陸、船頭見習い
ギルモア爺と。
ドワーフのギルモア爺は、頬に白髭をたくわえた白髪、身長150㎝の巨漢である。
彼は相変わらずの仏頂面で淡々と、朝の舟準備をこなしている。
ちらりとたどたどしい動きをする新人クレイブに一瞥すると、いきなり怒鳴った。
「新入り!舟の結び方はそうじゃねぇ」
「???」
クレイブは困惑した顔を見せる。
「そうじゃねえってんだろ!そんなロープの結び方じゃ解けちまう」
どすどすと巨漢を揺らし、クレイブの隣へ来ると、ロープを奪い、ひょひょいと桟橋に舟を係留してみせた。
「こうやんだよ」
「あの、もっとゆっくり見せてくれませんか」
「ああん。仕事ってのは見て覚えるもんだよ。見て・・・さ、やってみろ」
ギルモアは繋いだロープを外し、クレイブへ手渡す。
「・・・はあ」
エルフ一家の長は見よう見まねで、やってみる。
「・・・そうそう・・・って、そうじゃねえ。そんな結び方をしたら解けなくなっちまう。舟が出発する時、大変だ」
と、彼の肩を押しのけ、ギルモアはまたするりとロープを結んだ。
「な」
爺は笑う。
「・・・な、と言われましても」
曇るクレイブの顔。
「とにかく、やって覚えな」
ドワーフはエルフにロープを差し出す。
「・・・・・・」
クレイブはロープを受け取るなり黙り込んだ。
「ん~、もう根をあげちまったか~」
「そんなことありません!」
キッと睨みつけるクレイブの眼前に、老人の大顔がつきつけられる。
「何だあ?」
その時、背後から声があがった。
「おーい、クレイブ、(練習)行くぞ」
一郎が舟のデッキに立ち手を挙げ、新人を手招き呼び寄せる。
「はい」
クレイブは返事をすると、眼光鋭くドワーフを見て、その場を離れた。
「チッ」
ギルモアは舌打ちをした。
クレイブ。