きかんしゃズーマス
俺は、俗に言うサラリーマンだ。
オフィスは、都心にある。家族は、まだいないけど。
でも残業もある。俺は今、残業してるところだ。
「じゃー今日は仕事切り上げようかー。」
こう言ったのは、俺の課の課長だった。
課長の一言で、同僚たちは自席から立ち上がって、帰っていった。
もちろん、俺も帰るのだが。
特に用もないので、駅に直行して、電車に乗ることにする。
ホームの列の先頭に立ち、俺は見事、座席を獲得することに成功した。
通勤ラッシュの中、座席に座れるなんて最高の贅沢だと今の俺は思う。
気付くと、俺はとんでもない所に着いていた。
電車の座席に座ってて、でも、だんだん眠くなってきて・・・。俺はそこまでしか覚えていない。
とりあえず,ここが電車の終点みたいだ。帰りの電車を探すか。
そう思って俺は時刻表を見てみる。
あれ、もう電車ないじゃん、ちょっとふざけんなよー。ここで夜を明かせって言うのか。
とりあえず俺は駅から出てみる。
夜だから景色は見えない。でも大体、どんな所はわかった。
なんだよここ、寂しい所だなー、てかコンビニないじゃん。たぶんホテルとかもないな。
あきらめて、俺は駅のホームのベンチに腰掛ける。
この駅、駅員とかいないのかよ。てか運転手はどこ行ったんだよー。電車は側線に入ってるし。
まじで、始発まで待つのかよー。ベンチで寝ろって言うのか。
その時、俺は遠くで踏み切りが鳴るのを聞いた。
あれ終電はいったはずだろ。いったいなんだよ。
しばらくすると駅の目の前の踏み切りも鳴り始めた。
なっなんだって言うだよ。俺、幽霊とか苦手なのになー。
しばらくすると、しゅっしゅっと音を立てながら汽車が駅に近づいてきた。
つか、あれって汽車か?
良く見ると、汽車に手足がついてるし。
って、顔あるし、しゅっしゅって口で言ってるよ。
なんなんだよあれー。
そうこう思っているうちに、その汽車(なのか?)は駅のホームに停車(と言えるのか?)した。
その汽車らしきものは、全体が青い車体で、数字の”1”と”NAS”の三文字が書かれている。それに後ろには、ロケットの噴射口みたいなものがついてる。
俺は、好奇心から目の前にいる汽車らしきものに恐る恐る近づいてみる。
「なんだ、お前。」
とても低い声が、俺の耳に入った。
俺は、動けなくなった。恐怖が、俺の体を支配した。
「お前だよ、お前。こんな時間になんでホームにいるんだい?」
ホームにいるって、俺しかいないよな。明らかに俺に対して言ってるよな。
俺は、声のした方向に、目を向けてみた。俺は唖然とした。
「そう、お前のことだよ。もしかして、あれか、終電に乗り遅れた口か。」
顔のついた汽車がしゃべってるよ。なんなんだよこいつ、俺に話し掛けてきてるのか?まさか、妖怪?だったら何をされるかわかったもんじゃない。でも話せるんだったら交渉の余地もあるよな。できる限りやってみるか。
「そうですけど、あっあなたは一体何物なんですか。」
恐怖心から、思わず敬語を使っていた。
「俺の名は、機関車ズーマス。」
ズッズーマス?なんだそれ、その名前どこかで聞いたことあるぞ。
「どっどこから来たんですか。」
「ズーマスランドだ。この近くの遊園地の地下にある。」
ズーマスランド?まるでどこかの国の遊園地みたいだな。
「で、今日はここに何をしにいらしたのでしょうか。」
「今日は、試運転でこの路線を走行している。そうだ、お前、どうせ帰る手段ないだろ。だったら俺に乗ってかないか。運賃は298円でいいぜ。で、お前の家はどこだ?」
「こっ国分寺です。とッ東京の。」
やばい、俺、完全にあっちのペースに乗せられてるよー。でも、乗せてやるって・・、まさかあの椅子の上かよ。明らかに上にただ置いてあるだけじゃん。
「国分寺か、お安いご用だぜ。俺の最高速度は時速7000キロだからな。40秒で着くぜ。」
この汽車って足で走るんだろ、そんな速度出せるはず・・あるかもしれない。
あの後ろのついてたロケットの噴射口みたいなもの、まさか。
しかし、こんな吹きさらしの席で時速7000キロは危険すぎるだろ。でも40秒で着くのかー。あー駄目だ駄目だリスクが高すぎる。だから298円なんだー。
「どうする、俺に乗るのか、乗らないのか。どっちだ。」
すごい剣幕で俺に聞いてきた。
どうしようかなー、朝までここにいるのも嫌だしなー。かと言ってあの椅子の座るのは怖いしなー。
「そうか、上の席に座るの嫌か、わからないでもないな。でも席はこれだけじゃないぜ。」
ここだけじゃないって、他の何処に席があるんだよ。
「その席とは一体何処のことでしょうか。」
「煙突の中だ。」
何言ってんだこいつ。煙突の中が座席、ってふざけんじゃねーよ。
でも、ここできれても何されるかわからないからな。少し探りを入れてみようか。
「煙突から煙、出てますけど、これってなんなんですか?乗っても平気なんですか?」
「煙?あーこれか。これは雰囲気をだすために焚いてあるだけで、こんなのなくても走れるぜ。」
そう言うと、ズーマスは煙を消してみせた。
まぁ、これなら乗れないこともないか。でも、本当に国分寺までいってくれるのだろうか?本当はあの世行きだったりするかもしれない。
「乗るなら早く乗れよ。もうすぐここ出発しないといけねーんだよ。」
面白い、乗ってやるか。俺は煙突の中の席?に座った。
「じゃーいくぜ。お客さん。しっかりつかまってな。」
ロケットの発射する時のような爆発音とともズーマスは出発した。
あまりの衝撃に、俺はその瞬間、意識を失った。
最後に「ポーン」と音が聞こえたような気がした。
’昨夜から、東京都の国分寺市から山梨県の河口湖町にかけての一帯が壊滅状態に陥っています。原因は今だ、わかっておりませんが、調べによりますと、隕石みたいなものが落下したと言う目撃証言もでており、現在も調べをすすめています。’
荻原のやつ、今日会社に来れないかもしれないなー。だってあいつの家、国分寺だろ。
課長はテレビを見ながらそう思った。
’今入ってきたニュースです、さきほど東京駅の駅長あてに、脅迫文めいた文書送られてきたことが明らかになりました。’
なんだなんだ、テロでもやろうとしてるのか、こっから近いし、やられちゃ仕事ができなくなる。
荻原のことなど一気吹っ飛んだ。
課長は食い入る様の画面を見ていた。
’この文章には、今日、12時丁度、東京駅16番ホームに、機関車ズーマスなるものを入線させるのでホームを空けといてほしいと言う内容が書いてありました。JR東海は警察に連絡するとともに安全のため東京駅の新幹線ホームをあけて置くことを決定しました。警察も、悪戯、テロの両面で対策をすすめていくとの事です。’
今回の出演は、
俺こと荻原啓一。
課長こと小野寺明人。
そして、
ズーマス
でした。
自分なりにホラーを書いたつもりですが、読んでもあまり怖くはないと思います。まだ経験不足なもので・・。皆さんの評価をお待ちしています。