第二話「黒いリンゴ、赤い俺、思春期。」
「.......。」
先ほど、目標を決め、歩き出してから早数時間。
予想以上に俺のハートは粘りを見せた!粘って、粘って、粘った。が。
歩けども歩けども人っ子一人おらず、いつまでも続く赤い景色。という最悪のコンボにより、俺はもう限界だった。
「腹..へったなぁ。」
俺の腹がひもじそうに鳴る。そりゃそうだ。この変なところに来てからというもの、何も口にしていない。食べ物は無かったという訳ではないが、食べて何かあったら怖いし、何もかも赤色の景色だと食欲も失せる。
だが、空腹はもう限界に近かった。
「うう~~~~.....腹減ったなぉ..このリンゴ..らしきものでも食べて見ようか?」
俺が手に持っているのは、唯一、この景色の中で赤色ではない、黒いリンゴ。
だが何だか食べたらマズイ感じがする。なぜか解らんが呪われてるって感じだし。
しかし、腹は減る。どうする。
勇気を出して、黒いリンゴを食べるのか、それとも、己の直感を信じ、口にせず先を急ぐのか。
もう一度リンゴを見てみる。相変わらずの禍々しい黒色。見た目的には即死系アイテムに見えなくも無い。
やはり、食べるのはやめておこう。まだ数時間しかたっていないのに、わざわざ危ない橋を渡る必要など無いだろう。
俺はリンゴを地面に置いて、また、赤い原っぱを歩き始める。
正直言って気が狂いそうだ....目もチカチカしてきたし、なんだか自分の肌も赤く染まってきたように見える。
「.....あ~~....此処ーー!ドコだよーーーー!!!」
本日一回目の叫び。やはり、俺の中の何かが壊れ始めたようだ。叫ばないとやってらんねぇ。
キシャアアアア!!!!
「ぬうぉぉぉおおおっ!!?」
俺が叫んだ矢先、いきなり怪物の叫びっぽい声と、震度4くらいの結構な地響きが。
これはイベント☆チャーンスッ♪って奴だな。お決まりのパターンならカワイイ女の子がいるんだよな。
怪物の声...襲われる女の子.....助けに入るかっこいい俺....。
すでにげんなりするような赤い景色は俺の眼にも、精神にも、もう入っていない。
「待っていろよ!カワイ子ちゃん!」
あるのは助けた女の子とのムフフな妄想だけだ。
俺は、妄想が現実になることを密かに祈りながら、叫び声が聞こえた方の真っ赤な森へ向かった。
主人公は結構むっつり。