捌、柳中の攻防
なんちゃって。
ギルモアはキャッパが消えた柳へ叫ぶ。
「まてっ!この野郎っ!」
そして、自慢の斧を振りかざし、柳をなぎ倒そうとする。
「ギル爺、待てっ!」
一郎が制止する。
「でもよう」
ドワーフは口を尖らせる。
「焦ったら元も子もないわ」
フィーネは手かざしをすると、柳の木に空洞が現れた。
「!」
驚くドワーフ。
「ということだ」
一郎はサムアップする。
「お、おう」
ギルモアは頷いた。
「よし行こう」
一郎は、空洞へと飛び込み、2人も後に続く。
中は真っ暗、底なしに落下していく。
「どわ~!」
ギルモアは絶叫する。
「聞いてないわよ」
と、フィーネ。
「・・・まずいな」
そう呟く一郎に、暗闇が牙を剥く。
闇が煙にように渦巻くと、とぐろを巻いて巨大な手が現れる。
「・・・これは」
一郎は、黄金竿を強く持ち直す。
「フィーネ、ギルっ!」
「大丈夫」
「おうよ」
2人の返事に、彼の口角は思わず緩む。
「カッパさんよ。幻覚なんぞは効かんよ」
竿一閃。
闇を切裂くと拓ける。
「キシャーッ!」
キャッパの怒りの雄叫びがあがった。
3人は薄暗い中に立っていた。
そこは迷路のように入りくんでいる。
「ダンジョンか苦手だな」
ギルモアはさも嫌そうな顔をして言った。
「こんなとこがあったなんて」
フィーネは思案がちに呟いた。
「あいつを探そう」
一郎は迷路を歩きはじめた。
「闇雲に歩いたら疲れるだけだぜ」
ギルモアが口を尖らす。
「俺を誰だと思っている」
一郎は不敵な笑みを浮かべる。
「英雄ね」
と、フィーネ。
「そう、抜かりはないのよ」
一郎は竿の先端を先の道に指すと、黄金色に発色する。
「これが示してくれる」
どや顔をして彼は、ダンジョンを先頭で進んでいく。
ダンジョン。




