表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/126

陸、そんなに言うならやってみそ

 健司やってみる。


 舟は外堀を進む。

 堀の幅も倍以上に広くなり、さきほどの閉所的圧迫感が感じられなくなる。

 途中、健司の買ってきたお菓子を食べながら昔話に花を咲かせる。

 右手に杉森高校、米多比の森を横目に見つつ、ゆっくりと20分かけて、亀の井ホテル側の足湯公園に着いた。

 そこの公衆トイレで厠たいむを済ませ、軽く足湯に浸かる。

 

「♪ふんふふーん♪」

 茜は鼻歌まじりに、湯の中に浸けた足をリズミカルに動かしている。

 ちらり、彼女の白い生足を見た健司は思わず赤面してしまう。

「ん?」

 異変に気づいた茜は彼を見る。

「なんでもないやい」

「そう」

 彼はどぎまぎする気持ちを紛らわそうと、話題を変えた。

「あのさ」

「うん?」

「やっぱ川下り・・・船頭って楽しそうだよな」

「そうかな」

「そうだよ」

「・・・・・・」

 茜はじっと視線を足元へやり思案し、

「じゃ、やってみる?」

「へ」

「操船」

「ん?」

「やってみそ」

「・・・うん」


 足湯付近の掘割の幅は広く、よく茜もここで一郎におねだりをして、竿をさしていて練習するにはもってこいの場所だ。

 実際、よく舟の操船の練習場所にもつかわれる。

 2人は舟に戻ると、茜は竿を健司に手渡す。

「・・・・・・」

「やってみて」

「おう」

「まずは真っすぐ動かしてみて」

「ああ」

 彼は竿を力強く握り、水底に力強く突き刺す。

ぐいんっと舟は急スピードで90度に右に折れ曲がる。

「もっと、優しく、力を抜いて」

「・・・・・・く」

 今度は舟を戻そうと左へ刺すが、

「竿がねまった」

「強く刺し過ぎよ」

 舟は惰性で進み、竿を握りしめたままの健司は舟から上半身が出でしまう。

「どうしたらいい!」

 焦る彼、

「竿を放しなさい」

 彼女の言葉に頷き、即座に手を離す彼は勢いで舟板に尻餅をついて転げる。

 操舵の竿を失った舟は、ゆっくりと堀の真ん中へと流された。



 操船は一日にしてならず。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ