本編1話 転生
本編1話
俺の名前は佐藤智和、ラノベとスマホゲームをこよなく愛す22歳の男子大学生だ、横断歩道で信号待ちしている時、スマホゲームでガチャを引いた、もちろん大爆死。
「ふっ…分かっていたさ…それでもやはりロマン…辞められないねぇ」
俺は少しショックを受けつつ、小さく呟いた。
その時、信号が青になった合図の音で俺はスマホを見ながら歩き出した。
(キィィィィィィィ!!!!!!)
ものすごいブレーキ音に思わず俺は顔をあげた、そこへトラックが突っ込んできた。
「やべ!?これは死ぬんじゃ…」
俺は咄嗟にそう思ったが、時すでに遅かった…
(ドォン!!!)
激しい衝突音と共に、俺は痛みを感じ始めた時、意識を失った。
しばらくすると俺は意識から目覚めて飛び起きた。
「ハッ!?」
そこはとても豪華な部屋でキングサイズのベッドの上だった。
「(ここは…病院…?それにしてはやけに豪華だな…)」
俺はそう思って周りを見渡した後、ふと自分の身体を見たがとてつもない違和感に襲われた。
「(ん…腕が細い…白くて…滑らかな肌…?それにこのドレスは…?)」
俺は自分のおかれている状況をうまく整理できずかなり困惑した、その時、ふと部屋の隅に置かれてる姿見が目に入った。
その姿見に映っていたのは青髪ロングの美少女だ、その外見はとても美しくてどこかの貴族のようだ。
「(なんで俺は女になってるんだ!?それになんだよ!このドレスは!まさかトラックに轢かれて転生してきたのか!?)」
俺は心の中で驚いている時、激しい頭痛がした。
「うっ!」
俺はあまりの痛みにその場に崩れ落ちた。
その瞬間、俺の頭の中に記憶が流れ込んできた。
その美しい容姿の身体の記憶だろうか、名前はエリーゼ、この国のトレンド王国の第二王女、しかしエリーゼはこの国で最も恐れられている悪名高い、悪役王女だった…気に入らない事があればすぐに投獄、ましてや処刑する事だって多々あった…そして1週間前にこの国の第一王女ライムに毒を盛って毒殺未遂事件で2週間の軟禁を言い渡されていて、今は1週間目だった…
「(まじかよ…これが身体の持ち主の記憶...女なのに加えてよりによって悪役令嬢とはな…ついてない…)」
俺は再度ベッドに戻って、今後の生活について考えた。
「(ウジウジ悩んでても仕方ないよな...それより悪役令嬢となった今…どうするべきか、大体このパターンだと数年後とかに処刑されるタイプだよな…つまり悪役から脱したほうが身のため…とりあえず悪役を辞めたほうがいいな…)」
俺は前世のラノベの小説設定などを思い出し思考を巡らせたままベッドに座り込んだ。
そこへ猫耳の子供が怯えながら入ってきた、見た目は10歳くらいだろうか。
「(奴隷…?いや侍女か…)」
俺はその少女が身につけているメイド服を見て思った。
「エリーゼ王女様…朝食のご準備が出来ました…ここに置いておきますね…」
侍女は震えながら俺の目の前にある机に朝食を置いた。
「ん、ありがとう」
俺は考える事に集中していたせいか、反射的にお礼を言った。
「ほげっ!?エ、エリーゼ王女様が…おおおお、お礼を!?」
侍女は何故かひどく驚いているが、俺は気にすることなく考え事を続けた。
「き、きっとエリーゼ王女様が病気に…!」
侍女が慌てて部屋を飛び出してどこかへ駆け出して行った。
俺は侍女の慌てぶりに気付かずに思考を続けていた。
一方、その頃侍女は転びながらも慌てて、玉座の間に向かっていた。
「おい!止まれ!」
騎士達はとてつもない勢いで走ってくる侍女に警戒して、道を塞いだ。
侍女は息を切らして呼吸が荒くなっている。
「何があった!」
騎士達は少し警戒を解くも、道を塞いだまま声を荒げて聞いた。
「エ、エリーゼ王女様が…!エリーゼ王女様がー!」
侍女は興奮しながら騎士達に叫んだ。
「何っ!?エリーゼ王女様に何かあったのか!?」
騎士達は悪名高い王女とは言えど、腐っても王女、王族の為、エリーゼの身に何かあったのでは無いかと心配し始めた。
侍女が深呼吸をして息を整えて言った。
「先程エリーゼ王女様が私にお礼を言ったんです…もしかしたら何か精神的な病にかかったのではないかと思いまして…」
侍女は今思えば、少し大袈裟だったかな?と思いながら静かに語りだした。
「なんだと!?今すぐ国王陛下と医者を呼べ!」
騎士は侍女より驚愕して、他の騎士達に命令を出した。
(ドン!!!!!)
騎士達は勢い良く玉座の間の扉を開けて駆け込んできた。
「なんじゃ!騒々しい!他国から攻められたのか!」
いらぬ心配をする国王は状況を把握するために騎士達に怒鳴りつけるように聞いた。
「はっ!大変なご無礼をどうかお許しください!しかし今はそれどころではないのです!エリーゼ王女殿下様が直属の侍女にお礼を言ったとの報告を受けております!」
騎士達はすぐに膝をついて、先程あった出来事を語りだした。
「なっ!?なにぃ!?」
国王は他国から攻められたのか?という衝撃よりもさらに強く衝撃を受けて思わず立ち上がって驚愕した。
「今すぐ医者を呼べ!エリーゼの様子を確認するぞ!」
国王はすぐに命令を出して、玉座の間から急いで出て、エリーゼの部屋へと向かった。
(バン!!!!ドカドカドカドカ!!!!)
国王と騎士達はエリーゼの部屋の扉を勢い良く開けて駆け込んできた。
「父上…どうしたの?」
俺は転生したエリーゼの身体に慣れてきたおかげか、自然とエリーゼの口調で尋ねた。
「どうした?じゃなかろう!お前は今まで礼などしてこなかったはずじゃ!それなのに侍女にお礼を言ったらしいな!ライムへの毒殺未遂事件で軟禁されたからって反省したフリか!何を企んでおる!」
父上はひどく焦りながら俺に怒鳴りつけてきた。
「……は?」
俺はまさかの理由で怒鳴られている事に呆れて思わず声を漏らしてしまった。
「は?ではないじゃろ!なんじゃ!精神的におかしくなったのか!?医者よ!今すぐ調べよ!」
父上は極度に焦りながら医師に俺の診察を命じた。
医師は震える手で診察を行って、しばらくして口を開く。
「特に身体の病気は無いようですが…」
医師は困惑しながらも診察を終えて結果を話す。
「やはり精神的な異常か…?次に何をしでかすか分かったもんじゃない!仕方あるまい…最終手段じゃ…騎士達よ…エリーゼを…地下牢に閉じ込めるのじゃ…」
父上は冷や汗をかきながら、少し寂しそうに発言した。
「はっ!エリーゼ王女様…王様の命令には逆らえません…大変申し訳無いのですが…よろしいでしょうか?」
騎士達は怯えて震えながら発言した。
俺は瞬時に状況を察して抵抗するのは得策では無いと思い、騎士達に大人しく従う事にした。
「ええ、地下牢で大人しく反省致しますわ…」
俺がそうそう言って、大人しく枷を付けられると、父上や騎士達が非常に驚いた顔で見てきた。
地下牢に到着した俺はその地下牢の状態を見てかなり驚いた。
「ここが…地下牢…?」
そこはとても綺麗で、牢獄内にはセミダブルのベッドが置いてあり、トイレとシャワーも完備、広さは8畳ほど、床は柔らかいマットレスという、とても地下牢とは思えない程の設備だった。
「大変申し訳無い…エリーゼ王女様をこんな貧相なところに…」
騎士達は震えながら涙ぐんで謝罪をしてきた。
「(いやどこが貧相やねーん!前世の俺が住んでたワンルームの部屋より圧倒的に快適じゃねーか!まるで少し高めのホテルやないかーい!)」
俺は前世の記憶を思い出しながら、心の中でツッコミを始めた。
そして俺は快適な牢獄に入れられてから、ベッドに座り込んで、考え込んだ。
「(それよりもとりあえず処刑を回避しなければならない…一体どうするか…思わずお礼を言っただけでも地下牢行き…だよな?地下牢だよなここは?まぁ、それよりも今後どうするかだな…とはいえ悪役を演じるのは危険すぎる…まずは大人しくここで過ごして開放されるまで待つしかないか…)」
俺は一通り考え終わると、ベッドに仰向けになって天井を眺めていた。
数時間後、騎士達が見回りついでに食事を置いて行った。
「エリーゼ王女様…こちらが今日のお食事です…」
騎士達は怯えながら俺に話しかける。
「あら、ありがとう!」
俺は満面の笑みでお礼を言った。
「は、はぁ…」
騎士達は困惑しながらも、地下牢を後にした。
俺は食事を済ませたあと、またベッドに戻って仰向けになって天井を眺め始めた。
しばらくしたあと、俺は牢獄内に設置してあるシャワーで身体を洗っていた。
その時、牢獄の前を騎士達が慌てた様子で行き来している。
「エリーゼ王女様がいないぞ!」「何っ!?どこかに抜け出したのか!?」「いいから探せ!」
騎士達は俺が脱獄した前提で騒ぎ始めていた。
その騒ぎを聞いた俺はシャワーを止めて、軽めに身体を拭いて小走りでシャワー室から出た。
「どうしたの?何かあったのかしら?」
俺は裸のまま出て行って、騎士達に声をかけた。
「エリーゼ王女様!中にいたんで…って!?お、おおお、王女様!!服を着てください!はしたないですよ!」
騎士達は慌てて後ろを向いて羞恥心から叫んだ。
「…?」
俺は一瞬なぜそんなに慌ててるのか分からなかったが、今は女に転生していたことにすぐに気づいた。
「あら…ごめんなさい、騒がしかったから、つい気になって」
俺は謝罪をしながら急いでドレスに身をつつんだ。
しばらくすると騎士が振り返って話しかけてきた。
「エリーゼ王女様、トイレやシャワーをお使いになる時は声をかけてください!あなたは一応まだ軟禁中なのですから!」
騎士は居なくなった時の騒動で興奮状態になっているのだろうか、いつもの怯える様子では無く、厳格な態度で注意してきた。
「今度から気をつけるわ、ご心配おかけして申し訳無いわ…」
俺は騒ぎを起こしたことに罪悪感から謝罪をした。
「は、はぁ…分かればいいんですよ…」
騎士は困惑しながらそう言って、地下牢から出ていった。
俺はしばらく髪の毛をセットして、再度ベッドに仰向けになって天井を眺め始めた。
数日後…
俺はまだ地下牢に閉じ込められたままだったが、前世の記憶からか、その地下牢を快適に過ごしている。
その時、階段からヒールの音が大きく鳴ったのを聞き、地下牢の扉が勢い良く開けられたのを見た。
(ガチャン!!!)
「エリーゼッ!!」
目に飛び込んできたのは青髪のショートボブの美しい見た目の女性だった、エリーゼの記憶によると実の姉にあたる第一王女ライムだ、ライムは悲鳴混じりの声で叫んでいた。
「お、お姉ちゃん…どうしたの?」
俺はとてつもない形相で叫んできたライムに驚いて声をかけた。
「どうしたの?じゃないわよ!なんで軟禁を命じたのに地下牢に入れられてるの!?」
ライムはとても心配そうな顔で俺を見てきて話しかけた。
「父上に命じられたの…それよりお姉ちゃん、その…今までごめんなさい…お姉ちゃんの評判を落としたり、怪我をさせたり、この前は毒を盛ったりして…許されるとは思っていないし、今更だけど…謝りたくて…」
俺はエリーゼの記憶を無意識的に思い出して、自然と涙目でライムに謝罪をしていた。
その様子を見たライムは心を痛めたのか、俺に話しかけてきた。
「いいのよ!許すわ!さぁ、ここから出ましょう!一緒にやり直そう?」
ライムは意外にもあっさりと謝罪を受け入れたどころか、一緒に更生を手伝う、と言ってきた。
そこに騎士がやってきて、ライムの姿を見て叫んだ。
「ライム王女様!危険です!ここから出ましょう!」
騎士は俺の閉じ込められている牢の鉄格子を掴んでいるライムを見て、避難させようとしていた。
「だめよ!エリーゼをここから出して!」
ライムは牢を掴んだまま離そうとしない。
「いけません!何があるか分からないんですよ!とにかくここから出ますよ!」
騎士はライムを牢から剥がそうとする。
「だめ!さっきエリーゼが謝罪をしてくれたわ!わたくしはエリーゼを許します!だからここから出しなさい!」
ライムは怒鳴りつけるように騎士に命じた。
「し、しかし…エリーゼ王女様は1週間前にあなたに毒を盛った重罪人ですよ!?普通なら軟禁じゃ済みません!それどころか処刑もあり得たはず!あなたは甘すぎます!」
騎士はライムの今までの甘さに耐えかねたのか、ライムに怒鳴るように説教をした。
「じゃあ、父上を呼びなさい!エリーゼ!さっきの謝罪を父上の前でもして!」
ライムは俺の方を見て強く叫んできた。
「まったく…分かりましたよ…」
騎士は呆れながらも渋々承諾したのか、地下牢から出て父上を呼びに行った。
「ひどい…父上がこんな貧相なところにエリーゼを閉じ込めるなんて…」
ライムはとても悲しそうな顔で俺の方を見つめて言ってきた。
「どこが貧相やねん!地下牢とか言うからてっきり劣悪な環境下で、ショーシャ〇クの空にみたいな懲罰房的なイメージかと思ったわ!」
俺は思わず豪華な地下牢を再度認識して、前世の記憶を思い出しながらツッコミを入れてしまった。
「し、しよー?ちょうだつ…?エ、エリーゼ…?何を言っているのか全く分からないのだけれど…」
ライムは聞き慣れない単語ばかりだったのか、困惑している。
「と、とにかく…私は無事だから…それと…本当にごめんなさい…」
俺は少し焦って誤魔化しつつ、再度ライムに謝罪をした。
「いいのよ…とにかく父上が来たら父上にも謝罪をするのよ?」
ライムは優しく笑顔で俺に話しかけてきた。
しばらくして、父上が地下牢に入ってきた。
「エリーゼをここから出して!」
ライムは早速父上に形相を変えて怒鳴りつけるように言った。
「し、しかしだな…毒殺しようとしたんだぞ…?それにこいつは今精神的におかしくなってる…」
父上は約1週間前の毒殺未遂事件を取り上げて、俺を牢獄から出すのをためらった。
「(まぁ...毒殺しようとしたのは元の身体のエリーゼだけどな…)」
俺は心の中でそう思いつつ、困り顔で無言のまま立ち尽くした。
「でもさっき謝罪をしてくれたわ!私はそれで許すの!だからエリーゼをここから出しなさい!」
ライムは父上に先程よりも容赦なく怒鳴りつけている。
「じゃ、じゃが…」
父上は中々決断できずに俺を牢獄から出すのをためらっていた。
「そう、なら私もここに入るわ!エリーゼを1人になんて可哀想よ!」
ライムはそう言うと、騎士から鍵を奪い取るようにして、牢獄を開け始めて、中に入ってきた。
「ライム王女様!危険です!おやめくだ…!」
騎士がそう言いかけた時、牢獄の扉は空いているのに見えない壁に阻まれた。
「結界…!?ライム王女様!すぐに解いてください!危険です!エリーゼ王女様に近づくのはおやめください!」
騎士は中に入っていったライムを引き止めるために叫び続けた。
「…うるさい」
ライムの目は暗く無表情になって小さく呟いて、追加で遮音結界を発動した。
「エリーゼ…もう大丈夫よ…もう1人じゃないから…」
ライムは俺を強く抱きしめて涙を浮かべている。
騎士達はすぐに数を増やして地下牢に駆けつけたが、不可侵結界と遮音結界に阻まれて牢獄内に入ることも声を届かせる事も出来なかった。
「お姉ちゃん…もう大丈夫だから…結界を解いて…」
俺はライムを落ち着かせるために、優しく抱きしめ返して頼み込んだ。
「だめよ、私がエリーゼを守ってあげるんだから…もう傷つけさせたりなんてしない…エリーゼをこんな所に閉じ込めるなんて…許せない…」
ライムは俺を強く抱きしめて頭を撫でながら言うが、その顔には確実に殺意が混じっていた。
「ふふっ…愛しているわ…エリーゼ…」
ライムは暗い表情を残したまま笑顔で語りかけて頭を撫でてくる。
その時、俺は意を決して、前世で見た、恋愛ラノベ小説の設定を思い出してライムに話しかける。
「(ええい!このままじゃどっちみち埒が明かん!一か八かライムに愛をぶつけるしかない!)」
「お姉ちゃん...そんなに俺の事が好きなのかい?俺もお姉ちゃんをとてもとても愛しているよ、お姉ちゃんのすべてを知りたい…俺がこの手でお姉ちゃんの全てを受け止めたい...」
俺はライムの顔を両手で優しく包み込んで話しかけた。
「はわわ…!?エ、エリーゼ…!?どうしたの!?」
ライムは俺の行動にひどく驚いているのか、顔を真っ赤にして困惑しながら言ってきた。
「ひどいな…俺はお姉ちゃんの事とても愛しているのに…それと今までの悪行を許してほしい…あれは…家族からの愛が欲しかった故の…その…下手な愛情表現だったんだ…でも今はこうしてお姉ちゃんに触れ合える…とても幸せだ…これからも家族として…俺を…愛してほしい…」
俺はエリーゼの記憶を辿り、過去の悪行についても謝罪しながらライムに話しかけた。
ライムは完全に愛の受容量が大幅に超えたのか、顔をさらに真っ赤にして、俺を突き放した。
「わ、わわわ、わかってるから!と、とにかく…父上にも謝罪しなさいよね…」
ライムはなぜかツンデレみたいな言い方をしてきて、結界を解いて牢獄から出ていく。
「ライム王女様!顔が赤い…やはりエリーゼ王女様が何かを…!」
騎士が俺を睨んだ瞬間、ライムは騎士に怒鳴りつけていた。
「何もされてないわよ!とにかく!エリーゼをここから出しなさい!父上!いいわね!?」
ライムは騎士に怒鳴ったあと、父上にも怒鳴り始めた。
「お、おう…分かった…」
父上はライムの気迫に押されたのか、渋々ながら俺の牢獄の扉の鍵を外していた。
ライムは顔を真っ赤にしながら、そそくさと地下牢から出て行った。
父上と騎士達は首を傾げながらも地下牢から出る。
俺は快適な地下牢から出るのを惜しんだが、出ないと何も始まらないので地下牢から出て自室へと戻って行く。




