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セカイガオワルヒ

作者: saki

衝動で書いてしまいました。

楽しんでいただけたら、とても嬉しく思います。

 世界が終わる。

 そんなことが、ここ最近よくテレビやラジオで噂されていた。

 正直、下らないと思う。

 なんとか文明の予言だとかなんとか様の大予言とかいろいろな説はあるけど、とにかく世界が終わるらしい。

 そしてその予言によると、世界が終わるのは今日。今日の日本時刻午後1時。お昼時。今は12時55分。当たり前だけど、何も起こらない。

 今世界の人々は、当たり前のように仕事をして、当たり前のように学校に行って、当たり前のように家事をしている。

 普通だ。何かが起こるわけない。

 テレビとかでも、この「世界が終わる」という噂はネタとして使われてる。あまりおもしろくないから、私は嫌いなんだけど。

 私は今、街をブラブラと歩いている。大学の授業は午前で終わったし、サークルにも入ってないから暇なんだけど、家には帰ってない。なんか、やっぱり世界が終わるっていうのは、少し気になったから。いや、本当に世界が終わるならどこにいてもいっしょか。

 見ると、すれ違う人や信号待ちをしてる人、お店の中にいる人も時おりケータイや腕時計を確認している。やっぱり、なんだかんだ言ってみんな気になっているんだ。世界が終わることを。

 私もなんとなく時計を確認してみた。12時58分。あと2分、か。

 少し考えてみる。終わるとしたら、どうやって世界が終わるのだろう。

 ベタだけど、隕石、とか。でも、ありえないな。もしそんなものが降ってくるとしたら、とっくに観測されて大ニュースになってるはず。そして、当然そんな話は聞いてない。朝に聞いたニュースは有名な芸人と女優の破局とか、自民党がどうとか民主党がどうとか言ってる政治の話くらいだった。というわけで、隕石じゃない。

 じゃあ、何か。……天変地異、かな?うん、これはありえるかも。大地震が起きたり火山の噴火があったり津波がきたり。でも、それが世界で一斉に起きるのかな?日本は地震が多い国で有名だけど、他の国はどうなんだろう。内陸部で、山が少ない国とかは安全なのかな。うーん、やっぱり、世界が終わるにしては少し現実味がないかな。いや、それを言うならさっきの隕石のほうが現実味ないか。

 そんなことを考えてると、私のケータイに一通のメールが届いた。もし世界が終わるなら、これが最後の受信メールだな、とか考えてみたり。

バカバカしい。私はケータイを取り出すと、すぐにメールを確認した。

知らないメールアドレス。件名もなし。本文には、こう書かれてた。


『逃げて』


 …………?誰だろ?それに、なにこの文。いや、文というより一言だけ、か。

 逃げて……。それはやっぱり、世界が終わるから?じゃあこれはきっと、誰かのイタズラメールか。あんなバカみたいな噂、信じてるのかな。そう思いながら、私もついさっきまで、どうやって世界が終わるのかを真剣に考えていたことを思い出した。ちょっと恥ずかしい。

 でもこのメールは、私を心配して送られてきたんだ。たとえ、イタズラメールだとしても。このメールを送った人の気持ちはわからないけど、少なくとも本文に書かれている『逃げて』という一言は、私を心配してくれている。なんだか、それが少し嬉しくて。


――――――ありがと。


 そう、呟いてみた。その時だった。

 突然空が暗くなった。さっきまで晴天だったのに。

 不信に思い空を見上げてみると、そこには。

 大きな大きな、化け物が。

 人の形をしている。一応は。

 目と口は閉じられ、ゆったりと浮いている感じ。

 なに、これ。

 わけわかんないんだけど。

 まさか、ほんとに。

 …………世界は、終わるの?

 周りを確認すると、遠い空にも同じような化け物が、何匹も。

 そして、私と同じように唖然として空を見上げる人々。

 普通はこういう時、ケータイで写真撮ったりするのかな。

 でも、私の体は、まるで金縛りにでもあったように動かない。

 頭の中では、さっきのメールの言葉だけが響いていた。

 『逃げて』、と。

 宙に浮く化け物の目が、ゆっくりと開かれた。






 時刻は午後1時ちょうど。

 世界の終わりが、始まった。




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