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君に伝えたい本当の想い

 王都の空は、久々に晴れ渡っていた。

 すべての分岐が収束し、崩壊の危機を乗り越えた世界は、まるで何事もなかったかのように平和を取り戻している。


 


 けれど、俺の胸の中はまだ、落ち着いていなかった。


 


 それは――

 ようやく選んだ彼女に、本当の想いを伝えきれていないからだ。


 


 ティナ・ルーシェリア。


 口は悪くて素直じゃない、超絶プライド高きツンデレお姫様。

 でも、誰よりも誰かを想える強さと、優しさを持っている。


 


 俺は、そんな彼女に惹かれた。


 


 「……まさか、この私を選ぶなんてね。どうかしてるわよ、まったく」


 


 昼下がりの中庭で、彼女は日陰に座りながらそう言った。

 見下すようなその表情は、でもどこか照れていて、目元だけが妙に優しかった。


 


 「まあ、でも……その、なんというか」


 


 言葉に詰まるティナを、じっと見つめる。


 


 「嬉しくないわけじゃないって、言っておいてあげるわ」


 


 それだけ言うと、彼女はそっぽを向いた。


 


 「うん。それ、最高の返事だよ」


 


 俺は笑った。肩の力が少し抜けた。


 


 けれど、その後すぐ、ティナは意外な提案をしてきた。


 


 「じゃあ……散歩、でも行く?」


 


 「え?」


 


 「その……あなたと二人きりで、少しだけ話したいって意味よ。勘違いしないでよね!」


 


 ツンデレ全開だったが、俺は即座に頷いた。


 


 ====


 


 王都の裏庭は、一般には解放されていない静かなエリアだ。


 魔法植物が咲き乱れる花壇と、小さな人工のせせらぎがある穏やかな場所。


 


 ティナはそこで、ぽつりとつぶやいた。


 


 「あなたのこと、最初は虫ケラ以下だと思ってたわ」


 


 「うん、知ってる」


 


 「でも……あなたが他の誰かを選ぶって想像しただけで、なんか胸がざわざわして」


 


 「うん」


 


 「それで気づいたの。あなたが、誰かのものになるのは、嫌だったんだって」


 


 俺は、その言葉を一語一句、心に刻むように聞いていた。


 


 「ティナ」


 


 「……なに?」


 


 「俺、お前のことが……好きだ。ちゃんと伝えておきたかった。本気で、お前と生きていきたいって」


 


 その瞬間、ティナの顔が一気に真っ赤になった。


 


 「……ッ、いまさらそんなストレートに言う!? なによ、バカじゃないの!?」


 


 バシッと肩を叩かれた。


 でも、その手は、すぐに俺の手をそっと握った。


 


 「でも……私も。あなたと一緒に、歩いていきたいって、思ってるわよ」


 


 ツンツンしながら、デレはどこまでも甘かった。


 


 ====


 


 その夜、王城のパーティホールでは、カケルとティナの正式な交際発表がなされた。


 ユリシアとリリィはやや複雑な表情を見せながらも、二人を祝福してくれた。


 


 ユリシア:「……ふーん。よかったわね。これからが本番よ」


 リリィ:「私は、まだ諦めてませんけどね。ふふふ」


 


 その笑顔に、俺は小さく頭を下げるしかなかった。


 


 けれど、ティナは隣で堂々と腕を組み、


 


 「この私に喧嘩を売るなんて、百年早いわよ」


 


 と、どこまでも強気に、けれど少しだけ嬉しそうに笑っていた。


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