第四章 齟齬(33) 新しいルミアス(2)
ディアス達はイシューとフェイの婚儀の三日前にルミアスに着いた。着くとすぐにディアスはイシューの屋敷を訪れた。旧交を温め、アファリを紹介した。
「俺達の村造りに協力してくれているアシュラ族の次期女王様だ。」
ディアスは悪戯っぽい笑顔を作りアファリを見た。
(綺麗・・・)
イシューを間近に見たアファリはうっとりとした眼をし、そしてランシールを見た。
(でも私は・・ランシールの方が好き。)
「フェイには会ったか。」
「いや・・まだだ。」
「会って来いよ。
あいつは元々・・・」
イシューのその言葉をディアスは笑顔でごまかした。
「好きな人は居るのですか。」
フェイはディアスの顔を見るとそう尋ね、ディアスが微かに頷いた。
「良かった。これで・・・」
二人だけの部屋にフェイの笑顔が映える。
「村を造っているとか。」
「まだまだ小さい。住民は百人程度だ。」
「今回、アシュラ族の方も一緒とか。」
「ああ、次期女王らしい。」
「その方が・・」
「いや違う。
アファリと言うんだがまだ十六だ。」
「では・・・」
「白魔道士だ。」
「あなたの村、そしてアシュラ族とのこと、イシューに相談してみてはどうでしょう。」
婚礼の式は盛大だった。
だが、そこで見た国王ブリアントは随分年老いて見えた。
「父は二百才を超え、老いた。
この結婚を機に私に家督を譲るつもりらしい。」
イシューは明日は帰るというディアス達を自分の屋敷に呼んでいた。イシューの横にはフェイが座りにこやかにディアス達を見ている。
「あなた達の村は人を集めていると聞く。」
イシューは話を変えた。
「そこでだ・・近い将来あなたの村にエルフ族も受け入れて欲しい。」
「なぜ。」
「この国ルミアスは相変わらず閉鎖的だ。かといってエルフ族の血を守る為それを変えようとは思わない。だが、進歩的な考えを持つ者も必要だ。その為に外の世界を見せ、その経験をここに持って帰って貰う。」
「国を開けば良かろう。血が混ざると言っても、そうそうエルフ族が滅びることもなかろう。」
「我が種族は生殖能力が弱い、男は特にな、そこに多種族が入ると・・・解るだろう。」
エルフ族が純血を尊ぶのはそう言うことかとディアスは納得した。
「それにアシュラ族・・せっかくここに次の指導者が来ている。そことも提携を結びたい。」
「私にはまだわかんない。」
アファリが困惑の顔を見せる。
「ここ、新たな月の谷の北にはヤフー人が住み、森を隔てたその南にはピクト人。そしてその真東、つまり月の谷の山を越えた南には有尾人が居るという。
これらは皆温厚。だがそれをいいことに、最近野蛮なアッティラ族が幅を利かせ始めている。
現に我々もここに来る途中に彼等に襲われた。私はここらの平和を守りたい。
そこで、将来ではあるがアシュラ族の力を借りたい。」
「どうやって。」
「男児・・アシュラ族は男児を捨てるという。それを受け入れたい。」
その言葉にディアスが膝を打ち、
「カトリンも喜ぶよ。」
と、思わず言った。
「カトリン・・・」
イシューがディアスの顔を見る。
「カトリン・ル・フェイ、我等の手助けをしてくれる白魔道士です。」
「いや、彼女の村造りに我々が同調し、それを手助けしていると言うべきかな。」
ランシールの声にローコッドの声が被さる。
「白魔道師ですか。」
フェイがディアスの顔を見てニコッと笑う。
ローコッドはカトリンとの出会い、その人となりを語り、
「三十歳前ぐらいの美しい女性。弱い者に非常に優し女だ。」
「年上なんですね・・その方が・・・」
フェイはもう一度笑顔でディアスを見た。




