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「鑑定しかできない無能」と追放された俺、実は壊れた才能を直せる唯一の神職でした〜捨てられ聖女と辺境村を修理していたら、勇者より先に国を救ってしまった〜  作者: 藤原朝臣御神常陸介釋寛浩


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222/235

第222話 中心は祠ではない

 中心は、どこか。


 それは、簡単な問いに見えた。


 封印施設の中心なら、黒石祠。


 誰でもそう答える。


 王都なら、即答するだろう。

 防衛局なら、机を叩いて言うかもしれない。

 地図職人班なら、地図の中央に黒石祠を置き、そこから円を描く。


 俺だって、最初はそう思っていた。


 黒石祠がある。

 水腐れの核が封じられている。

 命令核が癒着している。

 なら、中心は祠だ。


 そう考えるのが自然だった。


 だが、自然な考えほど危ないことがある。


 昨日、未操作指標を地図に置いた時、ゆるい半月形候補が見えた。


 閉じた円ではない。


 そして、その中心線は黒石祠から少しずれていた。


 旧水路浅層緩衝線の方へ。


 守りの中心と、逃がしの中心は違う。


 村長の言葉が、朝になっても残っていた。


 朝の中央井戸で、副記録係が読み上げた。


「朝。中央井戸、水温正常。水面揺れなし。濁りなし。匂いなし。ゆるい半月形候補第一整理後、継続異常なし。中心線偏位、解釈保留中」


 ニコルが頷いた。


「よいです」


 トマは井戸の水面を見ながら、少し困った顔をしていた。


 ダリオさんが豆を噛む。


「今日はどこがうるさい」


 トマが驚く。


「先に聞くんですか」


「どうせ何かうるさい」


「失礼ですね。今日は……頭です」


 ニコルが筆を構える。


「頭がうるさい」


「それ、記録しなくていいです」


 セリアが薬草茶を配りながら、少し笑った。


「でも分かります。中心が二つあるかもしれない、と思うと、頭の中で地図がぐるぐるします」


 ハンナが言った。


「薬草畑でも、水をやる中心と、根が楽になる場所って違いますよね」


 ミラが即座に記録板を持ち上げる。


「水やり中心と根の逃げ場は違う」


 セリアが頷いた。


「はい。根元ばかり水をやると、かえって腐ることがあります。少し離した土を湿らせる方が楽になる時があります」


 トマが顔を上げた。


「それ、今日の話に近そうですね」


 ダリオさんが言った。


「近い。だが、命令核を薬草だと思うな」


「分かってます。比喩は便利。住みつくと危ない」


「よし。覚えているな」


 井戸番が通信越しに言う。


『井戸でもそうだ。井戸の中心を穴だと思う奴は、桶ばかり見る。水面を見ろ』


 ニコルが書く。


『中心と思う場所だけを見ると、他が見えなくなる』


 村長が水面を見ながら、静かに言った。


「中心とは、手を置きたくなる場所じゃ。だから、間違えると危ない」


 広間へ戻ると、外縁地図が机いっぱいに広げられていた。


 昨日と同じ、小さな印だけの地図。


 強調枠なし。

 矢印なし。

 半月の線なし。

 中心線なし。


 見えたものを、すぐ描かない。


 今日はその我慢から始まった。


 ニコルが大紙に見出しを書く。


『中心候補・整理』


 その下に、赤字。


『中心を一つに決め急がない』


 トマがそれを見て、苦笑した。


「中心って、一つじゃないと気持ち悪いですね」


 ダリオさんが頷く。


「人は中心を一つにしたがる。地図も、会議も、責任もな」


「責任も?」


「責任の中心を一つにすると、そこを責めれば済む。楽だ。だが、だいたい間違える」


 ニコルが書く。


『中心を一つにすると、そこだけを責めたくなる』


 セリアが静かに言う。


「病もそうです。一つの原因にしたくなります。でも、土、水、風、根、虫、全部重なることがあります」


 ハンナが頷く。


「虫だけ悪者にすると、土を見なくなります」


 ミラが記録する。


『一つの原因にすると、他を見なくなる』


 ダリオさんは地図を指した。


「黒石祠は封印の中心だ。それは否定しない。水腐れの核を封じている場所で、命令核が癒着している場所だ。だが、外縁逃がし線の中心が黒石祠とは限らない」


 トマが地図を覗き込みたい顔をする。


 ニコルが言う。


「見すぎ注意」


「はい。目だけで行きます」


 トマは椅子から身を乗り出さず、目だけで地図を追った。


 旧水量板。

 旧水路浅層緩衝線。

 青根布箱。

 ハルマ古井戸。

 北沢石列。

 ミード薬草帯。

 森退避路。

 空白地帯の外縁。


 半月形候補。


 その内側に、黒石祠。


 けれど、半月の腹は祠ではなく、少し旧水路側へ寄っている。


 トマが小さく言った。


「祠が、真ん中じゃない」


 ニコルがすぐ書く。


『視覚上、祠は半月形候補の中心ではない可能性』


 ダリオさんが言う。


「まだ視覚上だ。測るな」


 地図職人班が通信越しに、少し苦しそうに答えた。


『測りたいです』


 広間に少し笑いが起きた。


 ダリオさんが豆を噛む。


「正直でよろしい。測るな」


『はい』


 トマが地図職人班に同情したような顔をした。


「分かります。線を引きたくなりますよね」


 地図職人班。


『はい。中心線、補助円、偏位距離、全部出したくなります』


 ニコルが赤字で書く。


『中心線、補助円、偏位距離:本日不可』


 ダリオさんが頷いた。


「見えたものを数字にすると、王都は使いたがる。今日は、ずれている可能性までだ」


 午前の王都協議が始まった。


 王都再審査室、外部監査部、防衛局、地図職人班、保存官。


 防衛局は、今日は最初から声が硬かった。


『防衛局です。封印施設である以上、主たる中心は黒石祠と考えるべきではありませんか。祠を中心に置かず、旧水路側へ照合中心を寄せることは、封印本体の監視を弱める恐れがあります』


 予想通りだった。


 王都は、中心を祠に戻したがる。


 黒石祠。

 封印本体。

 水腐れの核。


 そこを中心にすれば、分かりやすい。


 だが、分かりやすい道は、戻し線の匂いがする。


 ダリオさんが答える。


「封印本体の中心は黒石祠でいい。誰も否定していない」


 防衛局が少し黙る。


 ダリオさんは続けた。


「だが、命令核分離第一仮手順で見ているのは、封印本体を制御する中心ではない。命令核戻り癖を外した時、圧がどこへ逃げるかを見る中心だ。守りの中心と逃がしの中心は違う」


 ニコルが赤字で書く。


『守りの中心と逃がしの中心は違う』


 村長が静かに頷いた。


「祠を守るからこそ、祠だけ見るな」


 セリアが続ける。


「傷口ばかり見ると、熱の逃げ場を見落とします」


 ハンナが言う。


「傷口に布を押しつけすぎると、周りが腫れます」


 ミラが記録する。


『傷口ばかり見ると、熱の逃げ場を見落とす』


 防衛局が慎重に返す。


『しかし、命令核は黒石祠内の封印層に癒着しています。中心を旧水路側へ寄せると、命令核そのものの変化を見落とす恐れは』


 ダリオさんの声が低くなった。


「命令核そのものを見ようとしすぎるから、引きたくなる。祠を中心に置くと、どうしても“核をどうするか”へ行く。核を引く。癒着を破る。封じを割る。戻し線で押さえる。全部、祠中心の発想だ」


 ニコルが書く。


『祠中心で考えると、核を直接扱う発想へ寄る危険』


 トマが息を呑む。


「祠を見ると、核を触りたくなる……」


 ダリオさんが頷く。


「そうだ。命令核分離の第一段階で必要なのは、核を触ることではない。浮かせる前のゆるみを見ることだ。そのゆるみは、祠ではなく外縁に出る。特に旧水路浅層緩衝線で淡青白揺れ候補が出た」


 防衛局。


『つまり、祠は危険すぎるため中心にしない?』


「違う」


 ダリオさんは即座に否定した。


「危険だから見ない、ではない。祠は封印本体監視として見る。だが、逃がし反応の主照合中心にはしない。ここを分けろ」


 ニコルが大きく書いた。


『封印本体監視中心:黒石祠』

『逃がし反応主照合中心:旧水路側候補』


 トマが目を細める。


「中心が二種類ある……」


 ニコルがさらに書く。


『中心を分ける』


 外部監査部が言った。


『外部監査部、整理を支持。封印本体監視中心と、外縁逃がし反応主照合中心を分離して記録』


 防衛局はなおも納得しきれない様子だった。


『主照合中心を旧水路側に置く場合、王都側の監視基準との整合が難しくなります』


 村長が言った。


「王都の基準に村を曲げるな」


 声は静かだった。


 だが、重かった。


 村長は続けた。


「村が生きてきた跡を読む。王都の基準に合わせて地図を曲げれば、また戻し線になる」


 ニコルが赤字で書く。


『王都の基準に合わせて地図を曲げれば、戻し線になる』


 地図職人班が、少し焦った声で言った。


『地図職人班、注意します。地図補正、中心補正、王都標準座標への強制整合は行いません』


 ダリオさんが頷く。


「よい。標準化欲も危険語に入れろ」


 ニコルが書く。


『標準化欲:危険語候補』


 トマが苦笑する。


「今日も増えた」


 セリアが言う。


「綺麗に揃えたくなる気持ち、薬草棚でもあります」


 ハンナが頷く。


「種類ごとに並べ直したら、休ませていた鉢を動かしちゃうやつですね」


 ミラが記録する。


『並べ直したくなる気持ちも危険』


 防衛局は、少し息を整えたようだった。


『では、リベル村案では、命令核分離第一仮手順の照合中心をどこに置くのですか』


 ダリオさんは地図を見た。


 旧水路。


 中枢室。


 中央井戸。


 黒石祠。


 それぞれが、それぞれの役割を持っている。


「第一案として、照合中心を“旧水路浅層緩衝線—リベル村中枢室間”に置く」


 広間が静かになった。


 トマが目を開く。


「旧水路と、中枢室の間……?」


 ダリオさんが頷く。


「そうだ。旧水路だけでは現地に寄りすぎる。中枢室だけでは表示に寄りすぎる。二つの間に置く。旧水路は外縁逃がし反応の耳。中枢室は表示の目だ」


 ニコルが書く。


『照合中心案:旧水路浅層緩衝線—リベル村中枢室間』


 トマが少し困った顔をする。


「耳と目……じゃあ祠は?」


 ダリオさんは少し考えて言った。


「心臓に近い。だから、直接つつくな」


 セリアが小さく息を吸った。


 村長が頷く。


「心臓を守るために、耳と目で見る」


 ニコルが赤字で書く。


『心臓を守るために、耳と目で見る』


 防衛局が言う。


『王都基準では、主照合点を単一化する必要があります』


 ニコルがすぐ顔を上げた。


「単一化、危険語候補です」


 トマが小声で言う。


「統一欲の前段階っぽいですね」


 ダリオさんが頷く。


「入れろ」


 ニコルが書く。


『単一化欲:危険語候補』


 防衛局が少し慌てた。


『業務上の整理としてです』


「それが危ない」


 ダリオさんは言った。


「業務上の整理で、現場の役割差が消える。祠、旧水路、中枢室、中央井戸を同じ“監視点”としてまとめるな。それぞれ違う」


 外部監査部が支援する。


『外部監査部、リベル村整理を支持。主照合点単一化は現時点不可。複数役割中心の併記を認める』


 防衛局は、渋々という声で答えた。


『了解。暫定的に、封印本体監視中心と逃がし反応照合中心を分離記録します』


 トマが小さく言った。


「王都が折れた……」


 ニコルが見る。


「言い方」


「すみません。王都が、分けて記録してくれた」


 ダリオさんが豆を噛んだ。


「よし」


 午後、中心の整理表が作られた。


 ニコルが大紙に書く。


『中心整理・第一案』


 一、黒石祠は封印本体監視中心。

 二、黒石祠を命令核浮上確認の主照合中心にしない。

 三、祠中心で考えると、核直接操作、癒着破り、封じ破り、戻し線補強へ寄る危険。

 四、旧水路浅層緩衝線は外縁逃がし反応の主観測候補。

 五、リベル村中枢室は表示照合点。

 六、第一仮手順の照合中心案は“旧水路浅層緩衝線—リベル村中枢室間”。

 七、中央井戸は全体監視。始点ではない。

 八、半月形候補の中心線は黒石祠と不一致、旧水路側偏位。

 九、中心を単一化しない。

 十、守りの中心と逃がしの中心は違う。


 トマが六番をじっと見た。


「旧水路が、主観測候補……」


 ダリオさんがすぐ言う。


「偉くするな」


「はい。分かってます。でも、怖いです」


「怖いならいい」


 トマは少し笑った。


「最近、怖いならいいって言われること多いですね」


「怖くなくなったら、触る」


 セリアが頷く。


「薬草でも、大切な鉢を怖いと思えるうちは、まだ手が丁寧です」


 ハンナが言う。


「セリアさんは、大切すぎる鉢に話しかけすぎる時があります」


「今日はそこまで言わなくていいです」


 ミラが書いていた。


「ミラ」


「もう書きました」


 少しだけ広間が笑う。


 その笑いの後、中枢室に登録する時間が来た。


 俺は地図を見る。


 黒石祠。


 旧水路。


 中枢室。


 中央井戸。


 中心が一つではない。


 その事実が、頭の中を少しざわつかせる。


 でも、それでいい。


 ざわつくなら、手は止まる。


 俺は入力する。


『中心整理第一案。黒石祠は封印本体監視中心。命令核浮上確認の主照合中心ではない。旧水路浅層緩衝線は外縁逃がし反応の主観測候補。中枢室は表示照合点。第一仮手順の照合中心案は旧水路浅層緩衝線—リベル村中枢室間。中心単一化不可。守りの中心と逃がしの中心は違う。』


 中枢室の光が、いつもより長く揺れた。


 文字が、ゆっくり浮かぶ。


《中心整理:第一案》

《黒石祠:封印本体監視中心》

《命令核浮上確認主照合中心:黒石祠不適》

《祠中心思考:核直接操作誘引あり》

《旧水路浅層緩衝線:外縁逃がし反応主観測候補》

《リベル村中枢室:表示照合点》

《照合中心案:旧水路浅層緩衝線—リベル村中枢室間》

《中央井戸:全体監視》

《中心単一化:不可》

《主照合点分岐:リベル村中枢室/旧水路浅層緩衝線》


 俺は最後の一文を読み上げて、息を止めた。


 主照合点分岐。


 リベル村中枢室。

 旧水路浅層緩衝線。


 分岐。


 また、新しい言葉が来た。


 トマが、小さく言った。


「主照合点が……二つ?」


 ニコルが即座に赤字で書く。


『主照合点分岐:新語。飛びつかない』


 ダリオさんが低く言う。


「明日はそこだ。今日は解釈しない」


 防衛局が通信越しに言った。


『主照合点が二つになる場合、王都側手順書の構造が大きく変わります』


 ニコルが返す。


「変える必要があります。ですが、本日は解釈しません」


 外部監査部が支持する。


『本日の協議終了。主照合点分岐は次回整理』


 通信が切れた。


 広間に残ったのは、不安と、少しの納得だった。


 トマが旧水路の方角を見そうになって、途中で止めた。


 ダリオさんが言う。


「よし」


「見ませんでした」


「今日はそれでいい」


 セリアが薬草茶を置く。


「中心が増えると、不安になりますね」


 村長が静かに言った。


「不安でよい。一つにした安心の方が危ない」


 ニコルが赤字で書く。


『一つにした安心の方が危ない』


 夜、俺は個人記録を書いた。


『中心整理第一案。

王都防衛局は、封印施設である以上、中心は黒石祠と考えるべきと主張。リベル村整理:黒石祠は封印本体監視中心。ただし、命令核浮上確認の主照合中心ではない。

祠中心で考えると、核直接操作、癒着破り、封じ破り、戻し線補強へ寄る危険。命令核浮上確認で見るべきは、核そのものをどう動かすかではなく、浮かせる前のゆるみと外縁逃がし反応。

半月形候補の中心線は黒石祠と一致せず、旧水路浅層緩衝線側へ偏位。

第一案:旧水路浅層緩衝線は外縁逃がし反応の主観測候補。リベル村中枢室は表示照合点。照合中心案は“旧水路浅層緩衝線—リベル村中枢室間”。中央井戸は全体監視。

中心単一化不可。標準化欲、単一化欲を危険語候補に追加。

中枢室表示:中心整理第一案。黒石祠、封印本体監視中心。命令核浮上確認主照合中心、黒石祠不適。祠中心思考、核直接操作誘引あり。旧水路浅層緩衝線、外縁逃がし反応主観測候補。リベル村中枢室、表示照合点。照合中心案、旧水路浅層緩衝線—リベル村中枢室間。中心単一化不可。主照合点分岐、リベル村中枢室/旧水路浅層緩衝線。

主照合点分岐の解釈は次回へ持ち越し』


 最後に書く。


『中心は祠ではない。

正確には、祠だけではない。

黒石祠は封印本体の中心だ。

そこに水腐れの核が封じられている。

命令核も癒着している。

だから祠を見ないわけではない。

むしろ、祠は封印本体監視中心として見る。

でも、命令核浮上確認の主照合中心にすると危ない。

祠を中心にすると、人は核を見すぎる。

核を見すぎると、動かしたくなる。

癒着を破りたくなる。

封じを割りたくなる。

戻し線で押さえたくなる。

祠中心の思考は、核直接操作へ引っ張る。

命令核浮上確認で必要なのは、破ることではない。

浮かせる前のゆるみを見ることだ。

そして、そのゆるみらしきものは、旧水路浅層緩衝線で淡く出た。

外縁逃がし反応の中心は、祠ではなく旧水路側へ寄っている可能性がある。

守りの中心と、逃がしの中心は違う。

村長の言葉が、今日も重かった。

王都は中心を一つにしたがった。

防衛局は、王都側手順書では主照合点を単一化する必要があると言った。

でも、一つにした安心の方が危ない。

中心を一つにすると、そこだけを責める。

そこだけを見る。

そこだけを動かす。

だから分ける。

黒石祠は封印本体監視中心。

旧水路浅層緩衝線は外縁逃がし反応の主観測候補。

中枢室は表示照合点。

中央井戸は全体監視。

そして中枢室は最後に、新しい言葉を出した。

主照合点分岐。

リベル村中枢室/旧水路浅層緩衝線。

主照合点が二つになるかもしれない。

いや、二つという言い方もまだ危ない。

分岐。

耳と目。

現地と表示。

旧水路と中枢室。

明日は、この分岐を読む。

王都は混乱するだろう。

たぶん、一点に統一したがる。

でも、両耳で聞かなければ聞こえない音がある。

片目だけでは見えない揺れがある。

そんな話になる気がしている。』


 地上では、水車が回っている。


 黒石祠は、今日も封印の中心にある。


 だが、逃がしの中心はそこではないかもしれない。


 旧水路と中枢室。


 二つの主照合点候補が、静かに並んだ。


 次は、その分岐をどう扱うかだ。


 中心を一つにしたがる手を止めながら。




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