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第二章 新天地(11) 塔の美女(5)

 夜明け前から尖塔を目指す準備をし、日が昇ると共にル・フェイが囚われているという石造りの尖塔を目指した。

塔に近づくにつれ、低級ではあるが魔物の出現が増える。それらを斃すのにアレンはそれ程手を貸ず、ほとんど自身の召喚魔カワンチャだけに相手をさせている。

 それを見てディアスが苦い顔をする。

 そしてノルトン。

 「塔を支配する者が解った・・・悪魔デーバ。」

 それを聞いてアレンが微かに笑う。

 ディアスはそれに気付かないふりをし、

 「他には・・・」

 と、たたみ掛ける。

 「配下にはダーエワ、シャイターン、ガギソン、バラム・・・その他にも低位の者が数知れず居る。」

 「配置は解るか。」

 「我等が攻め入れば直ちにル・フェイに害が及ぶ。その数は多数・・」

 「殺せるのであればなぜ手を出さない。」

 「彼女が持つ魔力・・それを利用しようとして居る。

 その為に生かす・・だが・・・」

 「救う方法は・・・」

 「私には解らぬ。」

 ノルトンとディアスの会話が途切れる。

 「俺が呼び出す魔物を誰にも知れずそこへ送り込めるか。」

 そこへアレンが割り込んできた。

 「その者による・・地の素性(エレメント)を持つものであれば私の力で送り込める。」

 「やっと役に立つな・・地霊カワンチャ・・・このためにこいつだけを使い能力を上げておいた。」

 「力が上がるのですか。」

 シーナが疑問の声を上げる。

 「純粋な力は変わらない。が、増殖能力が上がっている。」

 言いながらアレンはカワンチャを呼び出した。

 「ノルトン、魔の結界を浄化できるか。」

 頷くノルトンを見、アレンが続ける。

 「カワンチャの後にネヴァンを飛ばせる。ノルトンを連れてな。

 それでル・フェイの魔力が使えるように成る。

 それにデーバとネヴァン、階位(レヴェル)はネヴァンが遥かに上。その上、ル・フェイの魔術。となればデーバはネヴァンの元である俺を狙ってくる。

 後はそれを片付けるだけだ。」

アレンの言葉が終わらぬうちにノルトンは呼び出されたカワンチャを土に変え、塔に送り込んだ。

 「ネヴァン。」

 幾ばくかの時間を置き、ノルトンが頷くのを見てアレンは背に羽根を持つ美女を呼び出し、頼んだぞ。とノルトンを送り出した。

 ネヴァンの姿が塔を守る魔物に知れたか、塔の前の土がボコボコと盛り上がる。

 餓鬼・・三十体にも及ぶ餓鬼が現れた。それに対するものは十五体の火鼠。そしてもう一体、グリーンマン。数多くの餓鬼を薙ぎ倒しながら塔の内側に続く門へと迫っていく。

 グリーマンの拳が門扉を叩き割るとすぐにアレンはそれを呼び戻した。

 「なぜだ。」

 ディアスが怪訝な顔を見せる。

 「ネヴァン、グリーンマン、共に階位(レヴェル)が高い。その上にカワンチャと火鼠、俺の(ジン)が喰われ“鬼切り丸”を使えなくなるんだよ。」

 「この先、一度に多数の魔物が出てきたらどうする。」

 「そうだな・・ノルトンの話しじゃぁシャイターンとダーエワ、それにガギソン、そのうちどれかは塔の上に向かったとして、残りはこっちに来るはずだ。奴らは数で来るからな。」

 と、そこまで言ってアレンはシーナの顔を見た。

 「そん時は雷獣“鵺”でも呼んで貰おうか。」

 「私が・・・」

 シーナが驚いた顔をする。

 「ああ、雷の剣・・それには倒した鵺が棲んでいるはずだ。強く念じれば現れる。」

 「私には(ジン)というものは・・・」

 「誰もが持っているよ。その量が多いか少ないかだけだ。」

 「長話の暇はなさそうだぞ。」

 餓鬼を斃し塔内に足を踏み入れたディアス達の前に熊に乗った魔物が現れた。

 「魔王バラム、この程度なら話しながらでも片付けられる。

 それより上。」

 アレンは頭に二頭の馬の頭を髪の毛のように付けた魔物の攻撃を躱しながら高い伽藍の天井を指さした。

 「ガギソンだ。」

 蝙蝠の羽根と鳥の頭部と足を持った魔物が乱舞している。

 「鵺を呼べ。そいつの階位(レヴェル)は俺が持つどの召喚魔よりも高い。だが(ジン)は喰われん。」

 シーナが気を集中させるのをアレンが援護する。

ディアスはその間に爪を振り回す大熊を斃した。

 そして、バリバリと大きな落雷の音を立て雷獣“鵺”が現れた。その落雷に打たれ何匹かのガギソンが黒焦げになって床に落ちた。

 「雷は使わぬように命令しろ。この中だと俺達までやられる。」

 アレンが微かに笑う。

 現れた鵺の姿にたじろいだバラムをディアスのグングニールが突き通し、宙に浮いたガギソンは鵺の爪に引き裂かれた。

その調子。とアレンが手を叩くのをディアスがキッと睨み付け、それにアレンが肩を竦めて応えた。

 「このまま鵺を先頭に・・・」

 「止めておけ。闘いが終わったら召喚魔はすぐに剣に戻す。

 武器に棲む魔物はその武器で何かを倒している間は斃した者の(ジン)を吸っているが、それが無くなれば召喚した者の(ジン)を喰う。

 この世に居てはならない者をいつまでも呼び出したままにしないことだ。」

 シーナが納得顔で頷く。

 「さて、ル・フェイに追われた魔物達がこっちにやって来るぞ。

 今度は手強いぞ、シャイターンかダーエワかは解らんが団体さんはお前達に任せる。

 デーバは俺が・・・」

 アレンは舌なめずりでもしそうな顔をした。

 「なぜそんなにうれしそうな顔をする。」

 ディアスがそれを見咎める。

 「俺の本職は魔物狩り(デヴィル・ハンター)。

 その血が騒ぐだけさ。」

 それに対してアレンは事も無げに言った。


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