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第四章 齟齬(1)

 タンカの村。徐々に石造りの城壁も出来ていき、町と言ってもいい姿が出来上がりつつあった。そこに壮年の男が現れた。ラグラと名乗り、村長(むらおさ)ホンボイを訪れた。

 「もったいないことをしておる。」

 その言葉にホンボイが首を傾げる。

 「せっかく“光の子”を迎えながら何の手も打ってはおらぬ。」

 「ひょっとして、七賢者様では。」

 壮年の男が鷹揚に頷く。

 「もったいないとは。」

「“光の子”・・それをなぜ人目にさらし続けておる。

 宮城を造り、その奥に“光の子”を据え、皆の心を一つになぜしない。」

 「どう言うことでしょう。」

 「神として・・いや神の使いとして“光の子”を崇めさせる。

 さすれば人心は纏まり他国の脅威も薄れよう。」

 「しかしそうなれば他国が黙っていますまい。“光の子”争奪の争いになります。」

 「軍を造るのじゃ。」

 もう一つ、男の声。

 「打って付けの者がおろう。」

 「私達も手伝います。」

 今度は女の声。

 男と女の声、それはラダとダナエ

 「それを政治に生かすのです。

 “光の子”を擁した宗教に懸かる枢密院を造り枢機卿を選ぶ。それを以て政治を行う。」

 「出産を理由に“光の子”をなるべく人目にさらさぬ事です。それで神秘性が高まる。」

 さらに女の声、その主はデメテル。

 「ティアは間もなく出産します。軍と成る男達の目から隠すには好都合。

 枢機卿がティアの言葉を取り次ぎ堅固なる国を創る。

 それが得策でしょう。」

 今度はペルセポーネ。

 「皆が心を一つに働けば土地は肥え、国は富むでしょう。」

 と、デルポイ。

 「軍をいくつかの組織とする。

 その装備は我々が保証しよう。」

 そしてルヒュテル。

 「七賢者様が皆・・・ですが森の巫女様の意見も・・・」

 「森の巫女・・彼女も承知です。」

 そう言うデメテルの姿が森の巫女の姿に変わった。

 「ティア様にも・・・」

 さらにホンボイが続ける。そこへヨゼフが走り込んできた。

 「ゴーセス侯国の兵がうろついている。

 ティア様を渡せと言って。」

 そこまで言ってヨゼフははっと立ち止まった。

 「七賢者様達だ。」

 ホンボイの言葉にヨゼフが驚いた顔を見せる。

 「森の巫女様も・・・」

 そう言うヨゼフの目の前で巫女の姿がデメテルの姿に変わった。

 「この時を予見し、私達は全ての手を打っていました。」

 そのデメテルが言う。

 七賢者達はヨゼフを前に再び同じ話を繰り返した。

 「ティア様を他に渡すわけには行きません。我々は亡きサムソンの意を全うする為ティア様を守ります。それがティア様の自由を束縛することになっても。」

 壮絶なサムソンの死を目の当たりにしてきたヨゼフはそう力強く言った。

 「よく考えることです。反対もありましょうが“光の子”の身を考え・・・」

 最後にペルセポーネが言った。


×  ×  ×  ×


「疲れました、あの一帯の者達に巫女が昔から存在し、魔物が国を襲ったと思い込ませるのに。」

 「多寡が洗脳も数が多くなれば・・・ご苦労様でした。」

 溜息をつくデメテルにダナエが軽く頭を下げた。

 「それも我々がこの地で何不自由なく暮らす為。」

 そう言うラグラの横から、

 「マルファス、ピクト、フェノゼリー等で宮殿も間もなく出来上がります。」

 「光の子、カミュの失態で我がホーリークリフは崩壊した。」

 「利用できるものは利用させて貰わねば。」

 ペルセポーネ、ルヒュテル、ラダの声が続く。

 「ここ聖なる山セイン・ヴノに(かしず)く村ロジーノも直に出来上がります。」

 「下の森のサロメも充分に働いてくれました。」

 と、デルポイ。

 「それを追い出す算段もしなければなりませんな。」

 ラグラの言葉に続き、

 「結界を張りますか。」

 「あまりに広範囲に結界を張れば、この見えぬ山のことが噂に上ろう。それは得策ではない。」

 「もう暫くこのままですね。」

 デメテル、ラダ、ダナエが語る。

 「ただ、ロジーノが魔物に襲われぬよう、軽い結界だけは張っておかないと。」

 そう言ってペルセポーネが締めた。


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