恋人試練・最終日。そして王家の判断は――
恋人試練週間――
通称「帰れま10(テン)」もついに最終日。
最終試練の名は――
「公開スピーチ試練」
「おまえはティナの恋人として、何を誓い、どう生きるか」
王城の中庭。
高台には王族・貴族・そして一部の観客席まで設けられていた。
おまけに、なぜかユリシアとリリィも正装で並んでいる。
「なんでおまえらいるの!?」
「王女の恋愛は、国家の未来に関わる問題ですから、国際的にも観察の必要がありまして」
「リリィはまだ諦めてないから☆」
にこやかに爆弾を投げてくる二人にツッコむ暇もなく、壇上へ押し出される俺。
正直、逃げたかった。胃がキリキリする。
でも――
ティナが、あの中庭の端で、まっすぐ俺を見ている。
その視線だけで、背中を押された。
俺は深呼吸して、言葉を絞り出した。
「俺は……普通の一般人です。魔力もないし、称号もない。ただの異世界転移者です」
ざわめきが広がる。でも構わない。
「でも――俺は、ティナの隣にいたいと思った。何があっても、一緒に笑って、喧嘩して、支え合って生きていきたいって思ったんです」
彼女の目が少しだけ見開かれる。
「ティナのことが、好きです。本気で大切にしたい。だから、俺はこの先も、ずっと彼女の恋人でいたい――いや、彼女の人生の隣にいたい」
風が、静かに吹いた。
沈黙のあと、最初に拍手をしたのは、女王だった。
「合格よ」
柔らかな笑顔を浮かべて、女王がそう言った。
「少なくとも、私が知っているどの貴族よりも、あなたの言葉は――まっすぐだったわ」
「……ありがとうございます」
その場にいたすべての人間の中で、一番ホッとしてたのは、たぶん俺だ。
だが。
その平和な空気をぶち壊したのは――
「でも! このまま引き下がるわけにはいかないのよね♡」
壇上に飛び乗ったのは、ユリシア。
「ティナが選ばれたのは、王家の名があるからじゃない? じゃあ私は、恋心で勝負するわ!」
「え? それルール違反じゃ――」
「そしてわたしは、異世界女子代表として異議申し立てします!」
続いてリリィも飛び入り乱入。
「わ、私のこと、まだ友達枠で済ませるつもり!? いずれ後悔するんだから!」
「なんなんだよこの三つ巴はあああ!!」
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こうして――
王族認定の恋人になった俺とティナ。
だが、恋愛戦争はむしろここからが本番だった。
「覚悟してね、カケル。私の恋人になるってことは、これからもずっと――命を狙われる覚悟が必要よ♡」
「軽く言うなあああ!!」