告白は突然に!? 推し2名の反撃ターン
ティナと恋人関係になってから数日。
まったりとした時間が流れる――はずだった。
「カケル。今日は、私とデートの約束してたわよね?」
「えっ、いや、今日って確かティナと――」
「無効。なぜなら私の方が早く紙に書いて申請していたから」
手には、王城のデート予約申請書(※謎制度)
「いつの間にそんなもん作ったの!?」
「異世界外交には、事務処理が肝要だからな」
そう言って堂々と俺の腕を取るのは――ユリシア。
氷の王女と恐れられた彼女は、いまや、本気の恋する乙女へと進化中である。
====
【ユリシア編:氷の下の炎】
この日のデートプランは完璧だった。
静かな庭園。控えめなカフェ。人目を避けた川辺のベンチ。
「……私は不器用だから。言葉より、空気で感じてほしい」
そう言って見せた横顔には、いつもの気高さと違う、かすかな不安がにじんでいた。
「カケル。私、今からとても……卑怯なことを言う」
「え?」
「好きよ。あなたが好き。ティナに負けたくないの……それだけじゃだめ?」
その目は真剣だった。
そして俺は――なにも、言えなかった。
====
【リリィ編:笑顔の裏の涙】
その翌日。俺はティナに連れられて学園へ。
そこで待ち伏せしていたのは、当然のごとく――リリィ。
「ねぇ、カケル。今から少し、ふたりで逃げない?」
「おいこら、授業中だぞ!」
「恋の逃避行ってやつだよぉ~♡」
わけのわからないテンションで始まった、リリィのフリーダムデート。
でもその帰り道。
「ねぇ、カケル。……わたし、ほんとはすっごく悔しかったんだよ」
「え……」
「だってさ、同じ異世界人なのに、ティナには真っすぐ想いを向けられて……」
初めて見た。リリィの笑っていない顔。
「わたしは? わたしには、いつ向き合ってくれるの?」
その問いは、冗談じゃなかった。
そして俺の心を――確かに揺らした。
====
夜。自室のベッドで天井を見上げる。
「……どうすりゃいいんだよ……」
ティナは、誰よりも正面から俺を見てくれた。
ユリシアは、凍った心を俺にだけ開こうとしてくれた。
リリィは、笑顔の裏でずっと、俺のことを見ていた。
誰も適当になんか思ってない。
なのに、俺はまだ――答えを出せていない。
「情けねぇな……俺」
そのとき。
ドアが、ノックされた。
「……カケル? 起きてる?」
ティナの声だった。




