表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/126

漆、水龍に飲み込まれる

 ほっこりからの~。

 

 舟はぷかりと掘割の真ん中を漂う。

 陽はとっぷりと落ち、あたりは薄暗くなってきた。

「ごめん」

「別にいいわよ」

「どうする」

 不安で顔をしかめる健司に、茜は涼し気に笑った。

「そうね~」

 彼女はゆっくりと立ち上がり、木の椅子を両手で抱えると、それを水面へとつけた。

 ちゃぽん。

「・・・・・・」

「へへへ」

 茜は椅子をオールがわりにして、かきだすと少しずつゆっくりゆっくりと舟は動く。

 時間はかかるが着実に目標物へと近づく。

そうして竿が突き刺してある場所へと辿り着くと、茜は竿を引き抜いた。


「良かった~」

 と、へなへなとその場に崩れ落ちる健司、 

「なかなか簡単じゃないでしょ」

 茜は諭すように言った。

「ああ」

「櫓は三年に棹は八年よ」

「なんだそりゃ」

「一人前になるには、それなりの修行と努力が必要ってことわざ・・・ま、竿は一か月みっちりやれば、それなりに扱えるようになるけどね」

「なるほどな」

 健司は天を見あげた。


 茜も続き、暗くなりはじめた空を眺め言った。

「もう遅いね、そろそろ帰ろっか」

 健司は頷き、

「ああ・・・なあ」

「ん?」

「あのさ、良かったら、教えてくれないか」

 彼は自然とそう口に出した。

「何を?」

「舟・・・自分でおしてみたいんだ」

「・・・へぇ~」

 茜の顔が嬉しそうに、にんまりと綻ぶ。

「なんだよ」

 彼女の表情に、ちょっとイラつく彼。

「ふ~ん、ケンジ、アンタ、川下りに興味あんの」

「悪いかよ」

「別に、だけど、仕事としてはおススメしないよ」

「誰がなるといった。俺は安心安定の公務員志望なの」

「つまんねーやつ」

 茜は笑いながら言う。

「悪いかよ」

 健司は口を尖らす。

「いーよ」

「へ」

「教えてあげる」

「・・・そっか、ありがと」

「うん」


・・・・・・。

・・・・・・。

 2人の間になんともいえない温かい空気が流れる。

 刹那。

「えっ!」

「なっ!」

 堀の水がうねり逆巻き、激流となり津波のように2人の眼前に迫る。

 それは水神の仕業か・・・はたまた・・・水龍が瞬く間に舟を飲み込もうとする。

 茜へと襲いかかる水龍。

 健司は咄嗟に身を呈して彼女に覆い被さった。

 2人の視界から世界が消えた。



 どうなる?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ