第二章 新天地(6) 独立した村(3)
百人の移住は決まった。村の規模を広げそこに住む。その為の工事が忙しく始まった。
そしてヨゼフは今、ホンボイと伴に森に向かっていた。
「あの森の手前の祠に代々の巫女様が住んでいる。今の巫女様は九十歳を越えている。粗相の無いようにな。」
ホンボイが注意を促す。
「あの森は・・・」
ヨゼフが森を指さす。
「魔物が棲んでいると言われている。一度入れば、生きて出る事はできない。
その魔物達が森の外に出ないように祠の巫女様が押さえてくれている。
くれぐれも粗相の無いように。」
ホンボイはもう一度念を押した。
老婆という割には巫女はしっかりとしていた。
「光の子とな。」
巫女は既にティアの事を知っていた。
「名をティアというか。
村が繁栄しよう。森の女王様も喜んで居られることだろう。」
「森の女王・・・」
ヨゼフが怪訝な顔をする。
「そう・・森の女王様。名をサロメ様と仰る。」
「森には魔物が・・・」
「この聖なる森を護り、この地に光の子を導き入れる為・・・全てはサロメ様の思し召し。」
「なぜそこまでして。」
「百数十年前、この森に神が来なさった。そしてサロメ様に今日の日があることを伝えたそうだ。
それからサロメ様のご苦労が始まった。外敵を排除し、タンカの村を護る為、全てをなげうたれた。
全てはタンカに光の子を迎え入れる為。そのご苦労は並大抵のものではなかった。」
「つまり我々は。」
「この地が安住の地。タンカを中心として闇の者達の暗躍を押さえるのだ。
但し、戦いも始まる。以前はタンカの争奪、今後は光の子の争奪戦となる。それに備えることだ。」
その日から村・・いや国造りが始まった。