表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/75

第二章 新天地(5) 独立した村(2)

×  ×  ×  ×


 翌朝、ティアとヨゼフは村に向かった。

 「昨日とは違う人のようだが・・それに身重の女性まで。」

村長(むらおさ)はティアをしげしげと見た。

 「エルフ族の方かな。」

 ティアが頷く。

 「もう生まれるのか。」

 「まだ少し・・・」

 ティアが細い声で答える。

 「どうでしょうか、交渉ごととは別に、この方の産屋だけでも先に構えていただけないでしょうか。」

 「私だけ・・・」

 突然のヨゼフの言葉にティアが小さく遠慮の手を振る。

 「私達は男ばかりです。当然産女(うぶめ)もいない。

 我々は荒野にいてもいいが、もしもの事を考え、手配していただければ・・・」

村長(むらおさ)はすぐに人を呼んだ。

 「取り敢えずここの離れでよかろう。

 先ずはこの女性をそちらに移し、それから話しを始めましょう。」

 村長(むらおさ)はそこに来た女性の手にティアを預けた。

「さて、本題に入りましょうか。」

 「待ってくれ、先ほどの方、ティア様と仰います。我々はあの方を人質として差し出したわけではない。もしティア様を盾に我々に難題を吹きかけてきたら、我々は一度機にこの村になだれ込む。それをお忘れ無く。」

 ヨゼフは村長(むらおさ)の眼を強く見た。

「判っておりますとも、私達はそう言う卑劣な手は一切使いません。

 とこで貴方のお名前は・・私はこの村の長ホンボイと言います。」

 「ヨゼフです。」

 ヨゼフもまた名乗って頭を下げた。

「では、本題に入りましょうか。」

 ホンボイが再び促す。

 「我々はティア様の意向で安心して住める場所、子供の養育ができる場所を求め、ラフィンウエルの案内人(ガイド)に案内されたのがここです。」

「戦いは。」

 「出来ます。だが傭兵ではなく、ここの住民として戦いたい。」

 「だが百人・・多すぎる。」

 「当初、村に入るのは三十人。この三十人が自分達の住居を造る。それが出来てから残りの者達が村に入る。」

 「三十でも多い。」

 「では村のために戦い、村には住めないと言うことですか。あまりにも一方的な条件ではありませんか。」

 「だが・・・我が村に一気に多人数を受け入れる余裕はない。」

 「さっきも言ったが我等は傭兵ではない。つまり、金が欲しいわけでも、漫然と食料を欲しているわけでもない。狩りを行い、耕作もする。自分達の食い扶持は自分達で賄う。それが出来ない時にほんの少しの援助が必要なだけだ。その代わりに戦う。」

 「住居は何処に造るつもりだ。」

 「出来れば村の中。」

 「村中か・・・はっきり言いましょう。我等の村の住人は約千人、その一割に当たる兵士を受け入れることには抵抗がある。平民であればそれも可能だが・・・」

 「兵士では・・・」

 「そうです、村人は何処の誰とも判らない兵士を多数入れることに不安を持っています。」

 「・・・」

 それから暫く沈黙があった。

 「新たな未来のために・・・」

 ヨゼフはほろっと涙を零した。

 「あんた達何処から来なすった。」

 ホンボイが話題を変えた。

 「ミッドランドから。」

 「この大陸にはエルフ族は少ないが、あの島には。」

 「一つの王国を造っていました。」

 「いた・・とは。」

 「大きな戦争がありました。それは島全体を巻き込むような戦争でした。

 エルフ王ブリアントはその戦争の災厄から逃れるため国を捨てこの大陸に移住しました。」

 「エルフ族が大量にこの大陸に入ったことは知っていますが・・ではなぜティアという女性はそれと一緒に行かなかったのですか。」

 「エルフの国は閉ざされた国です。故に私の様なレンジャーという人の組織を作り情報を集めていました。

 先ほども申しましたがティア様は・・」

 「ちょっと待ってくだされ。貴方の話を聞いているとあの女性に相当な敬意を払っているようですが、いったい何者なのでしょうか。」

 「ティア様は先ほど話した戦争の中で、カミュ様と共に邪神ルグゼブと戦った方です。」

 「邪神ルグゼブ・・・大昔この世界を一度滅ぼした。との言い伝えがこの大陸にも残っています・・しかしそれは神話では・・・」

 「私もそう思っていました。しかしルグゼブは実在した。現にカミュ様とティア様がその邪神と戦い大爆発と伴にそれを屠りました。」

 「あの大爆発か・・日が沈み暗くなる頃、あの光はこの大陸からも見えたという。

 で、邪神を討ったカミュはどうなったのだ。」

 「邪神を屠る戦いに身を投じました。」

 「死んだのか・・・

 そもそも、カミュとティアとは。」

 「二つに分かれた光の子です。」

 「光の子。」

 「はい、その二人が一つになり、カミュ様が邪神を倒しました。そして今、ティア様の胎内にはお二人の子が・・・。」

 「光の子。」

 ホンボイはもう一度同じ言葉を呟いた。

「光の子・・・」

 そしてもう一度。

 「貴方はご存じかな。この地方に伝わる昔話を。」

 ヨゼフが首を横に振る。

 「昔この地方に現れた年老いた巫女が、いずれここタンカに光が降りる。と触れ回った。この地方の王侯はそれを信じ、天罰を恐れこの村に手を出さなくなった。だが光が降り立つこともなく、最近、三国がこの村に手を出してきている。

 そこに光の子が・・・

 二日待ってくれ。まず村人にこの事を知らせ、それから巫女様のご宣択を受けに行く。その時は貴方も一緒に。」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ