アンタレス大陸到着
俺たちは何度か地上で休憩をとり、アンタレス大陸についた頃には日が傾いていた。
休憩の時も何故か蝴蝶は俺の側を離れなかったがまぁ、そこは置いておこう。嫉妬の視線が異常に多いし。
俺たちが降りたのはアンタレス大陸におけるヒューマンたちの拠点、『アンタレス』である。中華街のような雑多と木の家屋が特徴的な都市である。
「では、今日は兵の宿舎に二人ペアで止まってもらい明日は魔獣狩りとなる。旅の疲れをしっかり休んでとれ!」
「部屋はどうしますか?」
「そんなの、ペガサスに乗ったさいの二人でいい。私はこれから新兵たちの訓練があるからそっちに向かう。」
ハインツは面倒くさそうに後ろの髪を掻いた後、さっさと新兵たちの方に向かって歩いてしまった。
えーっと、俺の場合……蝴蝶か。別に構わないけどさ……。蝴蝶がどう答えるか。
「ねぇ、蝴蝶さん!」
「どうかしたの?」
「……白くんと同じ部屋になるけどいいの?」
「構わない。白は私に手を出さないって信じてるから。」
「へー、やっぱりそうだよねー…………へっ?」
高校生なのに小学生高学年と殆んど変わらない身長に焦げ茶色の髪をツインテールにしている姫津 琴音が蝴蝶に話しかけてかえってきた言葉に唖然とし
「「「「「「ええええええええええええ!?」」」」」」」
クラス一同が大声で驚愕する。
あー…………やっぱりそう返ってくるよね。蝴蝶の奴、俺の事を全面的に信頼しているし。
「「「「「ッ!!」」」」」
そして男子のほぼ全員が俺の方を睨んでくる。
止めてくれ、たかだか夜一緒の部屋で寝るだけだろ?別にやましい事なんて起きるはずがないから。
「くそ白髪病が!てめぇ、蝴蝶さんに変な薬でも盛ったのか!?」
「知るか。」
「こっのお……生きる価値もないゴミが……!」
「ゴミはお前だ、カス。」
山河は怒りに顔を赤面させて持ってきた槍を俺に突き出すが、俺は皮膚すれすれで避けて柄を片手で持ってそのまま近づいて顔面に拳を打ち込む。
こいつ、来るときから殺気をアホみたいにばら蒔いていたからな、俺を殺そうとしてくるのは予想できていた。
「ごぼぉ!?」
「『フレイム・ショット』!」
「よっと。」
魔法の詠唱を終えた勉が俺に向けて火の玉を射出してきたから山河の長槍で全て切り裂く。
普通に切り裂いたら燃えるから魔力を纏わせて切り裂く。ステータスで俺は殺気に敏感だということが分かっていたからそれを応用して攻撃する意識を持った相手を探り、攻撃する場所を予測出来るようになった。
この程度の攻撃なら全て切り裂くことが出来る。
「なっ!?」
「殺気を駄々もれで攻撃するなよ。この程度なら団長レベルなら普通に出来るぜ?」
「ごふっ!?」
「ぬおおおおおおおおおおおお!」
槍を地面に突き刺して柄をしならせて一気に接近して頭に踵落としを決めたら寒武が魔力がこもった張り手をしてきた。
俺は魔力を込めた槍を使って弾き飛ばし、その勢いのまま連続で突きを放つ。
俺だってこの数週間を無駄にしたわけではない。勇者スキルの代わりに剣術、弓術、斧術、投擲術、ナイフ術、槍術、拳闘と様々な武術を教官たちから習ったんだ。しかも、今では教官たちと競り合う位には強くなれた。教官たち曰く「才能がある」とのことらしい。
習ったとは言え素人に毛が生えた程度の奴とそれを専門に習った奴、どっちが強いか目に見えるだろう。
「強えぇ……。」
「勇者スキルがなければ……白に負けてるな……。」
「てか、あれだけ強いんだし教官たちともいい勝負できるんじゃないか?」
俺たちの闘いを見ていた奴等が口々に何か言っている。
まぁ、陰口ばかりだった俺にとっては別にどうでもいいし関わりたくないけど。
「さて、行こうか。」
「うん……!」
俺と蝴蝶はさっさと宿舎の中に入っていく。
あの闘いを誰かが見ていた。殺意はなかったがもし、攻撃してきたら厄介だし今のうちに宿舎に入っておいたほうが兵士たちを最悪肉壁として使える。
取りあえず、部屋に着いたら寝よう。そうしよう。
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「……あれが今の勇者か。」
私は遠見の魔術で三人の勇者を圧倒した勇者に興味を持つ。
三人を圧倒する武術の技、戦闘を臆さない精神力、私の視線に気づく危機察知能力、まさに戦闘の天才だ。
「それに、あの二人……似ていたな、あの二人に。」
男の方は白い髪を伸ばし、適当に結んでおり鋭い目付きの赤い瞳に穏やかそうな顔立ちをしている。女のほうは白い髪を肩まで伸ばしクールそうな顔立ち、赤い右目と水色の左目とあの二人と同じ特徴をしている。
「しかも、男の方から生まれた魔力はあいつにそっくりだ。……取りあえず、最低でも男は連れてこよう。女は……まぁ、連れてこれたら連れてこよう。」
私は登っていた木から降りて村に戻る。
族長に伝えたら恐らく大喜びするだろう。何せ、あの二人……ハクアとコリンの友人だったからな。