39,41日目(土)③第2エリアボス戦②
さてと、どうしましょうか。モグラ叩きかと思いましたがなかなか出てきません。まさか一番楽だろうと思った地竜でここまで時間がかかるとは思いませんでした。
爆弾を投げ込んでも出てきませんしそのダメージは地中にいると回復されてしまいます。武器を使った攻撃や魔法はおそらく届かないでしょう。
地中からの攻撃がないので考える時間はありますが悠長にしてはいられません。元々今日はクランホームを見に行く予定だったんですからね。
一応諦めてレオくん達に頼るという手もありますがそれは最終手段にしておきます。
MPポーション3本とマジックキャンディのおかげで時間経過での回復とあわせてMPは全回復しました。ユニコルさん印の爆弾は残り10個ほど、武器と魔法は届かず相手も未だ出てこない、そして一気にカタをつけられるだけの特大火力が必要・・・・・・うぅむ・・・・・・
・・・・・・爆弾って魔眼を使って複製する場合のコストはどの程度でしょうか?場合によっては使えるかもしれません・・・・・・
基本的な爆弾の完全複製で消費MPは8ですか、全開時の今なら55個作れますね。そして手持ちのアイテムを素材にした場合は4、消費は半分で110個ですか。もう少し欲しいですね……とりあえずは作れるだけ作ってMPポーション等でMPを回復しながら作成しましょう。
ですがまぁ私一人だと持ちきれませんから作る前に作ったものを置くためのものを出しましょう。
「『黒魔の偽腕』」
黒い靄のようなものが現れ肘から先だけの腕を形作っていきます。今はスキルレベルが3なのでレベル1で出せる2本と合わせて計4本の腕を出せます。そして出した腕のサイズはスキルの効果で弄ることが出来るのである程度邪魔にならない程度、それでいて爆弾の山を持てるくらいには大きくします。
そして未だに出てこないモグラさんは無視して複製した爆弾を作った端から偽腕の上に積み上げていきます。まぁ積み上げると言っても偽腕の掌に収まる程度ですが。あまりは私のインベントリに直しておきます。
2本目のHPバーが全回復したところで回復は終わりみたいです。穴から出てきました。しかも何故かツルハシまで修復されています。まぁ私が今からやることには関係ありません。逃げ場を無くすだけですからね。
私はフラガラッハを取り出してそれに乗り上空へ退避。そして━━━━━━━━━さあっ!爆破ショーの開幕です!
偽腕に乗せた爆弾を地面に落としていきます。落としたものは地面に当たると爆発を起こします、そして私自身が持っていた爆弾もあのモグラが見えていた場所に投げていきます。投擲スキルでの補正付きです。
爆弾が落ちると地面が割れます。再び潜ろうとしたモグラも潜ろうとした端からその辺の地面が爆発によって砕けるので潜ることが出来ません。インベントリにある爆弾も偽腕の爆弾が減る端から追加しているのでどんどん消化されていきます。それに比例してモグラのHPバーもどんどん削れていきます。
「モ……モグゥゥ……」
鳴き声がだんだんと断末魔のようになってきましたね。もう虫の息のようです。
複製した爆弾はもう使い切りましたから後は最初の計画の通りバルムンクで仕留めましょうか。フラガラッハに乗ったままバルムンクを展開。一応こんな状態ですがフラガラッハも装備判定なので二刀流スキルが役に立ちました。
「『魔法剣・風剣』!」
バルムンクとフラガラッハの両方に付与、そして跳躍と同時にフラガラッハを左手に持ち縮地を発動、ボロボロで動けない相手ですが万が一まだ見せてないものがあれば面倒ですからここで仕留めます。
フラガラッハで切りつけその反対からバルムンク、さらに滅多斬りにしたところでHPバーも残り数ミリ、最後は滅多斬りの最後にバツ字に振り下ろした剣を逆手に持ち替え切り上げて終わりです。
最後は簡単に終わりましたが引きこもって回復するのがとても面倒なボスでしたね。
《PNシオンによって北のエリアボス【ルペスタルパ】が討伐されました》
討伐済みのボスですから初回討伐報酬とソロ初討伐報酬はありませんでした。まぁ経験値はそこそこ貰えたので良しとしましょう。ていうか名前にカッコいいですね。元ネタは学名かなにかでしょうか?
さてと、それではマナたちのところへ行きましょうか。
「はぁー、疲れました。まさかボスが回復してくるとは思いませんでしたよ」
「おー、シオンおつかれ」
「お兄ちゃんお疲れさまー」
「シオンお疲れさま」
「シオンちゃんおつかれー。最後のすごかったね……」
「シオンさんお疲れ様です。色々と凄かったですね」
サクラさんから苦笑されマナからはまた抱きつかれました。まぁすぐに離れてくれましたけど。
「それじゃあシオンもボス戦終わって全員第3の街に行けるようになったな。早速行くぞー」
場所を既に知っているレオくんを先頭に第3の街への街道を歩いていきます。道中はマナとシエルがちょくちょく引っ付いてきます。そしてすれ違うプレイヤーNPC問わずそれを見て温かい目線を向けてきました。マナは猫系シエルは犬系ですかね?マナは無言でピタッとくっついて来ますしシエルは声を上げて勢いよくひっついてきますから。
そしてそんな2人の相手をしながらレオくんとサクラさんの会話を横目に時々視線を向けてくるティアさんにも会話を振りながら歩いていると第3の街の門に着きました。門番さんとのやり取りはレオくんがしてくれました。おかげで私たちはスムーズに入れます。
「さて、これからどこに向かうんです?」
「とりあえずギルドで権利書を受け取ってその後に不動産屋で案内人さんに会って案内してもらう予定」
ギルドに着きましたが今回は権利書を受け取るだけなのでサクッと貰ってさっさと次の目的地に向かいましょう。
「それじゃあ早速不動産屋に向かうか」
そう言って向かったのはいわゆる商業区と言われるようなたくさんの商店が立ち並んだ区画です。大きな商会であろうお店が沢山あります。そしてレオくんが向かっているのはそこにあるお店の1つ、リアルにもありそうな青屋根に白い壁というあまり不動産屋さんっぽく無い見た目の建物でした。
そして扉を開けるとそこには待合用の椅子とカウンター、そして個室に繋がっているであろう扉があり従業員らしきNPCの人もエントランスに2人、カウンターに3人います。結構大手のところなんでしょうか?まだ第3の街なのにここまで色々と整っているのは珍しいんじゃないでしょうか?
「ようこそいらっしゃいませ。本日はどのようなご要件でしょうか?」
レオくんが代表としてカウンターの人と話していると明らかに幹部またはトップらしき雰囲気の人が来ました。
「今日は以前言ったクランホームを契約しに来ました。ギルドで権利書も発行して貰ったので最後に前回いなかったメンバーに購入予定の物件を見て貰って決定するつもりです」
「かしこまりました。以前仰った2件の見学とそれを踏まえた上での購入ですね。それではうちのものから案内人を出しましょう」
完全にレオくんと仮称幹部さんの会話で進んでいきます。そして幹部さんが案内役として呼んだのはシエルとティアさんと同じくらいの年に見える少年少女でした。2人で案内してくれるんでしょうか?それにしてもファンタジーな世界感とはいえリアルでは働けないくらいの年の子が働いているのは少し違和感がありますね。
リアルでは結婚可能年齢が下がったとはいえ16歳からですし、そして働けるのもそれに合わせて16歳からです。なので2人くらいの年齢で働いている人は見た事がありませんでしたからね。
ですが幹部さん自ら案内役を任せるってことは相当優秀なんでしょうね。
「それではお客様、まずは自己紹介からいたします。私はハルカ、そしてこちらが」
「私はカナタです。よろしくお願いしますお客様」
同じ服に中性的な顔立ち、これはおそらく双子ですね。名前もそれっぽいですし。この人たちほかのプレイヤーの対応もするんでしょうか?もしするなら人気が出そうです。
そして2人から軽い説明を聞きながらまずは1件目の候補に向かいます。1件目は西洋風で落ち着いた雰囲気の建物らしいです。
そして次に到着して目に入ったのは三階建てか四階建てくらいのベランダ付きの建物でした。玄関が建物本体から少し飛び出ています。白い外壁と黒の窓のコントラストとか私的には結構好きですよ。リアルにあれば十分豪邸と言って差し支えないほどの規模です。
この建物を見た感想はマナとシエルとサクラさんは好感触、レオくんはもう少し広い方がいいという意見でティアさんは白より暗めの色が好きらしく次の物件も見たいということでした。
そして彼らの後について行くと次に見えてきたのは少し街の中心から離れたところにある他より大きめの土地に建つ洋館でした。
外観は私たちが生まれるかなり前に生まれ爆発的に流行し今なお新作や二次創作などが出続けているとある長寿コンテンツに出てくる姉妹が従者や門番達と一緒に暮らしている紅い館を元にして、おどろおどろしい雰囲気をなくし規模を縮小したような感じです。
絶対運営の中にあの作品のファンいますね。そして外観の色は元になっているであろう館と違い大部分が黒です。
こちらもいいと思いますがもしここに決定したら従者のような人を雇う必要がありそうですね。さすがに私たちだけでは掃除したりするのに時間が足りなかったりするでしょうし。
そして先程と同様に皆さんの感想も聞いてみましょう。
まずは先程の建物で反対派だった2人から、レオくんはもう少し広い方がいいと言っていてこの館は先程よりかなり広いのでこちらの方ががいいということで、ティアさんも先程白より黒系の方がいいと言っていてこちらは黒なのでこちらの方がいいということでした。
そして1件目の時に賛成派だったマナとシエルとサクラさんはこちらもこちらで気に入ったみたいです。
これはもうどちらを選ぶか決まりましたかね。レオくん曰く今日いないイナリさんと社畜さんもクランホームについては相当変わったものじゃなければ別に構わないというようなことを言っていたようですし。
後者の方に決まったのでその契約等をしに案内役の2人と一緒にまた不動産屋さん向かいます。
道中2人に聞いた話によればあの館は元々とある魔女が研究のための工房兼住居として建てたようです。
その魔女は過去に疫病が流行した時など度々薬を作り配ったりしていたようですがその魔女が一体何を研究していたのか誰も知らずその魔女の死後館に残された研究資料を保存しようと役人が入ったものの資料は何一つ見つからなかったみたいです。
その上住民が魔女が亡くなったというのを知ったのも人づてに聞いただけであり誰もその死体を見ておらず死亡したという話が出てから情報が正確なものであるという確認が取れるまでに時間がかかったため魔女が亡くなったという情報が出た当初は葬儀も行われなかったらしいのです。
魔女が亡くなったという話が流れてから数ヶ月後役人が館に入った時まで無人で人のいる痕跡もなかったため役所も魔女の死を正式に認め死体は無いものの一応形だけでもと彼女の葬儀は行ったようです。
なんだか都市伝説やオカルトのような話ですが……もしかしたら研究の資料が隠された隠し部屋のようなものがあったりしないでしょうか?
・・・・・・いや、役所の人もそれはさすがに探したでしょうしさすがにそんなの有り得ませんよね……?
細かな書類関係の記入はクランホーム関連で動いていた結果いつの間にかうちのクランの代表のような扱いになっているレオくんにお任せします。
そしてクランメンバー全員の名前が必要な権利書と契約書類に記入を済ませて記入した書類全てを担当さんに渡して館の鍵を受け取りました。結構手続きは簡単なんですね。
「クランホームを決定したのはいいんだけど正式にクランとして活動するにはクラン名とクランを表すエンブレムが必要でそれを決めたらギルドに行って登録しないといけないらしい」
oh......私たちのクランが正式なクランとして活動できるようになるのはまだまだ先が長そうですね……。
とりあえずはクラン名から考えましょうか。
クラン名とエンブレム……
そしてクランホームは実質ミニ紅○館




