挙式
だんだんと挙式の日が近づいてきた。挙式はパリでする。もちろん俺はフランス語がペラペラだ。会場の手配などは全然困らなかった。俺は死神の中でも結構エリートな部類だ。
「もうすぐフランスだね!実は私2回くらい行ったことあるんだ。」
「そうなのか?どこに行ったんだ?」
「パリ、オルレアン、ルーアンとランスかな。」
「まだ南仏は行ったことないんだな。」
「そうね。」
挙式をあげる前に俺達はストラスブールに新婚旅行する予定だ。俺もストラスブールはまだ行ったことない。シャルル・ド・ゴール空港についたら、空港と連結してるTGVに乗る。TGVは日本で言う新幹線のような高速列車だ。パリ市内にはTGVの駅が6駅もある。
「ストラスブール私ずっと行ってみたいと思ってたの。まさかこんな好きな人と行けるなんて思ってもいなかったわ。」
ピタ子は海外が結構好きだ。特に海外の美術館に行くのが特に好きなのだ。
この前の奇妙な出来事はなくなった。もう一人のピタ子はおそらく人違いだと我に悟った。そうだと信じたい。
家に帰ると一通の手紙があった。手紙は可愛い紙で包まれていた。しかし誰への手紙なのかは開いてみないと分からなかった。
「ピタ子、この手紙ピタ子のなのか?」
「知らないわ。宛先とか書いてるの?」
「中開いてみないと分からない。」
コタツネコも手紙を見た。
「うーん、何となく見ない方がいいじゃないかな?」
コタツネコは手紙を読むことに反対した。
「誰からの手紙かも分からないなら見ない方が良いよ。もしかしたら他の誰かが見るべきものなら余計良くないと思う。」
そう話しているうちに手紙はどこかに飛んでいった。
「この手紙、わしが預かるか。」
いつの間にか手紙は誰かが拾った。
俺達は挙式の為に荷物の準備をした。中々準備するものが多くて大変だ。もっと大変なのはピタ子の方だろう。
「ねえ、死神って性別は自分で選べるんだよね?」
「そうだな。いきなりどうしたんだ?」
「私もそれが出来るならそうしたかった。ずっとそう思ってたんだ。」
「人間が大変なのはよく分かってる。下手したら死神より残酷な奴らだからな。でもピタ子がどんな姿だろうと俺はお前と一緒にいれて幸せなんだ。」
「ありがとう。何か挙式前に自身失くしちゃうなんて私情けないわね。」
ピタ子は少し涙を流していたが、俺の方を向いてにこりと笑った。やっぱり、笑っていた方がいい。
ピタ子は小さい時から性に違和感を感じていた。それを感じたのは幼稚園の時からだった。
「泣くなよ。」
俺はそんなピタ子を見て頭をなで、後ろから軽く抱きついた。
コタツネコも部屋に入ってきた。コタツネコも結婚式に参加してくれる。コタツネコとピタ子はセットな感じがする。それくらい二人は共に行動してるのだろう。
「コタツネコはピタ子といつから知り合ったんだ。」
「だいたいピタ子が高校生くらいの時だな。」
「どこで知り合ったの?」
「道端でたまたまね。」
ちょうどコタツネコ村を出て、東京についた頃ピタ子と知り合った。コタツネコ一族の決まりで村を出ると二度とその村には戻れなくなる。たとえ親がいようと。
「あの時、落ち込んだ感じでピタ子が歩いてたんだよ。俺も心配になって声をかけたら仲良くなったんだ。コタツネコ村に二度と戻れないのは辛かったけど、ピタ子の悩みを聞いたら誰でも辛いことに直面するんだなと思ったんだ。お互い悩みを打ち明けたら何だか笑いがとまらなかった。」
世の中コタツネコのような奴もいれば、人や死神に自分が経験してきた苦労を相手に押し付ける奴もたくさんいる。
いよいよ日本から出国することになった。ピタ子側の両親、俺の妹、コタツネコが俺達と一緒に着いてきた。一人で旅行したり、よく絡むやつと旅行したりするからこんな集団で旅行するのは初めてのことだ。これだけ人数いると騒がしくなる。ピタ子は大人数が苦手で面倒くさそうにしてるのが顔に出て分かりやすい。
「おいおい、楽しく旅行するからだるそうにするなよ、ピタ子。」
「少し休ませて。ちゃんと休んで観光を楽しみたいの。」
とは言っても何だかんだピタ子は皆と楽しそうに話していた。
「コタツネコは海外行くの初めてなの?」
「そうだよ。」
「コタツネコ一族はフランスにもいるの?」
「いないよ。まあ特殊な猫の一族とかはいるかもしれないな。」
コタツネコはパスポートはいらないが同伴者が事前に手続きをしないといけない。今回は俺とピタ子でした。
昔は死神は今のようにパスポートなんてなかった。俺は本当に現代を生きてると実感する。
ストラスブールに着いた。ストラスブール駅はどこか近未来な感じがした。駅に着いたらすかさず皆でホテルに行った。ホテルにチェックインして、荷物を置いた後、皆でストラスブールの街を観光した。どうやらコウノトリが街の象徴で、コウノトリ関連のイラストが多い。
「コウノトリは国で保護されてるの。元々渡り鳥なんだけど、数が減ったから保護する動きになったの。一年中見れるのよ。」
「ストラスブールの街にはいないな。」
「調べて見たんだけど、街から少し離れたオランジュリー公園にいるみたいよ。」
「見て、何あれ?おいそうじゃない。」
ピタ子の両親はお菓子が大好きだ。俺も死神なのにお菓子が好きだ。
「クグロフと言うお菓子よ。ベルのような形してて不思議だよね。」
ストラスブールのは街はフランスの他の街と比べると、ドイツらしいところがある。建物の色使いとかが特にそうだ。
夜になるとストラスブール大聖堂がライトアップされて綺麗だった。新婚旅行だけど、結局他の皆も着いてきた。
「先に帰ってるよ。」
他の皆は俺達に気をつかって先に帰った。
「皆帰っちゃたけど、ロマンチックで素敵だわ。2人きりで見れるなんて嬉しい。」
笑顔で彼女は俺に寄り添った。二人きりで見る大聖堂はもっと綺麗だ。そして写真におさまらないくらいあの大聖堂は大きい。
「次二人であの大聖堂見たいね。」
「次は2年後にするか。」
「そんなに早いの?まあ今回家族が着いて来たから近いうちに見れたら良いね。」
「約束だぞ、ピタ子。」
「うん。忘れないよ。」
お互いに約束を交わし、ホテルに戻り1日は終わった。




