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弐、ヤナガーの川下り前編

 朝の舟準備。


 早朝、暁屋の船頭達は、川下りの営業準備へと入る。

 舟を船着場の定位置へと動かす。

 舟まわりを清掃し、ぞうきんで船体を洗う。

 それから中にマットを敷く。

 一郎は作業をしていると、じんわり額に汗をかいてくる。

 ある程度の目処がたったら、皆に向かって右手をあげる。

 どっかり桟橋に腰をおろし、深く息を吐くと、一郎は煙管に火をつけた。

 ぶかりと紫煙が空に舞う。


 今日の朝一の舟は、エルフ家族の予約である。

 一郎は受付兼業務担当の竜人のハーフ、フィーネに再確認する。

「おい、ばばあ。ルーンさんの予約間違いないだろうな」

「ああ、一郎、8時きっかりだよ。あのさ、ばばあはやめてくんない」

 見る限りでは20代に見えるフィーネは苦笑した。

「300も生きてりゃ、ばばあだろうよ」

 一郎は言い捨てた。


 8時。

 一郎は、足袋を履くと、法被をはおり、腰を帯できゅっと締め、仕事の顔へとなる。

桟橋へ降り、竿置き場から愛用の、黄金竿を取り出し、右手で持ち上げ、一番舟へと行く。

 舟横に竿を突き刺す。

 堀の水はたゆたゆと流れ、朝陽にキラキラと輝いている。

 片手で水をすくい、それを両手で揉んで馴染ませる。

 そして彼は舟が整っているか再確認をする。

 コキコキと首を鳴らし、手をブラブラとさせる。

 フィーネが一郎に声をかけた。

「イチロー、ルーンさん達来たよ」

「おう」

 一郎は片手をあげた後、ばっちょ笠をかぶると、首紐をきつく結んだ。

 エルフ家族が物珍しそうにこちらを見ている。

 一郎は、営業スマイルを見せた。

「いらっしゃいませ。ようこそ舟屋暁屋の川下りへ」



 いざ、川下りへ。

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