One of the Last
アランの才能は「ポルターガイスト」。触れたものを複数自在に操ることが可能な能力。
本人曰く、操るものが大きくなるほど一度に操ることが可能な数が限られてくるらしい。そのためかあいつが操るものはどれも野球ボール並みの大きさだ。
(それにしても手数が多すぎんだよな、このままじゃジリ貧でやられるし......なら!)
オレは猛攻を掻い潜りアランとの距離を詰める。
確かにアランの才能はなかなかに厄介だ。ただ、それはアランと3m以上離れているときのみ。手数が多いからこそ、操ることに意識を取られて咄嗟の近接にはめっぽう弱いというのを俺は最近理解した。
「とった!」
と、アランが笑みを浮かべる。
「かかったな!」
アランが右手を大きく開き、操っていた物が吸い付くようにしてその手に収まり、そして...
勢いそのままにオレの眼前にパンチとして繰り出された。
だが残念。オレの反射神経を舐めてもらっては困る。オレは瞬時に膝滑りでアランの攻撃を避け、背後を取り、そのまま馬乗りになった。
「はぁい、オレの勝ちぃ♪」
「だぁー、クソ!また負けた!」
拍手喝采。どうだ褒め称えろ。それはそれとしてさっき煽ったやつは一人ずつ殴る。
「終わったぁ?今日もルミエルが勝った?」
聞き馴染みのありすぎる声Part2。でもこっちの声はいつまでも聴いていt、おっと危ない。アドレナリンの出過ぎでつい口にするところだった。いま話しかけてきた長髪の女性の名前はナーシィ。アランと同様、同い年で幼馴染である。
「次こそは俺が勝つ。」
アランが息巻く。お前それ一年前から言ってるぞ。
「ルミエルはやっぱり強いね。」
ナーシィがニコッと笑う。ぐぅっ、かわい...
オレがデレていると、周りの奴らは揶揄する。
おい外野ども、そんな目で見るなぶん殴るぞ。
「てかルミエルってすげぇよな。」
アランが起き上がり俺を小突きながら言う。
「才能を持たずにあんな強ぇんだから。」
そう。オレには才能がない。才能は遅くても七歳までには発現するらしいが、それらしいものは一向に起きなかった。ま、だからこそ身体を鍛えてアランと戦りあえるようにしたのだが。
と、オレはある事を思い出す。
「あれ?今何時だ?」
午後7時。.....あ。
「やっべぇぇこんな時間!?ごめんもう帰るわ!」
「また明日ね!」
「じゃあな。」
オレはアランとナーシィに別れを告げ、家に帰った。
やぁっと家に着いた...30分も掛かるってどんだけ遠いんだよ家は!
「ただいま!ごめん遅くなっ...て。」
扉を開けると、そこには、
血だらけで倒れている母さんがいた。
「ルミエル...」
母さんのか細い声だけが家中に響く。
状況が整理できない。荒らされた家、倒れる母.....
ただ立ち尽くすことしかできないオレに、母さんは伏しながらも話を続ける。
「ルミエル...行きなさい.....アイツは....街の人たちも...襲うつもりよ....私はもう助からない...あなたは、助けられる命を助けなさい。」
その姿を見て、その言葉を見て、体の硬直が溶けた。オレに何ができるかはわからない。でも今は、動くしかない、行くしかない。
オレは気持ちを殺し、母さんを置いて家を出た。
「頑張りなさい。」
母さんの最期の声がオレの耳に残り続けていた。
街内。昼間の賑やかな景色から一変し、一面火に覆われていた。くそっ、おっちゃんや、昼間に会った人達の腹が抉られ、冷たくなってる.....と、遠くから男の笑い声が聞こえてきた。
「なんだぁ?強ぇ奴がいるって聞いたんだが、雑魚ばっかじゃねぇか!」
男は興奮気味に独り言を叫び、自分が右手に持っているモノに目を向ける。
「一番強かったのでお前レベルだもんなぁ!」
アランだ。頭からは血が出て、そして腹は皆と同様に荒々しく抉り取られている。
「アラン...」
オレはアランの姿に言葉を失う。ああ、だめだオレは....何もできない。母を見捨て、今、親友の死をただ眺めているだけ....
アランはオレの様子に気付いたのか、声を荒げる。
「ルミエルぅ!あとは頼んだぞ。」
そして爆風と共に跡形もなく死んだ。
「あ...」
無意識にオレはアランだったモノに駆け寄る。が、何かに足を引っ掛けた。
それは、ナーシィだったもの。それを見た時、オレの中で何かが切れた。
「お前、一番強いんだって?腕試しだ。」
男が右手をルミエルの方に向ける。が、
ルミエルはそれよりも早く男の前まで駆け、顔面を殴った。男は情けなく吹っ飛び、壁に叩きつけられた。普通なら確実に全身の骨が何本か折れてるところだろう。が、男は気味悪く笑みを浮かべ、ぬるっと立ち上がる。
「ははっ。確かに一番強ぇわ。」
そして右手を勢いよく振り上げた、瞬間。
ルミエルの視界が半分になった。左目に斬撃が当たったのだ。爆風の衝撃で地面に伏したルミエルなど御構い無しに男が続ける。
「でも、そんなんじゃ俺に勝てねぇよ」
そしてルミエルの首を掴み、自分の中の疑問を問いかける。
「なぁ、ルミエルって言ったっけ?お前はなんで強さを求めた?みんなを守るためか?それとも自身の証明のためか?この街の奴らは全員殺した。結局お前は何にもできずに俺に」
「黙れよ。お前は絶対に許さない。」
オレは残った右目で男を睨む。
男は少し考え、不敵な笑みを浮かべ手を離し、
「やってみろ。これで生きてりゃ殺されてやる。」
そう言い放つと同時に、オレの意識は途切れた。




