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第四章 齟齬(51) 新たな宗教の栄え(3)

×  ×  ×  ×


 「一度ポルペウスに斥候隊を送るか。」

 ポルペウス奥の院の噂はハーディの元へも当然報告として入っていた。

 「誰をやります。」

 ミズールの建設から帰ってきていたナザルが訊ねる。

 「誰が適任だと思う」

 今やリュビーが居ない時の相談相手となったナザルにハーディが問う。

 「キーンが適任かと。」

 「良し、キーンを呼べ。」

 ハーディは従者に声を掛けた。

 「その間に報告を一つとお願いを一つ、宜しいですか。」

 ナザルの声にハーディが頷く。

 「まずミズール。

 砦の構築はほぼ終わり、今はグロックが村の整備を進めています。」

 「大きくなったか。」

 「あの地には元々石造りの古い遺跡がありました。それを整備し砦となし、その周りに広く環濠を掘っています。

 兵はグロックの三百人、人民は七百を超えました。そこを護る為にイーラスが千の兵士を連れフレンツ川の西岸に展開しています。」

 「ミズールを核の一つにしたい。

 頼むぞ、ナザル。」

 「そこで先ほど言ったお願いです。」

 何だ。とハーディが先を促す。

 「私が本格的にミズールに座るとあなたの相談相手が居なくなる。」

 それにハーディが、確かに。と頷く。

 「ロブロをログヌスに呼び戻してください。

 あいつは戦いには不向き、ですが王佐の才はあると思います。あの男をあなたの側に置けば、私もリュビーも安心して動けると思います。」

 ハーディは暫く考え、解った。と答えた。


 ロブロの帰着と入れ替えにナザルはミズールに発った。

 ロブロは預かってきたリュビーの書簡をハーディに手渡した。

 「どうだザクセン辺りは。」

 ハーディはその書簡を紐解く前にまずロブロに聞いた。

 「私の力が足りぬばかりに荒れに荒れています。」

 そうか。と言い、ハーディは(おもむろ)にリュビーの書簡を開いた。

 「ですが、白の司祭の一派を名乗る者達がそこに現れ、徐々にではありますが落ち着こうとしています。」

 「白の司祭か・・」

 ハーディは困り顔を見せながらリュビーの書簡を読んだ。

 「お前はこの任にあらず。」

 書簡を読み終えたハーディがロブロの眼を見た。

 「ナザルが言い、リュビーもこの書簡に書いている。」

 ロブロが不安げな貌を見せる。

 「二人の意見は同じ、ロブロお前はここに残れ。

 ここに残って俺と一緒に建設の為の政略を練る。戦いはナザルとリュビーに任せてな。」

 「それは・・」

 「お前を俺の側近に取り立てる。

 学べ、そして励めよ。」

 ロブロの顔に喜色が走った。


×  ×  ×  ×


 「お手伝いに参りました。」

 大道の建設を進めるリュビーの元に多くの人夫を従えた大男が現れた。

 「リューク様の命によりこの建設のお手伝いに参りました。」

 男はもう一度同じ事を言った。

 「リューク・・・」

 リュビーは怪訝な顔をした。

 「私達を束ねる白の司祭リューク様。」

 「ああ、あれか・・平等とやらの宗教の・・・」

 そうです。と大男は頷いた。

 男の名はグラウス、その男と一緒に来た人夫達はよく働いた。その働きもあって徐々に大道は延びていった。が、それによって工事の範囲が広がり、それを護る軍は間延びし、兵力は薄くなっていった。その間隙を食と金を求めるならず者達に襲われる。

 くそっ・・リュビーが机を叩く。兵の数が絶対的に足りない。いや、どれだけの兵でも無理だろう。奴等は神出鬼没、根絶やしには出来ない。それを叩き潰すには兵の数もだが、隊を無数に分けて捜索し、一つ一つを叩くしかない。が、それには危険も伴う。もし相手の一団が大きければ・・・それに工事自体を護る兵を裂くことにもなる。

 どうすれば・・頭を悩ますリュビーの前にグラウスが立っていた。

 「私の仲間を紹介します。」

 彼は屈強そうな男を連れていた

 「ダルスと言い、兵を使います。」

 「兵・・・」

 「リューク様の兵です。

 その兵達は死をも恐れずに闘います。

 ならず者狩りには打って付けかと。」

 「見返りは。」

 「この地まで我等が宗教、アイクアリー教の拡がりを認めて頂ければ・・・」

 手詰まりに陥っていたリュビーは渋々その提案に頷いた。


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