17,18日目(土)公式イベント②
《決闘が終了したため敗者は勝者に賭けた物を譲渡してください。譲渡の時は運営の担当AIが立ち会うので契約を反故にすることは出来ません》
やっぱりここの運営いいですね。強制遵守ってところが特に。あれが担当の人でしょうか?ワルキューレみたいな見た目してますね。
「我が名はヘルフィヨトル、大神オーディンに仕える7人のワルキューレの1人である。決闘の敗者は己が賭けた品を勝者に譲渡せよ」
わぁ、本物のワルキューレさんじゃないですか。あとこのゲームではワルキューレの人数は7人で設定されてるんですね。
「己が賭けたもの?じゃあ俺達は何も賭けてないから払わなくていいんだな!」
は?いやいや何言ってるんですかこの人。自分達が言ったこと忘れたんですかねぇ。
「ほぅ、渡人同士の決闘は両者の合意がないと行えないはずだが賭ける物がある側と無い側で合意があったと?」
「あぁ、あいつは俺達が勝ったら俺達のクランに入ることを条件にしたが俺達は何も賭けるとは言ってないからな」
えぇ……貴方達負けたら何でも言うこと聞いてやるよとか言ってましたよね?AIなら騙せると思ったんですかねぇ?
「あちらはあぁ言っているがそれで合っているのか?」
おや、一応こちらにも質問して間違いがないか聞いてくれるんですか、しっかりしてますね。さすが大神直轄。
「いいえ、あちらの方はもし自分達が負けたら何でも言うこと聞いてやるよって言ってましたよ」
「なっ!そんなのデタラメだ!勝ったからっていきなり言い出したんだ!」
おおぅ、ここまで来ると害悪すぎてもはや清々しいくらいですね。
「今話しているのはお前達ではない。そして負けた側が言い訳をしている様は見苦しいぞ『敗者は勝者が話終えるまで口を開くな』」
おぉ、運営権限があるだけのことありますね。相手さん口を開いてなにか言おうとしてますが音が出てないですよ。言霊的な物に強制力を持たせるとかどこぞの吸血姫神子さんみたいなことしてますね。
「ふむ、「何でも」と、あれらは言ったのだな。ならば勝者は自分で報酬を決める権利が発生する。」
あ、ワルキューレさんの口から彼らを指す言葉があれらになりましたね。NPC好感度ダダ下がりなのでは?そして報酬は私が決めていいんですか。どうしましょうかね。そう言えばこれ以上はダメなラインってあるんでしょうか?
「すみません、報酬を決める時にこれ以上は選択できないラインってあるんでしょうか?」
「いや、基本的にあちら側が報酬選択時の規定を決めていなかった場合それは無い。スキルでも装備でもアイテムでも経験値でも選択可能だ。あれら自身が「何でも」と言ったのだからな。しかしスキルは少し制限がある、マスタークラス未満のスキルしか選択できない。」
おお、ここの運営なかなかいい性格してますね。あちら側のミスであるならこちらはそれを自分に最大限利益が出るするように利用してやればいいと。
自分の言動には責任を負う義務があるって言葉の最終系みたいな考えですね。
まず装備を貰っても実際今の装備に満足してるからそれらは売るだけなんですよね。次にアイテムですがゴミアイテムを沢山持ってたりしたら処理するのが面倒なのでこれも優先度は低め。スキルと経験値ぐらいですかねぇ、貰って損が無さそうなのは。レッドやオレンジみたいなPKプレイヤーでは無さそうでしたから普通にプレイするのにデメリットしかないようなスキルは無いでしょうし。それに経験値はいくらあっても問題無いですから。
まぁ全部貰えるならせっかくだし貰っちゃいますか、服装備なんかは作り直して天音と雫さんに譲渡すればいいですし。アイテムも魔物素材ならギルドが普通の店より割高で買取ってくれますしそのお金で狭間の店で買い物出来ますからね。
「それではせっかくですし全て頂きましょうかね。彼らには高い授業料だったと諦めてもらうってことで。これに懲りたらあんなことしないと思いますし。」
「了解した、私から大神に伝えておくから少しすれば奴らの所有物が全て貴女の懐に入るだろう」
「そうですか、ありがとうございます」
「あぁ、それともう1つちょうどここには渡り人が大勢いるから今私の口から言うがあまりに契約を反故にし続けると断罪者が貴様等を狩り取りに来るぞ。住民はそれを知っているからな、契約であれば絶対に反故にしない。しかし渡り人はそうではないからな。」
え、なんか帰る直前に気になることを言っていましたが断罪者ってなんでしょうか。ペナルティを与えるのは管理AIですよね?それとは違うんでしょうか?住人は断罪者を知っているって言うのも気になりますね。時間がある時に書庫で調べてみましょうか。それかルカさんに聞いてみるか。
「おねーちゃん!!」
「おっ、と。いきなり飛び込んでくるのは後ろに倒れそうになるのでダメですよ」
「はーい、ごめんなさい。じゃなくて何あれ!お姉ちゃん凄い!かっこよかった!!」
おぉ、妹からストレートに賞賛を浴びるのはムズ痒いものです。でもやっぱり嬉しいですね。
「ありがとうございます。それじゃあ彼女の方も探しましょうか?」
「あっ、そうだった雫ちゃん探しに行かないと。あとお姉ちゃん、私のPNはシエルだよ!こっちではこれで呼んでね」
シエルですか、フランス系ですね。天音に似合ってると思いますよ。それじゃあ探しましょうか。
歩いてますが見つかりませんね・・・すると暇なのか天音が話しかけてきました。
「ねー、お姉ちゃん。お姉ちゃんって掲示板とか見る人?」
「?はい、掲示板にはお世話になってますよ。始めた頃も色々掲示板から情報を得てましたからね」
突然どうしたんでしょう。掲示板は便利ですからね。私も利用してますよ。
「えっ、なのに知らないんだ。お姉ちゃんこのゲームで有名人だよ?」
ふぁ!?有名人??何故私が??
「え、あま……じゃなくてシエル、私が有名人ってどういうことですか?私有名になるような事した覚えがないんですけど。どちらかと言うとレオくんの方が有名じゃないですか?」
「レオ・・・あー、カイさんか。確かにカイ……レオさんも有名だけどお姉ちゃんも同じくらいかそれ以上に有名だよ」
えー・・・なんで私有名になってるんでしょうか。ほんとに思い当たる節がないんですけど……
「んー、その顔はほんとに思い当たる節が無いみたいだね。それじゃあ理由をひとつずつ言っていくよ。
まずは容姿だね、銀髪金眼なんて日本人で似合う人いないような組み合わせが綺麗に合ってる時点でなかなか話題性あるよ。普通はファンタジーチックな髪色、目の色にして違和感がないように多少は自分で顔弄ったりするんだけどお姉ちゃんやってないでしょ?」
「やってないですね、メガネ外した状態の普段の私そのまま見た目で髪を腰まで伸ばして肌をほんの少し白くしただけですからね。そのせいですか……」
くっ、多少いじれば良かったです。自分じゃない感じになるのが嫌で顔とかのパーツを弄らなかったらこんなことになるとは……
「いや、それだけじゃないよ。お姉ちゃんが話題になる理由は他にもあるからね。次は2つ目、戦闘スタイルだよ。糸系スキルは基本的に戦闘に使う人はいないよ。使えないわけじゃないし暗器としてはむしろかなり優秀なんだけど単純に操作しづらいからね。私もお姉ちゃんが十全に使えるって言うのを掲示板で見た時はびっくりしたよ。それと動きが序盤から凄い立体的って言うのも理由かも。
3つ目は交友関係?って言えばいいのかな。開始直後にレオさんがお姉ちゃんを迎えに来たでしょ?あれを見てた人からしたらかなり衝撃だったみたいだよ。レオさんってベータからあのパーティーが基本で追加メンバーとか入れなかったことでちょっと有名だからね。そこに正式版から追加メンバーっぽい人が入ればみんな気になるんだろうね。」
え、糸操作系ってもしかして戦闘用スキルとしてはかなり不遇なんですか?
それと動きが立体的なのは多対一に対応できるように試行錯誤した結果でしょうね。ほら、正面から挑むより撹乱した方がやりやすくなりますから。
そしてレオさん達も理由ですか。これはどうにも出来ないですね……
シエルに言われたことを色々考えながら歩いていると視界に濃い青の長髪が写りました。もしかしてあれでは?
「ちょっとシエル!あの人じゃないですか?」
「あっ!多分そう!すみませーん!!」
「えっ、わ、私ですか・・・なんでしょう・・・ってあれ?もしかしておに…お姉さん!?そしてあま……じゃなくてシエルちゃん!探したよ〜全然見つからなくてどうしようかと思ったー」
あ、この感じは雫さんで間違いないですね。
「すみません、変な人達に絡まれてしまってその対処で遅れてしまいました……」
「え、絡まれたってもしかして今掲示板にあがってる動画、お姉さんとシエルちゃん関係?」
え、掲示板に動画あがってるんですか?撮られることなんて無いだろうと思って私顔隠し設定オフなんですけど……シエルには念の為最初はオンにしておくよう言ってあるので大丈夫だと思いますが。
「あー・・・多分そうだと思います。そちらは大丈夫でしたか?」
「はい、私は何も無かったです。あと私名前はティアです。呼びは敬称略で大丈夫です」
「それはよかった。ティアさ…ティアですね。それでは2人そろったことですし早速東に行きますか?」
「うんっ!私早く行きたい!」
「私も早く外を見てみたい…です」
2人の合意も取れましたしそれじゃあ早速行きましょうか。向かう途中で色々情報共有しましょう。
「そう言えばシエルとティアは種族、job、スキルはどんなものを選んだんですか?
まず私が言いますね、私は種族は人族でjobは錬成士、subjobは魔法使いでスキルは魔法を2つと糸操作、体術、錬成、料理、裁縫。そして必須クラスだと思った鑑定を選びました」
「じゃあまずは私から言うね。私は種族を面白そうだったからランダムで選んだよ。そこまで運は悪いほうじゃないって思ってるし。結果はだいたい察してるかもだけど天使族ってやつ。
jobは剣士と精霊使いでスキルが種族的にむいてそうな『光魔法』と『鑑定』、あと『剣術』と『精霊魔法』、そして『身体強化』だよ。」
やっぱりシエルは天使ですか。まぁ天音の時点で天使ですから仕方ないですよね。そしてjobは珍しい組み合わせですね。精霊剣士とでも言えばいいんでしょうか。あと人族でないから取れるスキルは5枠までなんでしたね。次はティアですね、こちらも見た目でわかりやすいですが合ってますかね?
「次は私ですね、種族は獣人で猫です。jobは魔本使いと研究者…です…。スキルは『魔本召喚』、『INT強化』、『水魔法』と『闇魔法』、あと『魔力障壁』です。研究者は覚えるスキルの中に一瞬で拠点に戻れるスキルがあるって聞いたので決めました」
やっぱり猫獣人ですね予想が当たってました。そしてjobの1つが魔本使い、初めて聞くものですね。選択したスキルは多少防御寄りでしょうか?後衛から直接前衛を守れると考えると優秀なのでは?
東に向かう途中で2人に木の棒のまま使うか武器に変えるか聞いたら武器を買うと言ったので今は鍛冶屋さんも人が多いでしょうから先程の決闘で手に入れた武器をとりあえず渡しておきます。
それじゃあちょうど東の門に着きましたね。まずはパーティを組みましょう。
「これからパーティーを組みますがシエルが前衛、ティアが後衛で役割は合ってますか?私は中前衛に回るつもりですが」
「うん、私はそれで大丈夫だよ!」
「私も大丈夫です」
さて行きましょうか。まずは兎からがいいでしょうね。
・・・・・・すっかり忘れてました正式版最初の日もこんな感じで東の平原は人で埋め尽くされていたんでしたね。これは森で狼狩りに予定変更した方が良さそうですね。
「うわー、人がいっぱいいるねお姉ちゃん。これ私達も参加出来る?」
「あぅ、人…人…人…。人多すぎです……」
「うーん、この人混みの中うさぎを狩るのはかなり厳しいでしょうね。なのでこれから森の中に入ろうと思います。森は基本的に狼くらいしか出ないので大丈夫ですよ。シエルはユニーク種特有の高ステータスがあるでしょうしティアは後衛なので直接戦闘する機会は基本ないですからね。」
「2人とも準備はいいですか?」
「「はーい(!)」」
大丈夫みたいですね。
「それじゃあ行きましょうか」
続きが気になる方などいましたらブクマや感想等など貰えると作者のモチベが上がって続きが出たりするかも。作者の別作品『奈落に落ちたら案の定裏ダンジョン直行ルートでした』の方もどうぞよろしくお願いします。こちらは今作と違って異世界召喚物になってます。クラス召喚です。
初ランキング入り記念追加更新1回目です。




