表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/126

拾、ラグナロク終末の果てに

 戦いの果て。

 

 獄竜が墜落した場所から、わらわらと黄泉の軍が立ち上がり行軍を開始する。


「はははは、馬鹿め、我等黄泉の軍がこれしきの攻撃で滅し臆するとでも思ったか」


 ナミは自ら先頭に立ち、高天原の地を踏みしめながら進む。

 隣には付き従うスサノオ。


「母上、本当に高天原を攻め落とすのですか」


 ナミはスサノオを一瞥すると、


「何を今更、臆したか・・・所詮そなたも天上の神であったか」


「そんな事はありませぬ」


「今、ここで覚悟を決めよ。さもなければ、迷いが揺らぎが其方の魂を食らい尽くすであろう」


「は」


 スサノオは慇懃に頷いた。



 両軍は高天原日向峰で激突した。

 神々の戦いは3日3晩続き一進一退の膠着状態となった。

 

 旅神サルタヒコは戦塵舞う中、自在に駆け抜け黄泉の兵を打ち倒す。

 木陰や岩に身を潜めて、神弓を引き絞り矢を放つ。

 

「やれやれだわい」


 岩に背をあて、弓に矢をあてがう。

 その刹那、見れば頭上に袈裟懸けに斬りかかるスサノオを見た。

 

「しまっ!」


 突然神速の動きで現れた一郎が、黄金竿で戦神の一撃を受け止めた。


「っ!」


 その強烈な一撃に、両腕に衝撃が走り顔を歪める。


「一郎、何故」


「このまま何もしないなんて性に合わない」


 一郎は竿を身構えると、柄に力を込める。


「やめろ!戻れなくなるぞっ!」


「?」


 一郎の迷いの瞬間に隙が生まれた。

 スサノオが大剣をふりかざす。


「!」


 閃光が走る。


「・・・父上」


「スサノオ剣を収めよ」


 木の棒で一撃を止めたナギが、唾ぜりあうスサノオを諭す。


「・・・・・・」


「さがれ、ナミっ~!」


 ナギは妻の名を呼んだ。

 そして、一郎を振り返り見ると笑った。


「人の子、一郎よ。感謝する」


 腕組みをし、睨みつけるナミを探すとナギはゆっくりと歩いていく。

 

「皆の者、戦は終わりじゃ。武器を捨てよ」


 声高々にナギは言う。


「今更、なにしに来たナギっ!」


「知れた事」


 ナギはナミを抱きしめる。


「・・・・・・!」


「すまない」


「なにを・・・今更・・・・」


「許しを乞おうとは思わん」


「ならば死ねっ」


「ああ」


 ナギは寂しそうに笑った。

 その身体は透けている。


「・・・ナギ」


「俺もこの世界の役目を終える時が来たようだ。数千、数万年か待たせたな。帰ろう」


「お前ずるいぞ」


 ナミは滂沱と涙を流す。

 

日向峰から陽が差し込むと黄泉軍に光が包み込み、透過していく。


「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿」


 ナミは泣き続ける。


「・・・すまない」


 ナギは優しく妻の髪を撫でる。

 こうして、大戦は集結した。



 ・・・・・・。

 のち、イズモ大神殿にて。


「此度の事、感謝する」


 アマテラスは一郎に礼を言った。


「・・・俺は何も・・・」


「謙遜するな。お前の働きがなければ、父と母のヨリは戻らなんだ」


「・・・・・・そうかな」


「そうだな」


 サルタヒコは続けて言い笑った。


「サルタヒコ」


 アマテラスは話を促す。


「はっ。一郎、お前のいる世界の復元が完了した。今より転送の儀を行い、皆を還す」


「ああ」


「一郎よ。ここから先、変わらず己で道を開け。なにがあっても・・・な」


「分かった」


「よし。暁屋は直しておいたぞ」


「ありがとう」


「こちらこそじゃ」


 一郎とサルタヒコは顔を見合わせて笑った。



 一郎は暁屋に戻りみんなを見渡す。

 いつもの皆がそこにいる。


「さぁ、帰ろう」


 これから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ