第四章 齟齬(32) 新しいルミアス(1)
ロニアス・・カトリンの望み通り、少しずつではあるが希望を無くした子供達が集められてきていた。その数約三十・・その中にはアシュラ族の男の子もいた。
その子等を集めクラレスは剣術を教え、ランシールは戦術を、ディアスは政治を、ノルトンまでが哲学を教え、カトリンは人の優しさを教えていた。
それらを教わる生徒の中にはアファリや他のアシュラ族の女子も含まれていた。
その世話をする為、当面集められた男と女が十数名ずつ、その中には妊婦もいた。乳の出るものは拾われてきた赤児を育て、その中にはシーナも含まれていた。そして、ネルは手伝いのアシュラ族の女達と伴に村境の警戒に当たっていた。
皆が活き活きと働き、村は徐々に活況を呈していっていた。
カトリンが望んだ石造りの館はほぼ出来上がり、村境には環濠が掘られその内側には逆茂木を結い回し、そのまた内側には人の背丈以上の高さを誇る木柵が作られていた。その中には広い畑を抱え何本もの井戸も掘られていた。今は柵の外まで畑を広げようとし、その為の人集めの為ネルはランシールと供にしばしば村を出ていた。人々は柵の中で家を造り、家庭を持つ者もあった。
その全ての中心は“永久の館”そこは修練用の大きな部屋が一つ、中くらいの勉学用の部屋が三つ、まだ本は少なかったが広い図書室が一つ、ディアス達の会議室とそれ程広くはないが綺麗に整備され、浴室がついたカトリン専用の部屋があった。
「ランシールはまだかなぁ・・・」
カトリンの部屋の机に頬杖をつきアファリが溜息を漏らした。
「まだですよ・・今度は三、四十人の人を集めてくるといってましたから。
それよりあなたは勉強でしょう。」
カトリンがそれを嗜める。
「魔術の修行ですよねぇ。」
アファリがその声に舌を出した。
アファリの魔術に対する適応力は素晴らしかった。既にいくつかの炎の魔術を覚え、今は癒しの魔術に取り組んでいる。
そんな日常が続く中にネルとランシールが帰ってきた
男と女が十五人ずつそれに子供が七人、その中には家族を成す者達もいた。
男達は狩りの技術を覚え、女達がする耕作の手伝いもした。それによって体力を造り、弓の技術を覚えていった。
その上、男女関わらず剣の技術も覚えさせられ外敵に対する備えと成していった。
そんな日常の中、ポルペウス奥の院の戦いで別れて以来、初めてのイシューの便りが新しいロニアスの村を興すディアスの手元に届いた。
「イシューとフェイが結婚するらしぞ。」
ディアスがその手紙を読んで喜色の声を上げた。
「フェイは・・・」
ローコッドの声に被せ、
「式は何時ですか。」
ランシールが明るい声を上げる。
「二ヶ月後・・俺達も招待してくれるそうだ。」
「私達って・・・」
「お前と俺、それにローコッドだ。」
「私も行きたい。」
ディアスの声にすぐにアファリが被せてきた。
「いいんじゃないか。」
ディアスがネルの顔を見る。
「アファリに外の世界を見せるのも。」




