君に伝えたい本当の想い
王都の空は、久々に晴れ渡っていた。
すべての分岐が収束し、崩壊の危機を乗り越えた世界は、まるで何事もなかったかのように平和を取り戻している。
けれど、俺の胸の中はまだ、落ち着いていなかった。
それは――
ようやく選んだ彼女に、本当の想いを伝えきれていないからだ。
ティナ・ルーシェリア。
口は悪くて素直じゃない、超絶プライド高きツンデレお姫様。
でも、誰よりも誰かを想える強さと、優しさを持っている。
俺は、そんな彼女に惹かれた。
「……まさか、この私を選ぶなんてね。どうかしてるわよ、まったく」
昼下がりの中庭で、彼女は日陰に座りながらそう言った。
見下すようなその表情は、でもどこか照れていて、目元だけが妙に優しかった。
「まあ、でも……その、なんというか」
言葉に詰まるティナを、じっと見つめる。
「嬉しくないわけじゃないって、言っておいてあげるわ」
それだけ言うと、彼女はそっぽを向いた。
「うん。それ、最高の返事だよ」
俺は笑った。肩の力が少し抜けた。
けれど、その後すぐ、ティナは意外な提案をしてきた。
「じゃあ……散歩、でも行く?」
「え?」
「その……あなたと二人きりで、少しだけ話したいって意味よ。勘違いしないでよね!」
ツンデレ全開だったが、俺は即座に頷いた。
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王都の裏庭は、一般には解放されていない静かなエリアだ。
魔法植物が咲き乱れる花壇と、小さな人工のせせらぎがある穏やかな場所。
ティナはそこで、ぽつりとつぶやいた。
「あなたのこと、最初は虫ケラ以下だと思ってたわ」
「うん、知ってる」
「でも……あなたが他の誰かを選ぶって想像しただけで、なんか胸がざわざわして」
「うん」
「それで気づいたの。あなたが、誰かのものになるのは、嫌だったんだって」
俺は、その言葉を一語一句、心に刻むように聞いていた。
「ティナ」
「……なに?」
「俺、お前のことが……好きだ。ちゃんと伝えておきたかった。本気で、お前と生きていきたいって」
その瞬間、ティナの顔が一気に真っ赤になった。
「……ッ、いまさらそんなストレートに言う!? なによ、バカじゃないの!?」
バシッと肩を叩かれた。
でも、その手は、すぐに俺の手をそっと握った。
「でも……私も。あなたと一緒に、歩いていきたいって、思ってるわよ」
ツンツンしながら、デレはどこまでも甘かった。
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その夜、王城のパーティホールでは、カケルとティナの正式な交際発表がなされた。
ユリシアとリリィはやや複雑な表情を見せながらも、二人を祝福してくれた。
ユリシア:「……ふーん。よかったわね。これからが本番よ」
リリィ:「私は、まだ諦めてませんけどね。ふふふ」
その笑顔に、俺は小さく頭を下げるしかなかった。
けれど、ティナは隣で堂々と腕を組み、
「この私に喧嘩を売るなんて、百年早いわよ」
と、どこまでも強気に、けれど少しだけ嬉しそうに笑っていた。