表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/83

第四章 齟齬(33) 新しいルミアス(2)

 ディアス達はイシューとフェイの婚儀の三日前にルミアスに着いた。着くとすぐにディアスはイシューの屋敷を訪れた。旧交を温め、アファリを紹介した。

 「俺達の村造りに協力してくれているアシュラ族の次期女王様だ。」

 ディアスは悪戯っぽい笑顔を作りアファリを見た。

 (綺麗・・・)

 イシューを間近に見たアファリはうっとりとした眼をし、そしてランシールを見た。

 (でも私は・・ランシールの方が好き。)

 「フェイには会ったか。」

 「いや・・まだだ。」

 「会って来いよ。

 あいつは元々・・・」

 イシューのその言葉をディアスは笑顔でごまかした。


 「好きな人は居るのですか。」

 フェイはディアスの顔を見るとそう尋ね、ディアスが微かに頷いた。

 「良かった。これで・・・」

 二人だけの部屋にフェイの笑顔が映える。

 「村を造っているとか。」

 「まだまだ小さい。住民は百人程度だ。」

 「今回、アシュラ族の方も一緒とか。」

 「ああ、次期女王らしい。」

 「その方が・・」

 「いや違う。

 アファリと言うんだがまだ十六だ。」

 「では・・・」

 「白魔道士だ。」

 「あなたの村、そしてアシュラ族とのこと、イシューに相談してみてはどうでしょう。」


 婚礼の式は盛大だった。

 だが、そこで見た国王ブリアントは随分年老いて見えた。

 「父は二百才を超え、老いた。

 この結婚を機に私に家督を譲るつもりらしい。」

 イシューは明日は帰るというディアス達を自分の屋敷に呼んでいた。イシューの横にはフェイが座りにこやかにディアス達を見ている。

 「あなた達の村は人を集めていると聞く。」

 イシューは話を変えた。

 「そこでだ・・近い将来あなたの村にエルフ族も受け入れて欲しい。」

 「なぜ。」

 「この国ルミアスは相変わらず閉鎖的だ。かといってエルフ族の血を守る為それを変えようとは思わない。だが、進歩的な考えを持つ者も必要だ。その為に外の世界を見せ、その経験をここに持って帰って貰う。」

 「国を開けば良かろう。血が混ざると言っても、そうそうエルフ族が滅びることもなかろう。」

 「我が種族は生殖能力が弱い、男は特にな、そこに多種族が入ると・・・解るだろう。」

 エルフ族が純血を尊ぶのはそう言うことかとディアスは納得した。

 「それにアシュラ族・・せっかくここに次の指導者が来ている。そことも提携を結びたい。」

 「私にはまだわかんない。」

 アファリが困惑の顔を見せる。

 「ここ、新たな月の谷の北にはヤフー人が住み、森を隔てたその南にはピクト人。そしてその真東、つまり月の谷の山を越えた南には有尾人が居るという。

 これらは皆温厚。だがそれをいいことに、最近野蛮なアッティラ族が幅を利かせ始めている。

 現に我々もここに来る途中に彼等に襲われた。私はここらの平和を守りたい。

 そこで、将来ではあるがアシュラ族の力を借りたい。」

 「どうやって。」

 「男児・・アシュラ族は男児を捨てるという。それを受け入れたい。」

 その言葉にディアスが膝を打ち、

 「カトリンも喜ぶよ。」

 と、思わず言った。

 「カトリン・・・」

 イシューがディアスの顔を見る。

 「カトリン・ル・フェイ、我等の手助けをしてくれる白魔道士です。」

 「いや、彼女の村造りに我々が同調し、それを手助けしていると言うべきかな。」

 ランシールの声にローコッドの声が被さる。

 「白魔道師ですか。」

 フェイがディアスの顔を見てニコッと笑う。

 ローコッドはカトリンとの出会い、その人となりを語り、

 「三十歳前ぐらいの美しい女性。弱い者に非常に優し(ひと)だ。」

 「年上なんですね・・その方が・・・」

 フェイはもう一度笑顔でディアスを見た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ