全ての始まり
ある所に、人間に化けた神様がいました。
神様は変わり者で、人間に化けて、人間の生活を楽しんでいました。
そんなある日、神様はとある女性と出会いました。
ですが、その女性とはすれ違っただけでした。
でも神様は、運命だと思いました。
神様は一目惚れをしていたのです。
神様は行動をおこし、彼女が通っている学園の生徒となりました。
幸いにも、彼女と同じクラスに転入し、クラスにも直ぐに溶け込みました。
ですが、転入した初日からまだ一度も彼女と話す機会がなく、挨拶さえした事もなかったのでした。
そこで神様は、なるべく自然に、最初は程々に話しかけるようにしました。
すると、努力のかいもあり、いつしか彼女の男友達の中で、一番仲が良くなりました。
そんなある日、神様は彼女にある事を問いました。
「もし、この世界を変えられるとしたら、どうする?」
それは、彼女にとって魅力的なお話でした。
それもそのはず、神様は、彼女が周りになかなか溶け込めず、挙句の果てに悪口まで言われることを知っていたのです。
神様は、彼女の憎しみの心に入り込み、そのまま自分のモノにしようとしていたのでした。
人間なんて、欲深い生き物だ…と、勝手に思い込み、彼女が自分の期待道理の答えを出すのを待ちました。
すると彼女は、力が抜けたかのように、ポツリと呟きました。
「少し前の私なら、変えたいと思ったかもしれない。…けれど、あともう少しの辛抱だから、別にいいかな。」
そういった彼女を見て、神様は衝撃を受けました。
人間は私利私欲にまみれているのではないのか、と。
神様は彼女がこの世界を変えたいと言うと思っていたのです。
何故なら、神様は長い年月を生きてきて、一度も純粋な心に巡り会えなかったのです。
神様が今まで出会ってきた人達は皆、私利私欲にまみれた、汚らしい人間だったのでした。
ですが、彼女と出会い、恋をしたのです。
この瞬間、やっと自分の気持ちに気づいた神様は、今まで以上に彼女が好きになりました。
だけど、神と人間、命の長さも違えば、話すことさえ出来ぬ関係。
結ばれるなど、神と人間の境界が崩れるも同義でした。
それでも、彼女を神様は求めたのです。
そして神様は、ある事を思いつきました。
だけどそれは、彼女を確実に傷つけてしまうものでした。
それでも、神様は意を決して、帰ろうとする彼女に話しかけました。
「君は、僕の想像を軽々と超えるね。」
「えっ?」
振り向いた彼女は、次の瞬間、その場に固まりました。
彼女が見た光景は、神様が元に戻った姿だったのです。
「─初めまして。神様です。どうやら、君に惚れたみたい。一緒に来てもらえる?」
「っ─やだっ!」
そう言って彼女に手を伸ばした瞬間、彼女は逃げ出しました。
神様は気づきませんでしたが、彼女には想い人がいたのです。
ですが、神様はすぐに彼女を捕まえ、腕の中に閉じ込めました。
「逃げないでよ。…いきなりで、混乱しているのも無理ないか。」
神様は暴れなくなった彼女を自分と向かいあわせにして、瞳を見つめました。
「じゃあ三日あげる。それまでに、みんなとのお別れを済ましておいて。」
「そんな、かってな…」
「君を悲しませたくないんだけれど…ごめんね。」
そうして、二人は別々に友達とお別れをし、神様の監視下の中、彼女は三日の時を経て、姿を消しました。
─程なくして、彼女と同じ学年の人達も、一気に消えたのでした。
どうぞ暖かくお見守りください。