ客が十数名いる。主が出したうな重は絶品だが、お持ち帰りだと少しだけのたれが少ないのが良い事でもあり味わいとしては少し勿体無い気分もあり、それをどうするか悩む。
「へい」
主が出したのは紙、ペンだ。
不思議そうに見ると。
「暇つぶしにどうぞ」
この粋な計らいに笑いを浮かべながら書き、注文を受け取ると同時に渡す。
リアルに作られているために食事の方も微妙な変化がつくらしいことはわかっていた。
三名でうな重を食べる。
リアルではとても食べられる物でもないし、ましてや天然物はもう食べられない時代なのだから、ゲームの中で食べるしかない。
食べた後には会計を済ませ、今度はクロスボウ、矢、これらの仕掛けの物を武器店で見付けては試射等で試し、☆+1の物以外では隠れステータスなのか、必要な技量が足りないらしく、思うように持てず、また射撃しても途中で落ちるなど、本人の技量に左右される傾向にあった。それらは星のランクが高い物ほど顕著で、☆+1以外ではまともに持てないし、撃てないし、当たらない。
ストーンボウ(石を射出するクロスボウの一種)
ライトクロスボウ(計量化されたクロスボウ)
ヘビークロスボウ(大型化された携帯重量最大のクロスボウ)
これらのクロスボウ類もある。
ヒリュウは研究者タイプらしく、一つ一つのクロスボウの一種を装填する矢、石等も買い、これらを熱心に観察していた。
「クロスボウのスキルはとったのか?」
「いえ、木工のスキルを取ります」
「確かに作れるようになるが、射撃不能だぞ」
「LVを上げてかに取ります。それでは僕はそろそろ」
「お前は直ぐに引き籠るな。威力を試さないのか」
「威力ですか?」
「そりゃあそうだ。ろうどんなに役立つかはエネミーに与えたダメージの総量だろう」
「確かに、その通りです。しかし。うー。木工のスキルを取ればな成ります」
「他にも細工なども必要だし、クロスボウも片手用、両手用、ストーンクロスボウの様な小石、弾丸を発射する物、シャフトの様な弓とは違った短くて太い矢を放つクロスボウ、これらもライト、ヘビーの二種類に、標準的なベーシックタイプもある。これらの利点やなんやらが必要だ。もしかして何もわからずに、性能だけを追求すればよいと思っていないか」
「確かに、実体験から得られることは大きい、何より自らの使い手になるのはやはり魅力的だろう。自らが扱う為ならやはり熱心になるのも自分の為だし、何よりその分の専門性もある、単なる研究者だけではないしな」
「分かりました。クロスボウのスキルを取ります」
「ああ。それでだが、ヘビー、ベーシック、ライトの三種類から選べるぞ」
「ちなみにレドはどのような選択を?」
「俺はベーシックだ。器用貧乏感はあるが、ソロなら魅力的だしな」
「なるほど、僕のような後衛タイプなら、威力か、それとも連射速度かの二択ですか?」
「上がり易いのはライトの方だ、上がり難いが武装召喚ならヘビーがお勧めだ」
「ヘビーの場合、武装召喚で装填か省けますしね。つまりそういう事ですね」
「その通りだ」
ヒリュウがクロスボウを取り、ヘビータイプを選択した。
「結構重量が軽減されますね」
「実体験の感想だな。好かったなヒリュウ」
「ええ。ウルカの紹介でしたが、感謝しますよ。後フレ登録いいですか?」
レドが頷き、フレンド登録する。
「よし、狩りに行きましょう」
「賛成だ。リーダーはウルカでよいか?」
「ダメだ。私はわき役が好きなんだ」
「僕もです」
「ありゃりゃ。俺もなんだが、まあリーダー役代理を行うか」
二人に狩りの為にPTを作り申請を行い、二人も参加し、狩場の事になる。
「平原は微妙だが、狩り易いではある、山林は中々の場所だが視界不良や障害物が多く、だが他の高レベルマップよりはマシだろう」
「東側の海岸もあるぞ」
「でも採取を考えるとどうしても陸地ですし」
「なにより採掘ポイントもある」
「そういえばレドは採取の方か?」
「ああ」
「ふむ。やはり採集系は取るべきだろうか」
「何かと役立つぞ」
「裁縫、革細工なら」
「裁縫と言えば綿花だし、それなら採集スキルの採取がいいだろう」
「革細工なら狩猟だね。革がありそうなエネミーからドロップするそうだよ」
「なら狩猟だ。これなら被らない」
「被るが採集効率は上がるぞ。」
「いや誰も持っていない革こそが意味があるのだ」
「なら決まりだな」
〖イーニャ・西側山林〗
三人で狩るために来た西側、魔法スキルの付加を二人に掛け、MPの事から速度上昇を二人に一回ずつかけた。
レドはクロスボウ、ブロードソード(両刃の片手剣)バックー(小型の盾)の三種類の武具を扱い、強化系ポーション、強化系お香・刻みタバコ(ハーブタバコのような物)回復用のポーションも扱う。
ウルカは忍者刀(片刃の直刀)手裏剣(主に棒手裏剣)の二つに、忍法を操る。
ヒリュウはハルバード(斧・槍・鎌の複合の長柄武器)クロスボウ、召喚魔法の三種類を扱う。クロスボウはヘビークロスボウ、一撃の威力は大きいが装填が更に悪化したタイプだ。
三名で素材集め、真っ先に向かうのは採取・採掘などの採集ポイント。
これらの採集行動で全員経験値などの物が手に入り、採集した個人にはそれぞれのアイテムが手に入るのだ。
「ここだ」
「エネミーが居ないぞ?」
「いや居るぞ?もしかして索敵とか」
「ない」
「じゃあ。感知とか」
「そういうスキルはない」
「レド、僕もないよ」
「どうやって狩りをしていたのだ?」
「見たまんま」
「猪武者かよ。もしかしてここに来るまでのエネミーも感知していないか、分かった」
クロスボウでエルダーに向けて狙撃する。
ダメージを受けた、エルダーはカンカンになってゆっくりと歩いてくる。
ユーモラスの様なエネミーだが、見たままにDEFが高いらしくそれほどのダメージは通っていない。
「火遁の術」
ウルカを中心に広がる忍法の火遁の術。
エルダーに凄まじいヒットになるが、そのエルダーは珍しい事にリーダーエルダーらしくリンク範囲内にエルダーが一斉に動き出す。
「さあ逃げようか」
「何故だ?」
「さすがに10体とかは厳しいじゃないかと思うけど」
「正確には13体だ。」
「もしかして一斉に掃除すれば楽だと思った?」
「その通りだ」
なにやら苦しい言い訳だが、レドはヒリュウを見る。
碧眼の瞳に移るのは諦めという物だ。
「戦ってみよう」
「しゃあねえな」
接近される前にウルカに攻撃力上昇、飛龍に防御力上昇を掛け、自分にも速度上昇、防御力上昇を掛ける。
エルダーリーダー以下リンクしたエルダーも、強化系の魔法に激高し、ヘイトが大量に集まる。
「二人ともこのエルダーには弱点属性は火、耐性は物理属性全て、かなり頑丈な連中だ。しかもDEFダウンの代わりにATK特大強化の狂暴中だ」
「当たらなければよい」
「落ち着け、こういう場合の為にアーツがあり、スペルもあるわけだ。ヒリュウに関してはヘビークロスボウでの射撃後、ハルバードをもってフルスイング攻撃、どのみち動きは元々鈍いし、このエネミーはある意味訓練だ。」
「了解」
「ウルカには、またあればできるか?」
「ああ。ロデオか、分かった」
「死角になっている箇所が弱点の事も有る、焦らずに行くぞ」
「【アンカー・シールド】」
ヘイト管理の鉄則のアンカー・シールドでヘイトを集めてタゲ固定した。
「【ヘビーデュアルアロー】」
一体のぶつかった二つの矢でかなりのHPが削られ、飛龍が武器を収納し、召喚魔法のスペルを使う。
「【兵器召喚・ハルバード】」
手に持ったハルバードを構え、近くに接近するエルダーをフルスイングでぶつける。さすがは中世の万能武器だ。
「行くぜ!」
「了解だ!」
跳躍を繰り返し、エルダーの頭上に乗っては剣で突き刺し削る、一撃後は直ぐに足場を替え、船を飛び移るように飛び跳ね、これで一つずつ削りながら、クラウドコントロールの様に敵集団を一纏めに持っていき、頭上からの攻撃でエルダーたちは大苦戦。それはそうだろう味方の頭上に乗っかっているプレイヤーを叩くためには味方が屈まないといけない。
「食らえ」
「【火遁の術】」
敵集団のど真ん中で使い、その火力はバフの効果もあり、激的な効果を生む。
「ナイスだよウルカ」
外側のエルダーをヒリュウのハルバードによって叩き割れた。
一体が狩られた。
「気持ちの良い戦い方だ」
こうして狩られていくエルダー達だ。
エルダーの頭上を足場に、飛び跳ねて突き刺す攻撃で、何体か屠る。
最後の一体はウルカの忍者刀が向かう。
「【飛燕】」
忍者刀から光刃が散弾的に放たれ、リーダーエルダーを破壊する。
「ほんじゃあ。お香焚くぞ?」
「何のお香だ?」
「MP/TPの回復用だ。ほらヒーラーと燃料は居ないからな」
ヒーラーは回復の使い手、燃料はスキルによるMP/TPの提供などだ。
少人数のPTではこれらの役割の者がいないことが多い、またレドを除けばHP回復手段すらない者の二人だ。
三人のMP/TPが最大値まで回復し、その後に採取と採掘を行い、ウルカは暇だが、三人のPTでは役割もしっかりと有り、戦利品などのドロップアイテムの鑑定を行う、このアイテム鑑定はレド、ヒリュウの二人が持っていたので助かる。
採集ポイントの採掘ポイント、採取ポイントの二つを回りながら、ウルカはアイテムとの鑑定を行い、積載量の限界近くまで集めるか、それとも採集用の装備が壊れるまで行い、一つを壊してから程程に溜まるので、戻る。
「一纏めに鑑定した方が良いのではないか?」
「退屈しのぎにはなったでしょう?」
「まあな。だが、どうもなんというか」
「何々?」
「このお香は好いな。懐かしい匂いがする」
「試作品しかないが、開発したら提供しよう。まあ薬物はほれCで色々と話が必要だからな」
「意外にも少ないんだよねえ。薬物の生産プレイって」
「ポーションと強化アイテムだ。そんな薬物と言われたらイメージ非常に悪い」
「そういうの気にする?」
「知り合いの店に卸している。俺一人なら気にしないが、商売相手に迷惑はかけられない」
「悪かったよ。もしかしてだけど強化ガスっていうのもこのお香なの」
「その通りだ。これはまあ、使い方次第では戦場を一変するほどの威力があるために、Cでも審議中なのだ。店に卸したのも試作品だが、それでも随分と声が寄せられたのも頷ける」
「確かに、煙一つで全体を強化、もしくは何らかのバッドステータスに陥れられる。ある意味劇薬のようなものだ」
「怖いことを言うね。まあそうだけどね」
このまま〖イーニャ〗に戻、夜の一杯を嗜むわけではないが、ゲームではアルコールが摂取できないためにちょっとしたお洒落な店に入る。
「三名様ですか?」
「そうなんだが、少し質問してもよいか?」
「どうぞ」
「俺達みたいな連中でも店に入るのは良いのか?」
「はい。可能です。ただ店での迷惑行為は辞めてください」
「了解だ。三名で頼む」
店員に案内され、中に入る。
武具の等の装備品は収納し、出された茶を飲みながら、注文した。
「ビールテイスト清涼飲料水、特上握りセット一つ、豚骨醤油ラーメンミニサイズ」
店員が受け答え、迷っていた二人も寿司、ラーメンを頼む。
「さてと、そろそろドロップアイテムの区分けだな」
「鉱石類は僕、皮などはウルカ、薬草などの植物はレド。これぐらいでいいんじゃないかな」
「俺としては問題ないのだが、そんな簡単にドロップアイテムが仕分けできればよいが」
「いや。随分と鍛冶に使う物、裁縫・革細工に使う物、調合に使う物は分類できるぞ。その理由は何の素材になるのかという分かり易い説明文がある」
「へー。そうなのか、やっぱり鑑定用アイテムがある違うのだな」
「ああ。これなら一々喧嘩しないでも済む」
「しかも用途が分かるから便利だね」
「俺がリーダー代理なので、ウルカに集めてそれをウルカに選別してもらう命令」
「まあ別に好い、しかし、最近なんというか」
「飯が美味すぎる、かな」
「ああ。信じられない贅沢尽くしだ」
「でも朝は味噌汁と白米だね」
「それは欠かせん」
「全くだ。味噌汁の具にはもめん豆腐が欠かせない」
「うむ。程よい硬さが良いが、ワカメも欠かせない」
「なら注文してみる」
「異議なし」
「試してみるべきだな」
どうやら三名とも和食党らしく寿司とラーメンを運んできた店員に伝えた。
現実なら個人当たり万単位の値段の食費だ。
寿司を食べ、その白身、赤身、青味、貝、甲殻類、卵焼きが二貫ずつだった。
その後のラーメン。
「一つ分かったことがある」
「たぶんこの世界で初めての夜を過ごす者は衝撃的なことだね」
「ああ。腕前が良過ぎる。とても真似できる味わいでもないし、この世界の料理人は客の舌をよく考えている」
腕前の高い料理人尽くしのこの世界の、この町の、この店の味噌汁は、塩梅が絶妙で、程よく暖かく、少し湯気が立ち上りながら、ネギと豆腐が混ざりその味の良さは絶品だ。しかもこれだけ食べてもまだ空腹を感じるほどの量に抑える。
「デザート行くか」
それぞれが注文し、この世界の住人(NPC)からすれば1G=100円ぐらいだ。100Gは1万円相当するが、通常の料理が数十Gと言う事も有りかなり高額な値段設定でもある。
飯を食べた後は、生産所に向かう。
『レド君』
「ヒラメさん?なんかトラブルですか?」
『なのかしら、多大な最後の一品が売れたわ』
「大繁盛じゃないですか」
『大繁盛過ぎてタバコを吸う時間もないのよ?リアルじゃ吸えないんだから、繁盛し過ぎてアイテムがなくなる店の気分が分かったわ』
「今から向かった方が良いですか?」
『そうさねえ。なにがなんでも山分けだから、資金は送金しておくけど、明日は相当な量を頼むことになるわよ』
「スキルUP!」
『若いっていいわね』
「じゃあ。残った時間で生産しておきます」
『おうおう。男の子も元気な物ね』
そう言って切れ、直ぐにメッセージ共に送金があった。
先にも述べたが1G=100円の価格差位だ。
1万Gは100万円、10万円なら1000万円だ。
送金された金額は24万1051G
どれ程儲かったのかよくわかる送金額だ。
☆☆☆
生産所での生産、渡された素材をよく調べ、ポーション用に使える物を選別し、状態異常を治療する薬、ゲージの回復のためのポーション、強化薬に使えそうな物、他にも染め物などに使えそうな染料の元など。
すでに用途があるのは手を付けず、使えなさそうな物から行う。
枯れ枝、これは調合に使う物でも特に魅力は感じず。
豆、これは調合でも、飲料や食品に関係しそうで、手をつけず
肉、これは明らかに食品だ。
イチゴ、調理品としか考えられない
巣、どこかの高級食材だ。
石、一応調合用だが、今のところ急いで調べる必要もない。
魅力を感じない素材ばかりだが、ウルカが染料などを欲しがりそうなのでやや身が入っての調合。
藍染の原料になりそうな染料素材を見付け。
葉っぱである葉を刻み、水に溶かし、後はぐるぐると混ぜる。
これらを白い生地などに付けると真っ青にはならないが多少は青く染まる。
「まあ水色ってところか」
色々と混ぜてみて、思わぬ色になる。
「真っ黒かよ。うーん。難しい」
研究記録にも載せ、他の薬品の原料になりそうな実験を行うか、それとも染料を整えるか悩むが、染料を選択し、藍染の他にも、適当な線材料で作ったかしっかり記録していた黒染め、この他にもこの二つを混ぜた黒藍染を作り、一応染料に研究は止めた。
「よし、豆と行こうか」
コーヒー豆の様に焙煎したら、失敗のメッセージが流れる。
コーヒー豆の様に刻むも、失敗した。
どうやら調理のスキルが必要のようだ。
「今度は枯れ枝と」
枯れ枝を見る、木の枝となると燃料系の炭等があるが、それは難しいので別に考える。
一応匂いも嗅ぐ。香道では聞くと表現するらしい。
「さすがに香木はないか」
ある意味一獲千金の者が現れそうな物はなかった。
その他にも特に目立つ素材的な物はなく、染料以外特に収穫のない時間が続く。石を砕いてみて、これらわ水に混ぜる。特に成功はなく、失敗続きだ。