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三者面談(物理)! 涙と修羅場の対話会

 その朝。


 俺は、ティナに連れられて、王城のとある応接間に立っていた。


 


 「ここ……どこ?」


 


 「修羅場対話用・第三会議室よ」


 


 「なんでそんな部屋あるんだよ異世界ぃぃ!!」


 


 そして、扉が静かに開いた。


 


 「失礼する」


 


 最初に入ってきたのはユリシア。


 冷ややかな気配をまとってはいたが、その視線は真っ直ぐだった。


 


 「ふふっ、お呼ばれとは珍しいじゃん?」


 


 続いて現れたのはリリィ。


 だが、いつもの軽いノリはどこかに置いてきたようで、彼女も真剣な目をしていた。


 


 


 「今日、話し合いをしたいの。あなたたち全員と」


 


 ティナが、静かに言った。


 この場にいる4人。全員が、もう逃げられない場所に来ていた。


 


 


 ====


 


 「最初に、私から言わせて」


 


 ティナが口を開く。


 


 「カケルと恋人関係になって、私は正直すごく嬉しかった。でも、同時にずっと怖かったの」


 


 彼女は俺の方を見た。目が揺れていた。


 


 「あなたの心の一番に、私は本当にいるのかって。王女だから選ばれたんじゃないかって。ずっと、そう思ってたの」


 


 それを聞いて、リリィが小さく息をのんだ。


 


 「ティナ、あんた……」


 


 「でも、もうやめたいの。疑うのも、争うのも。だから今日は、はっきりさせておきたい」


 


 「……カケルの気持ちを、聞くってことか」


 


 ユリシアが腕を組みながら、ゆっくりと席に座った。


 


 「私も、逃げないよ。もう……ずっと、そういうのは、やめたいから」


 


 「わたしも。……こんな気持ちで、笑ってるの疲れちゃったし」


 


 リリィが目を伏せて、寂しそうに微笑んだ。


 


 


 ====


 


 そして――3人の視線が、俺に集まる。


 


 ……逃げられない。


 この瞬間を、ずっと先延ばしにしてきた。でも――もう、向き合うしかない。


 


 「正直、答えなんてまだ出せてない」


 


 俺は、言った。


 


 「ティナといると、心があったかくなる。お前が王女じゃなくても、たぶん惹かれてたと思う」


 


 彼女の目が、少し潤んだ。


 


 「ユリシアは……ずっと俺に、本気を見せてくれた。その想い、すごく……重くて、でもちゃんと嬉しかった」


 


 彼女は俯いたまま、かすかに笑っていた。


 


 「リリィ、お前の笑顔に何度も救われた。ふざけてるように見えて、一番誰かの気持ちに寄り添ってくれる。……そんなお前が、好きだよ」


 


 リリィの瞳がにじんで、小さく「ずるいよ」とつぶやいた。


 


 


 「――だからこそ、今すぐには誰かを選べない」


 


 重い沈黙が落ちた。


 


 「でも、絶対に中途半端にはしない。答えは……ちゃんと見つける。だから、もう少しだけ……待ってほしい」


 


 


 沈黙のあと。


 


 「……ふぅん。ま、即答されてたら、それはそれでムカついてたし?」


 


 リリィが、くしゃっと笑った。


 


 「まったく、罪深い男ね。……でも、今のあなたは、ちゃんと私の中で本物になった」


 


 ユリシアも、ゆっくり立ち上がった。


 


 「私も。すぐに決着がつくなんて、思ってなかった。むしろこれからが、勝負よね?」


 


 ティナも小さく微笑んで、俺の手を取った。


 


 「じゃあ、これからも堂々と――私の恋人でいなさい。どこに出しても恥ずかしくない鈍感男として♡」


 


 「今ちょっと毒混じってなかった!?!?」


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