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射!~Kyudou~  作者: ココロ丸
5/23

焦りと劣等

〇カーリー ウィルソン


●アメリカから来た金髪美少女。スラッとしていて、モデルのような体型。雪と同じ八城工業高校に通うこととなり、弓道部に所属した。

その容姿から学校中の男子からかなりの注目を浴びている。一部で雪の彼氏だという噂が流れ、雪はたまにきつい視線を浴びる・・・

日本に来たのには色んなわけがあるらしいが・・・?



用語説明

〇取り懸け・・・簡単にいえば、カケに弦を引っ掛けること


〇矢取り・・・矢の回収。矢払いとも言う。


〇弓道教本・・・とりあえず最初はこの本を見て勉強することが多い。読みこむと、イメージや意識がしやすくなると思います。また、昇段審査でもお世話になる本です。

「・・・胴造り・・どう?」

「よっ・・・おお!これは・・」


カーリーの初めての弓道・・・まぁ、今日は基礎中の基礎。今は胴造りを練習しているようだが・・・


「葉月先輩、僕もいいですか?」

「ええ、胴造り強いわ、この子!」


胴造りは簡単に言えば、どっしり構える!ということだ。軸がしっかりしておいたほうが正確に弓を引けるのは、経験者でなくても想像が付くと思う

強いかどうかは後ろから腰の部分を軽く押してみると分かる。これで倒れるようであればまだまだ・・・


「よっ・・・!?」

「・・・・どう?」


つ、強い・・・ビクともしない・・・


「い、いいんじゃないか!」

「・・・うれしい。・・葉月、次」

「え?ああ、そうね!」


・・・・カーリーって太ってないよな・・いや、むしろ細いか



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「あー、また力入ってたよ、蛍」

「ですよね・・・井田先輩はどういう意識で引いてるんですか?」

「俺?そうだなぁ・・引く前に脱力するかな?」

「脱力ですか・・・」

「おう!でも、取り懸けをしたらもう何も考えないようにしてる」

「・・・そうですか」


うーん・・脱力。でも会に来るとどうしても力が加わってしまうんだよなぁ


あ、ちょうど引き終わったみたいだ。


「鹿本先輩!ちょっといいですか?」

「?いいよ。でも今引き終わったから矢取りに行きながら話しましょ」

「はい!」



うちの弓道部は人数が少ない為、引き終わればすぐに矢取りに行かなければならない。そうしないと次の人が的前で引けないからだ



「えーと、先輩って会が長いじゃないですか?何か意識してることとかあります?」

「そうねぇ・・・会の長さは特に意識はしてないわ。あとは、的に向かって伸び続けることかしら?」

「的に伸び続ける?」

「そうよ。下筋・・つまり、上腕三頭筋ね。これを意識しながら矢筋にむかって・・つまり的に向かって下筋を伸ばしていくイメージよ。わかるかな?」


・・わかるようなわからないような



「あはは・・微妙な顔だね!うーん・・一度弓道教本を読んでみたらどうかな?」

「葉月先輩が読んでいるあれですか?」

「そう!あれを読めばだいたいイメージは付くと思うわよ?」

「そうですか!ありがとうございました!」

「じゃあ、私はもう一立引いてこようかしら」



そういうと先輩はカケをつけ始めた。先輩は僕が入部して数日後に練習中倒れてしまった。その時、身体が弱いことを知った。どんな病気だとかそういうのは分からないけど、あまり心配されるのは嫌いらしい。

今日は調子がよさそうだ



「ゆっきー、前離れになっていないか見てくれるか?」


といったのは竜だ。駆け出しにして既に的中率5割を超える期待の新人ってやつかな・・


「ああ、良いよ」


「・・・・・・・・・」


ギャン・・パンッ!



「・・・そうだな、少し前離れだな」

「やっぱりかー・・確か前離れだと的の後ろに飛ぶんだよなぁ」

「今のも後ろギリギリに中ったな」

「ゆっきーよく見えるな・・俺あんまり見えないんだけど」



なぜ竜に聞かないのか?それは僕のプライドが許さないという単純な答えだ。いくら初心者にしては上手いからといって、同学年に聞くのは劣等感を感じてしまう・・・



「・・・引こう!」



考えていてばかりじゃ上達しないし、もう一回引こう。そうだ!水谷先輩に射を見てもらおう!



「・・あ、水谷先輩!ちょっと僕の射を見てもらっていいですか?」

「ん?良いよ、どこが課題なんだい?」

「会になると小手先で引いてしまって、会も短くなってしまうんです・・・」

「うん、分かった。そこを重点的に見ておこう」





射場に立つ。後ろには水谷先輩。姿は見えないが、視線は強く感じる。いつもの優しい目ではなく、かなり真剣なまなざしだ・・・たぶん。だって見えないし



「・・・・・・・」



打ち起こし、大三・・・もうこの時点で力が・・・



「・・・・く・・」


会・・きつい。でも先輩が見ていると思うと、せめて会だけでもと思ってしまう。

でも・・・・・・


「・・・・!?」


会を持てず無意識に離してしまった

ギャン・・・カランカラン・・・・



矢は失速、滑走・・無様な感じがして仕方がない。でも、水谷先輩は僕が4本引き終わるまで何も言わなかった。


「・・・うん、とりあえず矢取りをしておいで」

「・・・・・はい」




「お、雪!」

「・・隼人。どうした?」

「いや、さっきの矢取りでお前の矢も回収したから・・・ほら!」

「・・ありがとう」

「なんだよ元気ないな?確かに4本とも外れていたけどさ・・」

「まぁ、いろいろあんだよ」




「お、早かったね?」

「あ、隼人が矢取りをしてきてくれました」

「そうか・・。じゃあ、蛍も次の矢取りに行きな?」

「え?・・・あ、はい・・?」


僕は今引いてないのに?・・・まぁ、先輩がそういうなら



「今・・・、なんで?って思ったでしょ?」

「え?あ・・・はい」

「ん~・・そこからなんだよ。蛍はもっと周りを見ないと。先輩が何か仕事をしていても、それを代わろうとするのは竜や隼人。雪は何か考えていて周りが見えていないんだ。自分の世界に入り込んでいる。今、隼人が矢取りに行ったときも、お礼はそっけないし、相談もしなかったろ?弓道にもチームワークは当然存在する。」


「・・・・・・・・」


「周りが見えていれば、自分も誰かの矢取りをしてから行こうかな?とか思うはずだ。これはチームワークだと俺は思う。まぁ、少し俺の個人的な考えもあるかもしれないな。でも、もっと周り見て、頼ったらどうだってことだ。」


「・・・・はい」


「まぁ、俺も授業抜けたりしてるけどな・・・まぁ、あれにもちょっと事情があるんだけどね・・」

「・・事情ですか?」

「ああ。でも、あまり深く入ってこないでくれるとありがたいよ・・ははは」

「・・・わかりました。・・僕、矢取りしてきます!」

「うん、いってらっしゃい」



結局プライドが邪魔だったかぁ・・・。わざわざ矢取りしてきてくれた隼人にも相談しなかったなんて、結構強情だったかなぁ・・

入部する前から同級生、下級生に物事を聞くのが嫌だった。だから自分でたくさん勉強してきたし、ほかのことも自分で調べてきた。自分より年上の人やインターネットで調べたりしていた。

水谷先輩はまだ少しよく分からない人だけど、的確なアドバイスをくれる。気づかされることある

今言われて気づいたこともある。それは自分のプライドについて。なんとなく分かっていたけど、直視はしていなかった。チームワークなんて考えてなかったなぁ・・・・



「今思うとある意味差別だよなぁ・・」


そう、差別だ。先輩には相談して同級生には劣等感を感じるから相談しない。差別だな


でも、改善できる・・そんな気がする!


矢取りを終え、隼人と竜に矢を渡す


「ほらよ!じゃあ俺、水谷先輩にアドバイスもらってくる!」

「「お、おう・・?」」





「・・・お、蛍。なんか笑顔になったな!」

「え?そうですか!?」

「あはは!じゃあアドバイス・・・と行きたいところだが」

「?」


先輩が指差すほうには時計。時刻は7時半だ。


「あ、もう終了時刻ですか・・」

「また明日だな」



「おーい、葉月!終わるぞー!」


カーリーと先輩は外で練習していたから、井田先輩が声を張って呼ぶ


ガラララー



「・・井田君、この子、やばいわよ・・」

「は?何が?」

「カーリー、ちょっと徒手してみて!」

「・・・・うん」



そしてカーリーが徒手を始める。初日で徒手をするだけでも凄いが・・・


「・・・・・・・・・・」


足踏み、胴造り、弓構え、物見、打ち起こし、引き分け、会、残心




それは鮮やかだった。流れるような動作。しかし、それも丁寧に行っている。どこか水谷先輩の射に似ている・・・



「「「おーーーー!」」」



みんなの声が重なる。いや~、これは拍手だ!


「すげえ!めっちゃ綺麗じゃん!なぁ!隼人?」

「ああ・・これは竜の比じゃねぇ・・」

「喧嘩売ってるのか?・・雪は?」

「単純に綺麗だと思う」


「単純に?」

「綺麗?」

「だと?」

「思う?」


水谷先輩、井田先輩、葉月先輩、鹿本先輩という順で言葉を並べる。それもニヤニヤしながら・・・

あれ?なんか変なこと言ったかな?


「・・・・・///」

「おうこらカーリー何照れてんだ!別にお前のこと綺麗て言ったわけじゃ」

「「「ツンデレ」」」


「兄妹ですよ!みなさん!」




そんなこんなで、自分の気持ちの改善とカーリーのまさかの上達に衝撃を受ける一日であった




どうだったでしようか?え?やっぱり用語が分からない?

・・・じゃあ弓道しましょう!笑

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