屍を
きみは暗闇を一人で行く
なぜ靴も履かずに
きみの白く細い足は だから沢山の血を流す
きみは誰よりも傷つきやすく
鋭敏な痛覚が騒ぎ出すというのに
僕は道の小石を 除けることで精いっぱい
きみの歩みは早すぎる
春の花は好きですか
暖かな香りは好きですか
だからと言って 手あたり次第
摘み取ってしまうのは惨いのです
本当は暗闇などありはしないのに
固く閉じた瞳を 開けばいいのに
摘み取った花の蕾は 思った通りに咲かなかったのですか
甘い芳香を放たない花は そんなにも罪深い裏切りなのですか
本当は暗闇などありはしないのに
固く閉じた瞳を 開けばいいのに
きみの手折ったのは春の陽射し
本当の春が そこにあるのに
平坦でない道に できた澱みを
その花で埋めてゆく 悲鳴をあげながら
その道を裸足でゆく 悲鳴をあげながら
よく見てごらん その花に棘は無い
きみの足下にあるのは
枯れた屍
耳を澄ましてごらん
聞こえないかい?
きみの悲鳴の向こう側
屍の悲鳴が