出会いはスローモーション
そうやって二人で手を繋いで歩いていると、急に声を掛けられた。
「ちょッと!そこのマドモアゼルッ」
振り向くと、そこには金髪ロン毛のイケメン野郎が立っていた。指で髪をいじくりながら
俺に続いてタンサちゃんが振り向くと、髪を手でバッとかきあげた…どっかの3年B組の先生の様だった。
「フッ…初めましてマドモアゼル、私はピエール、武者小路・ピエールッと申しまッす。あなたの御名前を聞かせて頂ければ幸いでッす」
喋り方も某国民的ドラマのロン毛の先生みたいだな。
「なんじゃお前は?変な喋り方じゃな?」
「変、なッ!?」
と答える金髪ロン毛野郎…一瞬、顔をしかめたが、髪をかきあげると直ぐに表情を笑顔に戻し
「しッ失礼…なにぶんフランスでの生活が長かったものでねッ」
「ふーん、で何か用か?」まるで興味がない目で金髪ロン毛野郎を見るタンサちゃん。前に応援で行った現場で、警備員の俺を見る丸の内のOLの目を思い出した…
「クッなんだ、その目はそんな目で僕を見るんじゃない~」
あ~こういう目で女から見られる事に慣れてないのか
慣れれば、これはこれで御褒美ですって奴らもいるんだがな…
まあ、俺はしょせんリアルの女なぞに興味はないから気にならなかったがな。
「で何の用じゃ?」
更に冷たい視線で見るタンサ…
フッ、これだけの美少女に冷たい視線で見られると、もう逆に御褒美になってしまうぜ?
「クッ…ナッなんだッこの気持ちはッ…まあいい、そんな事より、お前、僕と一緒に来るんだ!」
「いやじゃ!」
「な、なんでだッ?この超イケメンでッ月産自動車の御曹司の僕に向かってェッ、良イのか?そこの冴えない中年親父と二人で路頭に迷う事になっても!」
やれやれ、本当にいるんだな?こんな勘違いをしたヤツが、名門校ってのは何を教えてるんだ?
「ほう、私を脅すのか?」
ヤバい…タンサが切れかかってる、本当に腕とか簡単に切るからな、こいつは!
「クッこうなったら実力行使だ!」
「やれやれだぜ」
帽子を深く被り直しながら、タンサの前に立つ俺…こんな奴でも殺されると流石に不味いだろ?
「父親は邪魔をするな!この世には逆らってはいけない相手がいるって事を教えてやるッお前は何処の会社に勤めてる?言ってみろッ」
学ラン着てる父親がいるか?まあ、絶対にいないとは言いきれんがな…
「いや、俺は一応は兄なんだが…あと悪いことは言わないから止めておいた方が良いと思うぞ」
「なんだと~このバカちんがあッ」
そう言いながら殴りかかってくるロン毛野郎、やれやれ
顔面に向かってきた相手の拳を、首を少し動かしてかわす。そして、御返しに拳をカウンター気味に合わせて相手の顔の前で寸止めした。
「やれやれ、止まってみえるぜ?こんな風にな」
俺に意識を向ける為に、あえて挑発した。タンサに殺されるよりはマシだろ?…それに実際に止まってみえる。何故なら俺の電話脳がバージョンアップして、高速演算処理の機脳がつき、10倍の速度で思考を加速する事により、相手の動きがスローモーションで見えるのだ。
「クッこの~貴様アッ~」と言うやいなや、自分のバックから何か棒の様な物を取り出すロン毛野郎。
ジャキンッと音がなり、棒が伸びる。
俺もよく知っている武器、警棒だ。
「フフン、ボクはこう見えて剣道二段なんだ、お前も少しはやるようだけど剣道倍三段!果たしてお前にそれだけの腕がありますかあッ?!」
おいおい!冗談だろ?俺も警備員時代に川越隊長に護身術を習い川越流警備術をマスターしたが、警棒を持った剣道二段を相手に戦うとなると、お互いに無傷と言うわけにはいかないぞ…




