天音(あまね)という男。2
前書きかぁ、何を書こうかな?
俺が落ち着く為と頭の切り替えの間、天音は竪琴を奏でてくれていた。
「………さて、ルナリアナはまた別世界に飛ばされて、お前はアイツに惨敗。依頼はまた一からやり直しとなった訳だ。」「・・・スマネェ。ガルド伯の助力を得ておいてこのザマだ。」落ち込む俺の側に楽器を置いた天音が来て、慰めに頭を撫でる。「・・・気にするな。元々長期戦の依頼だ。Mr.Fも怒りはしない。寧ろ、お前の精神の頑強さを褒めていたよ。」
Mr.F・・・突然俺の住処のパソコンにハッキングして依頼のメールを残した謎の人物。正体も分からずハッキングを逆探知しても住処を探ることができなかった。ただ、その頃の俺は若く血の気も多い餓鬼で、一も二もなく受けてしまった。
【仕事の依頼を頼みたい。お前の能力と胆力を活かす内容となる話だ。目的と報酬は天音に託した。・・・なんとなく袖が触れ合ったときにでも聞いてみろ。F】
俺の性格を見透かす謎多きメールであったが、機械貴族の用心棒や殴り屋で暇を持て余していた俺には簡潔で、実に分かり易い非日常への片道切符であった。(……有無を言わせねぇタイミングと俺の意見をまるで見越したFって存在は何者なんだ?)天音に聞いても笑ってはぐらかし、果ては【寝坊助は女に好かれないわヨ♪】と口調まで変える茶化し加減である。
つまり、俺はこの依頼主を知っている・・・と、云う事だ。それはさておき、俺は心臓が止まった記憶を暫し思い出そうと天音に問うてみる。「・・・ルナリアナと接触できた筈のあの時の事を知っている、ないしは、推測でも良いから何か口にしてくれ。」その言葉はあの現場(惑星)に居ないはずの天音には不適切極まりないが、この男は【触れた人間の魂の辿った記憶】を覗ける能力を持つ。
これが異世界転生や転移なら異能や超能力と格好良く言葉を付けられるが、彼の力は後付けの仮能力であるらしく、生まれ持って身につけていたわけではないので頑なにその充てがった言葉を承服出来ないのだそうだ。
しかし、何故か天音は俺の事ならばそんな動作をせずとも分かるのだそうだ。アレか?奇人、変人の類いか?そんな失礼な事を考えた直後ものすごい殺気で睨まれた。「簡単、単純思考だから解るんだ。」ポケンとテーブルの上に置かれたナッツを投げ付けられてデコは痛むが、頭上に飛んだナッツを器用に口で受け止める。食べ物を粗末にしてはいけないと、声を大にして言いたい。…まぁ、十中八九、言い負かされてまた意識を刈り取られかねないので黙っておく………学習バンザイ♪
何か言い含む視線を向けたが、天音はギシギシと悲鳴を上げる老朽化バリバリの椅子に腰を下ろす。「・・・お前を一撃で殺せて不意をもつける男は限られている。……BLとかなら手籠めにされているぐらいの頻度でバッティングしているクセに、なんで顔突き合わせれば殺し合うんだ?」その呆れ笑いに俺は腕を組んでキッパリ言い放つ。「…知らん!」・・・何でかなど聞かれても困る。奴のマーダーライセンスは俺限定ではないから、天音の言葉に適した返答ができるはずもない。
Fの依頼はこうだ。【銀河中で〈魂隠し(たましいがくし)〉と言う犯罪紛いの行為が無差別で引き起こされている。お前達は銀河中に投げ出され間違った惑星に漂着した魂を有るべき場所に戻す役割だ。途中、主犯格が接触してくる。その時は力、お前が対応しろ。天音では力不足で捕縛は不可能と判断するためだ。逆に仕留めきれずに殺されても安心しろ…私が何とかしてやる。…尤も、激痛に呑まれたら私でも復活に時間を要する…痛みを痛み以上の何かに変換できる力の理解不能な人間離れした能力が今回の鍵となる。ではな。】
【ではな…って、おかしくない?!依頼だよな、コレ!?】と、天音と合流して愚痴れば天音は困った顔で笑っていた。まぁ、俺もそれほど怒ってはいない。と、言うか、なんなら既視感さえ過ぎる。俺は多分何処かでこの男と会っていて、それこそ年の離れたアニキと慕っていた感覚さえも過ぎるので、大好きなアニキからの無理難題を押し付けられた感が半端ない。
ーーー結論。天音という男はすべての事象を掌握している腹黒なんじゃないかと思う。俺の日常すらもMr.に報告している可能性が高く、その対価に女との出会いの場を褒美にもらっている気がした。……童貞か否か?最大の疑問はそこだけである。因みに俺は性欲よりも拳一択である。ーーー
夢の内容までもう少し。最初は男の方ですかね。




