(番外編)王女様と、寝坊と、目玉焼きと。
――異世界の朝は早い。とか言うけど。
「ん……あと五分だけ……」
俺の隣で、ティナ王女がぐっすり寝てる時点で、
この王国の朝はだいぶゆるい。
「ティナー。起きろー。朝だぞー」
「うるさい、平民彼氏……。あと七日寝かせて……」
「長っ!? 王国カレンダーどうなってんだよ!」
ちなみに、正式に恋人関係となってから数週間。
ティナは俺の部屋に頻繁に、お泊まりしてくるようになった。
もちろん、王族なのであくまで監視という建前らしい。どこのハーレム監視官だ。
俺は渋々ベッドから抜け出し、城の厨房で朝食作りに取りかかる。
「目玉焼き、焦がすなよー」
ティナの寝言が遠くから聞こえる。
……起きてんじゃん。
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「ふぅ、完成。目玉焼き、パン、ミルク、サラダ。うん、完璧」
そしてティナも、くしゅくしゅと髪をくしゃくしゃにしながら登場。
「ふぁぁ……お姫様の朝は、優雅に始まるものなのよ」
「寝ぐせ直してから言え。あと服も後ろ前逆だ」
「……見なかったことにしてちょうだい♡」
……この王女、最近ふにゃふにゃしてて本当に王女なのか心配になる。
「でも、こうして朝を迎えるのって、なんかいいわね」
「え、どういう意味?」
「んー。恋愛って、イベントとか、ドキドキとか、そういうのが多いけど」
「うん」
「何でもない日を一緒に過ごせるって、いちばん特別かもって思うの」
俺は、しばらく言葉に詰まった。
たぶん、そういう何気ない優しさが――俺が彼女を選んだ理由だったんだろう。
「俺も、そう思うよ。……この時間が、ずっと続けばいいな」
「じゃあ、毎朝作って♡」
「そこは、毎朝作ってあげるじゃないの!?」
「私、王女ですし♡」
そう言って彼女は笑った。
その笑顔が、世界で一番、俺にとっての朝の光だった。




