伍、アマテラスへの謁見
暁屋の命運。
一郎は必死に竿をさし、遥か彼方にあるアマテラス大神殿へと辿り着いた。
「はあはあ」
「ご苦労」
肩で息をする一郎を横目に、サルタヒコは大神殿の門をくぐる。
「・・・何だよ」
一郎は腰に手をあて、深く息を吸い溜息をつくと、旅神の後に続いた。
門をくぐると、空気が変わる。
押しつぶされるようなプレッシャーを感じる。
深神域に鎮座するアマテラスは静かに言った。
「もはや、神々同士の決戦は避けられない状況となりました。サルタヒコよ。其方も高天原の神将として出陣を命じます」
「はっ」
サルタヒコは片膝をつき恭しく、任を拝命した。
「一郎よ。お前たち暁屋の船頭は、神を戦場へと導く神舟としての任を負ってくれまいか」
「それは、危険なんだろう」
「無論じゃ」
「暁屋は、安全第一、お客さ・・・神様も船頭も安全第一でなきゃ舟はだせない」
一郎は大神の頼みを断った。
「馬鹿っ!一郎っ!アマテラス様の命じゃぞ」
サルタヒコは、一郎の頭をこずく。
「ワシは今までこうやって来た!今からもこれからも・・・な」
一郎は毅然と言ってのける。
「ふむ。私はお前のいる再構築中世界もお前も今ここで消し去ることが出来る存在なんじゃが・・・私の願いは聞いてくれぬか」
アマテラスは冷徹に言い放った。
「脅しか」
一郎は、じっと大神の目を見つめる。
「やめんか」
サルタヒコは間に割って入り、深々と頭をさげる。
一郎は臆せずアマテラスを睨みつける。
「一郎よ。いずれにしても、この大戦は高天原が負ければ、お前達は消滅する。勝たなければ未来はない。じっと傍観するもいいが、お前達が加担することで少しでも勝ちの利が得られるのならば、答えはひとつしかあるまい」
アマテラスは諭す。
「・・・・・・」
「愛する人たちを守るには、時として決断せねばならない・・・それに・・・だ」
アマテラスは含みを持った笑いを浮かべる。
「・・・何だよ」
「お前たちの住まうニライカナイは、黄泉平坂から出てきたナミの軍が、高天原を目指すには絶対通らねばならぬ場所にある・・・もしや今頃、暁屋は・・・」
「肝心なことは早く言えっ!」
一郎は踵を返し、走り出した。
「おいっ!一郎、お主は戻り方、知らんだろ!」
サルタヒコは彼の背中に叫ぶ。
「サルタヒコ行きなさい。高天原を死守し、黄泉の軍を退けるのです」
「はっ」
サルタヒコは一礼をすると、一郎を追った。
急げ一郎。




