弐、茜の手紙、顛末
茜の手紙。
茜は日々の出来事を書き留めている。
スマホもパソコンも無いこの異世界、羊用紙に今日もせっせとしたためている。
お父さん、お母さん、ばあば、私がこの世界に来て半年が経ちました。
じいじは相変わらず、なんとなく暁屋をやっています。
そうそう、ケンジが暁屋の船頭になりました。
良かった~って、そんなのじゃないのよ。
前の会社でだいぶ辛い目にあっていたみたい、記憶も無くして・・・あ、私のこと分らなかったんだからっ!
今は記憶戻っています。なんとなくショック療法みたいな感じで・・・大変だったみたい。
暁屋に連れてきた時なんて、3日間も寝込んでいたんだから・・・まったくどういう会社なの、でも無事で良かった・・・って、違うもん、そういう意味じゃないの、なんだろうね腐れ縁って感じ。
でも、アイツが船頭ねぇ、お堅い役所勤めタイプと思っていたけど、見どころあるじゃん。
そうそう、どうも話を聞くと、ケンジは私より1年くらい前に、ここ(異世界)に来たみたい。そのせいか、すこーしだけ大人びているんだよねぇ・・・なんとなく。
船頭の腕前は、あのユングって社長に相当鍛えられたみたい、私が「文句のひとつくらい言ったら」って言うと、「いや、まあ、ここでこうやって職にありつけてるんだから、いいんじゃね」だって、アイツもじぃじに似てお人好しだねぇ。
で、ケンジが勤めていた大柳屋っていう舟会社は店じまいしました。
いろいろ大変だったみたい、じぃじがいろいろ動いて、あとの世話を焼いていたみたい。
「昔の部下の尻ぬぐいぐらいしなきゃな」
なんて言っていたけど・・・ふふふ、相変わらず優しいじぃじなのです。
相変わらず暁屋の仕事は忙しいです。
大柳がなくなった分のしわ寄せがきそうだしね。
私は常にトップバッター(最初の舟)よ。
ケンジが本調子に戻ったら、この座を譲ってやろうかしら(笑)。
周りのみんな(船頭)も・・・まあ、いい人たちばかりなので心配しないでね。
今は離れているけど、きっと戻れるそう信じています。
みんなで戻ったら、柳川のうなぎ食べに行こうね。
また手紙書くね。かしこ。
茜はそっと筆を置いて、両腕を伸ばした。
「んー、さっ寝るか」
ベッドに潜り込むと茜は燭台の灯りを消した。
顛末をフォローす(笑)。




