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視線の先

世界が、真っ白に染った。

いつきの見える世界、その全ての様々な色や音が、全て無くなったかのように。

全て消えた真っ白な世界は、いつきを一人にした。

何とも言えない気持ちになって足元を眺めていたが、影がチラリと見え、ふと前を見る。

そこには、友人や家族がいた。

元の世界に戻れたのかと思い、嬉しさでいつきは皆に手を伸ばした─が、友人の体に触れたと思った手は虚しく宙を切り、触れられた友人の全身には波紋が広がりながら薄く消えていった。

突然の事に唖然としている間にも友人や家族は次々と消えて行き、最後の一人が消えた頃には幻覚だったことに気づいた。

でもそれももう遅い。

ついに何も無くなった真っ白な世界に一人取り残されたいつきは、皆が来てくれたおかげで消えかけていた寂しさが増幅し、それは絶望感へと変わりその場に崩れた。

何も考えられなくなったいつきは、眩しいくらいの白い世界に、元の世界には戻れないと言われているようにさえ思えてきた。

それが現代へ戻りたいいつきにとって、あまりにもつらいものだった。

元の世界には戻れない。

最悪な状況だが、もし、そうなったら。

それからどうすればいいのか。

グチャグチャな脳内で考えても、マイナスなことばかり浮かんでくる。

でも、それでも。

どんなに過酷でも、変わらず思うのは。

…戻りたい。皆とまだ一緒に過ごしたい。

そして─。

******

真っ白に塗りつぶされ、無一色になったはずの自分の世界は、瞼をあげると色がある世界に戻っていた。

先程まで何をしていたのか、いや、覚えているのだが何かが覚えていない、不思議な感覚。

目を開ける前までの記憶が、いつきにはなかった。

モヤモヤとするがいつきはそれを飲み込み、何も無かったと考えるようにした。

そして前を見て、さっきと同じ場所に戻っていると確認し─戻ってなどいなかった事に気づいた。

目の前に広がっているのは先程いた教会とは違う場所で、相変わらず真っ白な世界なのだが、空間がこっちの方が圧倒的に広いし何より『音』があった。

無音だった教会には無かった『音』が、ここには微かに聞こえる人の声に、カタッと度々小さく響くものを動かす音などで溢れていた。

久々に誰かの話し声が聞こえてきて、一人じゃないのはこんなにも安心するものだったのかと、改めて実感する。

このまま一人でいるよりも、ここにずっと居た方が─

そう、おもいだした時。

「なーにが『ここにずっと居たい』よ。あんたにはやるべき事があるんだからね!」

「…うっわぁああああああああ!!」

頭上からいきなり罵声を浴びさせられ、叫び声とともに反射的に後ずさる。

そして声のした方─上を見ると、羽の生えた天使が飛んでいた。

目の前をふよふよと浮かび、前屈みで腰に両手をあてて眉間にしわを寄せた黄緑の髪に黄色のキラキラとした瞳を持つ天使。

光輝く明るい黄色の瞳は、あの石像を思い出させる。

「…ユリーナだ…。」

無意識に口から石像の名前が出てしまい、人違いだったらどうするんだと思い慌てて自分の口を両手で塞いだ。

天使は無言でこちらを見つめ、地上におりた瞬間見えない力で天使に引き寄せられ、顎を掴まれるとグイッと顔を引き寄せられた。

「…あんた、やるわね。あれ程似ている瞳の中から私の名前を導き出すだなんて…」

顔と顔の間にはわずか数センチくらいしかなく、近いからか声も生々しく聞こえ、もう脳内がパンクしていた。

「─はひ?」

話など聞こえてるはずなく、いっぱいいっぱいな頭を無理やりおこさせて間向けな返事をする、と、ユリーナらしい彼女は今度は耳を引っ張ってきた。

突然の痛みに顔をしかめながら反射的に手を引き離そうとするがなかなか離せず、彼女はそのまま力を緩めずに話し出した。

「聞き逃さないように、この馬鹿な頭でも覚えられるように話してあげる。馬鹿でも耳を広げたら聞き逃さないでしょう?」

「いや大丈夫ですって!それにちゃんと覚えられます!そんなに馬鹿じゃないんで!」

馬鹿と呼ばれ痛さで涙目になりながら反論するが、興味なさげに素っ気なく彼女は返事をする。

「そーいう所よ。まぁいいわ。一度しか言わないからよく聞いて。」

ユリーナはいつきの耳から手を離すと、腕を組んで話し出した。

「まず、いつきさん。貴方を歓迎します。これから貴方はいろんな困難に直面するだろうけれど、めげずに頑張って。それがこの世界で生き残る方法の一つ。」

「は?歓迎?めげずに…?」

訳の分からないことを言い出したユリーナに問いただそうとするが、こちらの話を聞く気が一切ないのか、そのまま話を進められる。

聞き逃さないようにと言われたので、とりあえずユリーナの言葉を一つ一つ逃さずに頭に入れていく事にした。

「まぁこんなことはどうでもいいかしらね。本題に入ると、これから貴方はリディ様の所に行くわ。リディ様の元までの道は私が開くから、その道の通りに行くこと。まぁ一本道だから迷うことは無いでしょうけれど。」

「あ、はい。」

「そして、リディ様についてだけれど、あのお方は繊細でまるでガラスのようなお人。ちょっとつついちゃうだけで崩れるような、儚くて脆い、でも気高く美しい存在。そして貴方は、そんなリディ様を壊さずにやさしく支えることが出来る存在だと私達は思っているわ。リディ様の事を詳しくは話せないけれど、リディ様は長年相当苦しんでいるの。そして、その苦しみを和らげることが出来るのは…いつき、あなたしか居ないと、長年あの人のそばにいてわかったわ。だけど…無理にとは言わない。でも、あの人を…リディ様を、助けてあげて。これは、他でも無い貴方にしか出来ないことなの。だから、この事を覚えておいて。お願い。」

「あ、はい。…ぅえっ?」

ついうっかり返事をしてしまったのだが、理解できない部分がある事に気づきまたもや変な声を出してしまう。

ユリーナは今なんといった…?助ける?誰を?自分が?

そんな考えなどユリーナにはお見通しなのか、「あんたが、リディ様を、助けるの。」ともう一度説明してくれる。

とりあえずユリーナの言っていることはわかった。

だがそれとこれとは別だ。

リディ様…あのリディ・アンファーレを助ける?あの人はそれなりというかかなりの地位があるハズでむしろ助けが必要なのはこちらの方で何もかもを持っているあの人を助けるのは理解不能というか意味不明というか。

高速で頭をフル回転させグルグルと考え込むいつきをながめ、ユリーナは少し苦笑いしながらいつきの頭に片手を置いてぐしゃぐしゃと髪を掻き乱した。

驚いて叫び声を上げたいつきを見て笑い、髪を整えている手を取った。

振り払おうとしたいつきだが、ユリーナの異変を感じ取りされるがままになる。

それを見たユリーナは意外とでも言うように目を見開いたが、すぐに瞳に影を落とし繋いだ手に視線を送った。

「…あの人は、本当は何もかも持っているかのように見えて、なんにも持っていない、可哀想な人なの。」

ユリーナの言う『あの人』とは、リディ・アンファーレの事だろうとすぐにわかった。

そして、あの人と呼ぶ時が本来のユリーナだということも。

でも、なんで。

「─なんで、そんな事…俺に言うの?」

「何でだろうね?でも、君は知る必要がある。」

「確かに、リディ様の事は気になるよ。分かんないけど…あの人を支えなきゃって、思う時があるから。」

「…うん、それでいいの。まだ、それで…いつか、貴方は全てを知るから…。私達は、貴方を信じているわ。」

ユリーナの方を見ると、少し悲しそうな顔をしていた。

でも、その姿が痛ましく思うのではなく、逆にとても美しく思えたのは、きっとその天使の美貌のせいなのだろう。

だから、このまま透けて消えてしまうのではないかと、我ながら馬鹿げたことを考えてしまったのだ。

気を取り直し、繋いだ手に力を込め、まっすぐ、力強くユリーナを見つめた。

見つめられたユリーナは、無理矢理でも、段々と微笑んでくれる。

何も言わない、ただ見つめ合うだけ。

それでも、互いに何か、大切な何かを感じとった気がした。

いつまでそうしていたのか、ユリーナが話し出してハッとする。

「─そろそろ行きなさい。もうじきはじまるわ。」

両手はいつの間にか解けていて、ユリーナが片手をあげると何も無い空間から扉が出てきた。

ちょうどいつきと同じ背丈ぐらいの扉で、真っ白な扉に金色のドアノブがあるだけのシンプルなつくりだ。

扉はすぐにあき、中は緑でいっぱいの一本道があった。

緑の植物の間からもれる光は、なんとも言えないほど幻想的で。

ボーッと眺めていると背中をトンッと押される。

扉の中に入ってしまい、反射的に振り返る。

「あっ!ありが…」

「一つ。この世界は、貴方のお友達で成り立っている。あの聖職者も、貴方のお友達よ。この世界に来て、今の時点で二人会えたね。貴方は一人じゃないわ。忘れないで。」

「えっ、まっ─いでっ!!」

外に出ようとした瞬間に扉を閉められ、思い切り扉に顔面をぶつけた。

ヒリヒリする顔面を片手で抑えながらユリーナの最後の言葉の意味を考える。

お友達で成り立っているという事は、少なくとも異世界に飛ばされたのは自分だけじゃないという事。

それと一番最初にあった聖職者のユーキは知っている人だった?今の時点で二人あってる?どういう事だ?

二人…教会に行ってから誰とも会っていないし、会ったとしたら今…ユリーナに…あった…。

「もしかして、ユリーナは、同級生?」

と考えたが、いやいやいやいやと頭を振りかぶる。

もしかしたらユーキと教会に行く時誰かとすれ違っていたかもしんないしその時に会っていたのかもしれないと思ったのだが、そういえばユーキと会ってから誰ともすれ違っていなかった事に気がついた。

「…なんで、誰ともすれ違わなかったんだ…?」

そこまで考えた途端、一気にゾワゾワと恐怖でいっぱいになり考えることをやめにした。

これ以上考えると自分の心臓が持たない、そう判断して目の前の一本道を進む。

扉の中にある一本道は、静かな森の小道といった方が想像しやすいだろう。

特に何も無くちょっと歩けば光が見えた。

きっとあの光が出口だろうと思い近づくが、近づけば近づく程光は眩しくなって行き、ほぼ目を閉じながら光の中へと入った。

目を開けると、そこは異空間だった。

大きな柱が何本も両脇に立っていて、天井はドーム型でガラスには綺麗な青空が広がっていた。

真ん中には長くて大きなテーブルがあり、そこには十人くらい座っていた。

その中の一人が席を立ち、こちらに向かって手を振ってくる。

よく見ると、テーブルに座っていたのは現実世界の友達だった。

それに、こちらに向かって未だ手を振り続けていたのは、一緒に過ごしていた親友だった。

手を振る親友のそばに駆け寄り、本物かどうか確かめるため顔を掴む。

伸ばしたりつついたりしても消えない。

幻覚じゃない。本物なんだ。生きている。

何故そんな考えが浮かんだのか知りもしないが、そうわかった途端、涙がこぼれた。

嗚咽も無く、突如瞳から緩やかに流れだした透明の水。

それを見た親友…けいごは慌てて話しかける。

「おい、大丈夫か?」

少し笑いを含みながらも心配してくれる声に、先程まであった不安がゆっくりと溶けていくようだった。

すぐに涙を引っ込め、けいごと向き合う。

「ごめんごめん。安心しちゃってさ。痛かったでしょう?ごめんね?」

「いや驚いたけど別に…あ、いつき。リディ様に一緒に挨拶しにいこーぜ。なんか皆してるらしいし…俺もさっき来たばっかだからさ。」

気まずい雰囲気を和らげる為か、席に座っていた時点で先程来たわけじゃないはずなのにわざわざ僕の為に嘘をついてまで一緒に来てくれようとするけいごに申し訳ない気持ちになった。

でも、さすがに断る事も申し訳なく感じて話に乗ることにする。

「え?会えるの?!じゃあけいごも一緒なら行こうかな。」

「よし、じゃあ行くか!」

そう言って二人並んで長いテーブルの先にある扉へと向かう。

テーブルを避けながら向かう途中にも、席に座っていた友達が話しかけてくれて、異世界に飛ばされたのが本当に自分だけじゃない事に安心していた。

─忍び寄る破壊の音にも気づかずに。

******

瞬く星空の下、キラキラと輝く湖に君臨するのは、闇より深く、そして星より輝く髪をなびかせる一人の女神。

女神は湖の上に浮かび、まだ満ちていない三日月を眺めていた。

そんな女神を見て、音もなくそのものは現れる。

女神と同じ色の髪をもち、漆黒のマントを見に纏った青年は女神を抱きしめる。

女神は気にもせず、ただずっと三日月を眺めていた。

そっけない態度の女神に気を悪くすることも無く、青年は女神の瞳をじっと見つめ呟く。

「─君がどんなに抗おうと、決して私の手からは逃れられないよ。」

少し間が開いたものの、無言を貫き通していた女神は三日月を眺めながら一言。

「…まだ、月は満ちていない。」

青年は目を見開き、女神をよりいっそう見つめた。

女神はここ数年ずっと話しかけても答えが返ってくることは無かったのだ。

だから青年は話を続ける為女神を煽る。

「そう言って、満ちては消し、満ちては消しを繰り返し、何回もやり直しているじゃないか。それに、必死に抗う君の姿は、とてもそそる。」

「…今回は、いつもと違う。あの人が、来てくれた。」

「夫の前でよく他の奴のことを話すね。久しぶりにはなしてくれたと思ったのになぁ…少し妬けちゃうよ?」

「─私はあなたの妻ではない。今度こそ、元の場所にかえしてもらう。」

「─へぇ?やってみなよ。でも、一つ条件がある。」

女神は三日月からやっと目を離し、離れた青年と向き合う。

青年は少しにやけながら話し始めた。

「ここまで自信があるのは初めてだからね。君を逃がしたくない僕にも、今回ばかりは条件をつけさせてもらうよ。」

「…そうやって、また私を逃がさ無いのね。」

「何、君にとって悪い条件じゃないよ。区切りをつけるためさ。」

そう言ってクスクスと笑う青年は一歩一歩女神へと近づいていく。

「条件は一個だけだよ。前のルールに付け足すだけ。…この世界で、最後にすること。いいかな?」

「…失敗したら?」

「あれ、自信があるんじゃないの?まぁいいよ。失敗したら、もちろん君は僕のものになる。永遠の時を、一緒に過ごそう。」

青年は女神の頬に手を当て、ゆっくりと慈しむようになでる。

無反応のまま、女神は青年を見つめる。

「絶対、貴方のものにはならない。」

「そう…じゃあ、もうそろそろ私は行くよ。でもその前に、何故君がそんなに元の世界に戻りたいのかよく分からないけれど…」

青年が漆黒の扉を音もなくだし、真っ黒なドアノブを引く瞬間、女神の耳元でささやいた。

「─✖✖が元の世界に戻ったら、なんの為にここに来たんだろうねぇ?」

「!!─そ、れは…」

初めて動揺する女神を見て、気分を良くしたのか、青年は「また今度ね」と言って扉の先─闇の中へと消えていった。

一人残された女神は、動揺がおさまらずうずくまる。

彼女の心を表すかのように自然はざわめき立ち、あちらこちらからバキバキと何かが折れる音がし始める。

自然は枯れ落ち、真っ黒い風が彼女の周りを囲む。

どんどんとその力は巨大になっていき、風が強くなりはじめ、木々があった大地は更地になり始める。

そこに、異変を感じとった五大天使が集まる。

「リディ様!!」

「お気を確かに!」

「すぐに鍵を!!」

「皆揃ってる!?」

「すぐに取り掛かりましょう!」

五人の天使がリディを中心にしてそれぞれの配置につき、それぞれの色の鍵をかける為詠唱する。

『闇の心を沈ませる五つの鍵達よ。それぞれの主の声に答え、我たち君主の力を閉じ込めよ!』

眩い色とりどりの光が放たれ、それが合わさり白い光となってリディに降り注ぐ。

しばらくすると光は収まり、リディは気を失った。

二人の女天使がリディを支え、男天使は自然を元に戻しリディの記憶を一部消した。

そして何も無かったかのように、皆それぞれ散っていったのだった。

******

扉の前までは来たのだが、門番の天使がいないという事で席に座って談笑しながら来るのを待っていた。

すると案外すぐに戻ってきて、門番らしき天使に話しかけると、どこか疲れた様子でリディ様への挨拶は今は出来ないと言われた。

仕方ないと思い席に戻ってまた談笑していると、門番のシュンがこちらに向かって歩いてきた。

シュンはいつきに話しかけ、いつきだけなら挨拶をしに行ってもいいと伝えた。

いつきはけいごに視線を送ったが、「言わなくても分かってるだろ?」と言われ、そのままシュンについて行くことにした。

扉の前まで来るとシュンと共に中に通される。

中に入ってしまうと扉は直ぐに閉じられてしまい、シュンが先にある長い大きな階段の下まで案内してくれた。

階段の下に行く道中、この部屋は夜らしく、星空が瞬き、大きな三日月が部屋を照らしていた。

星を眺めながら歩いていると、所々に浮かぶ島が目に入った。

驚いてシュンに説明を求めると「あの島々はリディ様の所有物です。」としか説明してくれなかった。

そもそも島が宙に浮かんでいる時点でおかしいのだが、ここは異世界だからと納得させて星だけを眺めることにした。

階段の下までつくと、教会の時を思い出した。

あの地獄のようだった階段までとは言わないが、それなりに段数があり気になったことを聞いてみる。

「あの〜…これ、上るんですか?」

「逆に聞きますが、上りたいのですか?」

「あっ!いや!上りたくないです!絶対嫌です!」

シュンがえっ…?みたいな顔でこちらを見つめ、その視線に何故かこちらの心が傷ついたが、必死に上りたくない事を意思表示する為に頭をブンブンと横に振る。

シュンはそれを見て少し笑いそうになりながらも、口を抑えて説明してくれる。

「大丈夫ですよ…ふっ…私がリディ様の元まで…ご案内致します…」

「あぁ…はい、どうも…」

必死に笑いを堪えながら魔法を展開しだし、手をこちらに向かって振りかぶると体が光り始めた。

体が宙に浮き、そのまま階段の上を浮いて行った。

最上段になるとそこに降ろされ、特に何も無く無事に着いた。

目の前を見ると、大きな天幕付きのベッドらしきものがあり、中は薄暗く、装飾品でいっぱい飾られて中々中の様子は見えなかった。

ゆっくりとベッドに近づくと、シャラリと何かが動く音がした。

驚いてその場に立ちどまり、じっと待っているとベッドの中からスラリとした白い足が出てくる。

特に見るものがないので足をじっと眺め、さっきのシャラリとした音は足首についていた装飾品だったんだなとか考えているとコホンとわざとらしい、だが、とても可愛らしい声が聞こえた。

視線をベッドの暗闇の中にうつすと、今度は鈴の音のような声が聞こえた。

「─見すぎ。」

…一言。

そう指摘されると、何故か急に恥ずかしさでいっぱいになって慌てて謝罪する。

「ごごごごめんなさい!!決してやましい事とか考えてませんしあのホントすいませんごめんなさい!」

高速で謝罪の言葉を述べると、クスクスと笑い声が聞こえてきた。

えっ…と思い下げていた頭をそろりと上げるとベットの中からは綺麗な女の人が出てきた。

その姿は、本で見た通り─いや、本よりも美しく。

身長もちょっと低めくらいで、本で見た紫がかった黒髪はもっと深みのある色で、そう、まるであの星空のようなキラキラとした─

「あの?だい…じょうぶ?」

「あ、はい!だい?あ、平気…じゃなくてあのっえーっと…」

出だしからグダグダで自分でも何を言っているのか分からない程テンパっていた。

それでも彼女は微笑み、話をリードしてくれる。

「ふふっ♪面白いのね、貴方。お名前は?」

「あ、申し遅れました、いつきです。」

自己紹介をすると、彼女は少し離れ、綺麗なお辞儀をした。

「いつき…私はリディ・アンファーレ。この世界の創造神。貴方をお待ちしておりました。」

「えっ?あ、はい、こちらこそ、会うのを楽しみにしていました!」

これが、この世界が変わる瞬間の始まりだった。

新しい年号ですね。

早めに投稿できるよう頑張りたいと思っています。

ちなみにpi●ivにも投稿してみようかなと考えている作者です。

感想良かったら書いてください(*^^*)

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