肆、神の湯へいこう
そうだ。
それは、ひょんなことからはじまった。
茜、桜、フィーネ、フレアの女子トーク最中の話であった。
「温泉入りたいな」
茜がぽつりと呟く。
「そうね、嬉野(佐賀県)、山鹿(熊本)、別府(大分)久しぶりに行きたいわね」
桜が懐かしそうに答える。
「黒川(熊本)もいいよ」
と、茜。
「じゃ、指宿(鹿児島)!」
桜がすぐ返す。
「あのう2人ともなんの話を?」
フレアは訝しそうに2人に尋ねた。
「温泉よ。大きなお風呂です」
茜は両手を広げて大きさをアピールした。
「はぁ」
フレアは彼女の勢いにおされ、なんとなく頷いた。
「そういえば、このあたりに温泉あると聞くわ」
フィーネが思いだし言った。
「なんですと!」
茜と桜が身を乗り出す。
「神様たちが入る通称神の湯・・・美肌効果は勿論、万病、お通じ、長寿なんでもご・・・」
「行こう!」
フィーネの眼前近くに2人の顔が迫る。
「へ・・・今から」
「うん!」
☆☆☆
という訳でサルタヒコを先頭に暁屋一行は、神の湯を求め出発した。
ノリは慰安旅行だ。
ケンジの操船する舟に皆は乗り込み、大海原へ繰り出す。
舟の先頭に仁王立ちし、先を見つめるサルタヒコに、ケンジは、
「あのうサル様、危ないですよ」
「かまわん。ワシは旅の神じゃ」
サルタヒコは威風堂々と言った。
「いや、意味が分からんのです・・・が・・・ほらっ」
荒波がざばーん、当然小舟は大きく傾くと、サルタヒコは海に吸い込まれた。
「サルタヒコさま~っ!」
フィーネが叫ぶ。
「やれやれ」
と、茜は首をすくめる。
「いいぞ、やれやれ~」
と、道中、酒盛りをする一郎が赤ら顔で手を叩いた。
「めでとー」
と、手を叩きケタケタ笑う、笑い上戸の桜。
「うっぷ、うっぷ、げろげろげろ~ろ」
李は船酔いを起こし、舟べりから海へリバースする。
「うぃぃ~いっちょ、俺が助けに行くか」
ギルモアはがフラフラと立ち上がる。
「ギルさん、あんた、カナヅチでしょうがっ!」
下戸のアルバートは老ドワーフを羽交い締めにして止める。
「しっかし、上品に皆さん、飲めないものですかね・・・って、うぷっ、私もレロレロレロレロ~」
バリーも華麗にリバースした。
「わーなんかたのしそう」
と、ディド。
「ね」
と、ディジー。
「子どもは見ちゃいけません」
フレアは2人に右手左手で目隠しをする。
「よっしや、俺、裸踊りするっ!」
酔っぱらったクレイブがふいに立ち上がる。
「あなたやめて!」
妻の叫び声が響く渡る。
ほどなくすると海面が盛りあがり、サルタヒコと大きな魚が宙を舞った。
「どっしゃー!」
2mほどの鯛を抱きしめたサルタヒコが、そのまま舟に落ちてくると、激しく舟は揺れた。
「おっとっとと」
ケンジは懸命に舟を操り安定させる。
「おーっ!」
皆が魚を指さし、
「めで鯛」
と言った。
神の湯へいこう。




