この星のおしまい
絹糸のような濡羽色の長い髪、底光りする大きな黒い目。それらと対象的な真白い肌。この特徴は彼らの信仰する神と全く同じだった。そのことで彼らから崇め称えられ、遂には『神に似ている』ではなく、『神』になった。そして、貴女様のためなら、とすべてを捧げ、放った一言一句を信じた。そして破滅の運命をたどった。彼らは愚かだった。たかが人間のすべてを信じた。顔を上げると、砂漠と暗く息の途絶えたビル街がどこまでも広がっていた。この星に不時着してから何年たっただろうか。日を数えることなんてとっくにやめてしまった。指にまとわりつく白砂の一粒一粒さえをも自分のものにしてしまった私にこの星で自分のものでないものはない。でも、生命の気配のないこの星に、もうその意味なんてない。邪魔なものは何一つない。それと同時に欲しい物もない。哀れで、愚かで、弱いこの星の住人たちは私の指先の微かな揺れにも感嘆のため息を漏らした。その記憶はずっと遠い。当時は煩わしさもあったが、今となればとても恋しい。どうして滅んでしまったのだろうか、どうすれば滅ぶことなく、穏やかに楽しく暮らせたのだろうか。全ては唆したお前が悪いと言われてしまえばそれでおしまいだが、今はどうしても他の所為にしたい気分だ。そんなことを思いつつぼんやりと景色を眺めていると、遠くにネオンの明かりが見えた。その瞬間困惑と様々な感情が頭を駆け巡った。もう数百年も前にこの星の全ての生命は滅んだはずだ。そして、このような設備も全て壊れてしまったはずだ。まさか、と思った瞬間、薄らと人影が見えた。