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第四章 齟齬(39) 新しいルミアス(8)

×  ×  ×  ×


 歩を進めるフェイの前にアラストールが立ち、両脇をキンマモンとヒトコトヌシが固める。その目の先、一つの女神像が見える。美しい異国情緒の着物を纏い毅然と立っている。

 「私の身体です。」

 貝の中から声。

 「あの身体と魂が一つになるとき、イシューの心も護れます。」

 フェイが貝を見る。

 「ですがその前に一つ障害が。」

 言葉も終わらぬうちに女神の彫像の前に魔物の蔭が立つ。

 「エリゴス・・」

 真っ黒の馬に跨がった黒鎧の戦士。手には大きな双刃の戦斧を持ち蒼く光る目でフェイ達を睨んでいる。

 「アラストールと力は互角。後は貴女の力に懸かっています。」

 その周りからはイーブルが次々と現れてくる。それに対するのはキンマモンとヒトコトヌシ。彼等の力はイーブルを凌駕し現れる者達を次々と倒していく。だがイーブルの出現は止まない。

 「元はエリゴスね。」

 フェイがアポロンの弓を引き絞る。が、放たれた金の矢はエリゴスの斧に弾かれる。

 「貝を。」

 フェイが声のする貝を見る。

 「この貝を私の彫像に・・身体と魂が一つになる。」

 「どう言うこと・・・」

 「これが私の魂・・エリゴスの隙を見てあの彫像に私を投げて。」

 目の先ではアラストールとエリゴスが丁々発止のやり合いを続け、キンマモンとヒトコトヌシは次々と現れるイーブルとの闘いを続けている。

 「機会は一度・・この貝が砕かれれば私の魂と身体は永遠に一つになれない。」

 試しにフェイは傍らの小石をエリゴスに投げてみた。するとその小石はエリゴスの斧に弾かれ粉々に砕けた。

 「戦闘力は・・・」

 「そうです。」

 「アラストールよりエリゴスが上なんですね。」

 現にアラストールの身体は徐々に傷ついて行っている。

 「待てない・・・」

 フェイは呟き、

 「キンマモン。」

 貝を幾何学模様の護神に向け投げた。それをキンマモンが剣先で弾く、宙に浮いた貝に向けフェイが金の矢を引き絞る。

 「行けぇー」

 フェイの声が迸る。

 「何を・・・」

 貝からの声。

 その動きはツクヨミならずエリゴスの不意も突いた。

 金の矢は過たずツクヨミの貝を貫きそのまま彼女の彫像に突き当たった。

 彫像が淡く、青白く光る。

 「戻ったのね。」

 ツクヨミの口が開き、小さな声が聞こえる。その瞬間、エリゴスが凍りついたように動かなくなった。


×  ×  ×  ×


 (お前の妻フェイは、今でも・・・)

 そこで不意に今までイシューを悩ませていた声が消えた。

 「ツクヨミガ覚醒した。私は間に合わぬ。すぐに陰の結界が消えナラシンハが殴り込んでくる。」

 伽藍の中に響くヘカーテの声。

 「私は帰らぬ・・お前達も好きにするがよい。」

 一瞬戸惑ったルキフ・ロフォカレがイシューの目の前から消えた。

 そしてフェイの目の前のエリゴスもまた。

 「先へ・・・」

 「急ぐ必要はありません。ビフロンスも既に消えています。」

 ツクヨミは明るくなった遺跡の中でニッコリと笑った。


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