強敵と書いて友と読む
第4戦が全て終了し、二次試験会場に着いたオレとネスは、受験者の数が最初よりも少なくなっていることに気づいた。
「あれ?なんか少なくね?人数減った?」
「三敗した奴らがいるんだろ。その時点で不合格だからな。」
「あぁそうだったそうだった、てか...」
「「俺らもやばいけど(現在二敗)」」
まずいよなぁ....次が最終戦、ここで勝たなきゃ終わる...ここまで来たんだ、絶対勝つ!
「えー、皆さん、ただいまから最終戦を始めさせていただきます。」
毎度の如く、金髪糸目がアナウンスする。ていうか今のところ金髪糸目と白衣の少女しか見てないんだけど、え?もしかしてメシアって二人だけの超少数精鋭の軍隊なの?
「第二十七試合リアム対ユイマー
第二十八試合アスカ対グラス
第二十九試合フッシー対メランジェ
第三十試合ネス対ルミエル」
「え?」
「あ。」
しまった、完全に忘れていた。オレとネスはチームというわけではない、ただ二次試験を通して仲が良くなっただけ。試合の組み合わせはランダムのため当然オレとネスが戦う可能性も出てくるわけで....
30秒の沈黙。
こういう気まずい時の時間の流れって1フレーム=1秒かと錯覚してしまうぐらい長いよな...いや、今はそんなこと考えてる場合じゃねぇ。
「ネス...」
オレが声を掛けようとするも、ネスはオレを置いて先に試合会場へと向かう。
「行くぞ。続きはリングの上だ。」
試合会場。
未だにオレはどうすべきかわからなかった。どうする...2人共既に2敗してんだ。この試合でどっちかは落ちる...いやいや、迷ってる場合じゃねぇだろ!俺は、俺は....!
「ルミエル。」
「俺とお前は友達だ、それはもう変わらない。でも、お前に叶えたい夢があるように、俺にも叶えたい夢があるんだ。ここで負けるわけにはいかない。全力で来い。」
それはネスの本音。ただの慰めでも、気遣いなどではない。だが今のオレには、それ以上に効果のある言葉だった。
「そうだな....悪い、変に考えすぎてたよ。勝つよ、オレ。」
この瞬間、オレの中から迷いが消えた。
「それでは試合開始!」
ルミエルは毎度の如く相手の懐へ秒速で突進、ネスは立ち止まったまま待ってましたと言わんばかりに右手で手銃のポーズをとる。
ルミエルはその異常性をいち早く見抜き、突進しながら両腕で防御の態勢をとり、血流加速で腕を硬化させた。が、早計であった。
「ばーん」
それはメランジェの突きよりも速く、ルミエルの両腕を貫いた。
「痛ぅ...!?」
硬化させた腕を貫かれた驚きと痛みでルミエルは一瞬怯む。その一瞬の隙をネスは見逃さなかった。
「神出鬼没の潮」
ネスの周りに液体が出現する。あれは....水?
オレがその液体を水と認識するよりも速く、
「押し寄せる波」
ネスの周囲を浮かんでいた水が膨張し、溢れる。会場中に水が溜まる。その勢いは洪水に匹敵するほどに....駄目だ、押し流されるっ....
「収束する海」
この瞬間、オレは会場中に充満していた水がオレの周りに収束してきていることに気づく。......が、遅かった。
「がっ...」
収束し続けた水は球状となり、あっという間にオレは水に拘束された。
「俺の勝ちだ。」
・水縄銃
水を指の先に集中させ、一気に体外に放出することで
水のビームを一直線に放つ技。その速度は音速を超える。
・神出鬼没の潮
水を体外に出現させる技。この技自体に攻撃力はないが、その他の技を出すためには必須の技。
・押し寄せる波
体外に出現させた水を膨張させ、溢れさせることで洪水並みの水圧と水量を発生させる技。
・収束する海
生み出した水を、球状に収束させる事で標的を拘束し、窒息させる技。